【天風の心身統一法と釈尊の仏教 その2】
2.釈尊の仏教
・日本の仏教は、「釈尊の仏教」とはまったくその内容が違う。日本の
仏教は、釈尊の死後五百年から六百年経った頃に起きた仏教の革新運
動によって生じた「大乗仏教」と呼ばれる新しい仏教が伝わったもの
であり、釈尊の仏教は伝わっていない。
・「大乗仏教」は、自分は、修行一筋の道にはついていくことができな
いという人たちが、神秘的なパワーや阿弥陀如来のような超越的な存
在に救いを求めることの出来る宗教である。
・一方、「釈尊の仏教」は、自力で修業し、自力で煩悩を滅し、自力で
自分を救うことを求める教えであり、そのためには、毎日瞑想を続け
悟りを目指して自分の心と向き合い、集中した生活をすることが必要
であると説く。
・だから、本気で仏道に励むためには、それまで持っていた「仕事、地
位、財産、家族」などすべてを手放し、「出家」をして「サンガ」
(僧団)と呼ばれる組織に入らなければならない。
・また、釈尊の仏教は、一切の「業」を作らず、ひたすら煩悩を消すこ
とだけに打ち込む特別な生活スタイルを説く宗教だといえる。それは
自分を変えて、心の苦しみを消すための教えを日々 ひたすら実践す
るというものである。
・すなわち、この世の因果の法則は、厳然たるものであって変えること
はできないから、特別な努力をして「自分の心の在り方」を変えよう
という教えである。
・釈尊が説いた具体的な教えは、「四諦・八正道」として知られている
・「四諦」とは、4つの真理であり、それは「苦諦」「集諦」「滅諦」
「道諦」の4つである。
・「苦諦」とは、この世はひたすら苦であるという「一切皆苦」の真理
「集諦」は、その苦しみを生み出す原因は心の中の煩悩だと知ること
「滅諦」とは、煩悩を消滅させることで苦が消えるという真理。
「道諦」とは、煩悩を消滅させるための具体的な8つの道を実践する
こと。その8つの道を「八正道」という。
・「八正道」とは、「正見」=正しいものの見方。 「正思惟」=正し
い考え。 「正語」=正しい言葉。 「正業」=正しい行い。 「正
命」=正しい生活。 「正精進」=正しい努力。 「正念」=正しい
自覚。 「正定」=正しい瞑想の8つである。
・ここで説く「正しい」とは、自分中心の誤った見解を捨て、この世の
在りようを客観的に合理的に見るという意味を含んでいる。
・しかして、現代社会は、生活状況が向上しているので、修行する余裕
があれば、出家しなくても日常生活の中で仏道を収めることは可能だ
と思われる。 (佐々木閑氏の著作より適宜引用)