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■「被災建築物応急危険度判定士」とは何か 被災建築物応急危険度判定士という存在があります。 被災建築物応急危険度判定士(以下、判定士)は、地震などで被害を受けた建物について、いま、その建物に近づいて大丈夫か/中に入って大丈夫かを、短時間で判断する専門家です。 ここで重要なのは、判定士が行うのは、修理方法を決める診断ではなく、地震直後の危険度チェック(緊急の安全確認)だという点です。
判定の結果は主に次のように整理されます(※自治体運用で表現が異なることもあります) ・危険:立ち入りは避けるべき(倒壊・落下などの危険が高い) ・要注意:条件付きで注意が必要(危険箇所に近づかない等) ・調査済:危険・要注意に該当する明確な危険が確認されなかった ※「調査済=安全確定」ではなく、あくまで応急的に見た範囲で大きな危険が見つからなかったという意味です。 判定は、主に外から目で見て(目視)行い、必要に応じて簡単な道具(下げ振り、メジャーなど)で傾きや変形を確認します。 そして、判定結果は建物の入口などに表示(ステッカー等)して、住民や通行人に危険を伝えます。 ■どんな社会的意義があるのか(なぜ必要?) 判定士の役割は一言でいうと、余震や二次災害から人を守ることです。 大地震の直後は、次のような危険が現実に起こります。 ・余震で倒壊が進む(本震では耐えたが、余震で崩れる) ・外壁・屋根・看板・窓ガラスなどが落下する ・ブロック塀や門柱、設備機器が転倒する ・住民が荷物を取りに戻って被害に遭う ・避難所や仮設拠点として使う建物の安全性が不明 このとき、もし、使える/危ないの情報がないと、人は不安で戻ってしまったり、危険な場所に近づいてしまったりします。 判定士は、最小限の時間で、建物の危険を見える化し、行動判断の材料を社会に提供します。 つまり、判定士の活動は、 ・救急車でいうトリアージ(優先順位付け) ・災害直後の混乱を抑える交通整理 のような役割を、建物の安全面で担っている、と考えると理解しやすいです。 ■「被災建築物応急危険度判定士」ができた背景(なぜ生まれた?) 背景①:地震直後に、建物の危険が一気に社会問題になる 大地震が起きると、被害を受けた建物が大量に発生します。 行政・消防・警察・専門家の数には限りがあるため、一棟一棟を時間をかけて精密調査することは不可能です。 その一方で、被災者にとっては、家に入れるかどうかは生活の根幹ですし、通行人にとっては、その道が安全かどうかは命に関わります。 ここに、短時間で多数の建物を判断する仕組みが必要になりました。 背景②:阪神・淡路大震災などの経験で二次災害の怖さが明確化 大規模地震では、地震そのものだけでなく、地震の後に起きる二次災害(余震倒壊、落下物事故、危険建物への立ち入り事故)が問題になりました。 この経験から、被災直後に、危険建物を早く見つけて、人の動きを安全側に誘導することが、社会全体の安全と復旧の速度に直結する、と認識されるようになりました。 背景③:行政だけでは回らない → 事前に人材と手順を整備する必要 災害時にその場で人を集め、ルールを作り、判断基準を統一するのは現実的ではありません。 そこで、平時から、 ・判定の基準(何をどう見るか) ・判定の手順(どこから見て、どう表示するか) ・判定できる人材(講習・登録) を準備し、自治体主体で運用できるように整備されていきました。 ■よくある誤解 誤解①:「判定士=耐震診断をする人」 → 近い分野ですが別物です。 判定士は、今すぐ危険かを見る応急判断。 耐震診断は、将来にわたる耐震性能を評価する精密な検討です。 誤解②:「調査済=安全宣言」 → そうではありません。 限られた時間・範囲での応急判断なので、後の詳細調査で結果が変わることもあります。 誤解③:「修理の指示まで出してくれる」 → 原則、応急危険度判定の役割は、立ち入りの可否・危険の周知まで。 修理設計や工事判断は別のフェーズです。 <まとめ> 判定士は、「災害直後の社会の安全装置」です。 被災建築物応急危険度判定士は、地震直後の混乱の中で、 危険な建物を早く見つけ →人が近づく/入る判断の材料を示し →余震や落下物による二次災害を減らす ための、社会にとっての「安全装置」です。
次回は、もう少し具体的な「被災建築物応急危険度判定士」について、お話します。
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