NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

架構計画シリーズ8

配置バランス

■耐力壁が偏在するときの注意点

① 南面開口(南側に大きな窓があるプラン)

日当たりや風通しを良くするため、南側に大きな開口(窓・掃き出し窓)をとり、寒い北側は窓を少なめにして壁を多くする間取りは、日本でよく見られます。

この場合、建物全体としての壁の量(壁量)は足りていても、壁が北側に偏っていることがあります。

すると地震のとき、壁が少ない南側が大きく変形して傾き、倒壊につながるおそれがあります。

② 狭小間口(間口が狭く、奥に長い建物)

長屋や町家のように、間口が狭くて細長い建物では、隣地境界に当たる長辺方向は壁をつくりやすい一方で、短辺方向は壁が少なくなりがちです。

特に道路側は出入口が必要なので壁を入れにくく、地震のときに短辺方向へ大きく傾くことがあります。

これは、阪神・淡路大震災でも多く見られた被害のパターンです。



■重心・剛心・偏心(ねじれの原因を理解する)

重心:
建物の重さの中心。だいたい平面形の真ん中付近になりやすい。

剛心:
建物のかたさの中心。ここでいう「かたさ」は、主に耐力壁の強さ(壁倍率×長さ)で決まる。

偏心:
重心と剛心がずれている状態。ずれの長さを偏心距離という。

たとえば南側と北側で壁量が同じなら、剛心は建物の中心に近くなります。

しかし北側に壁が偏っていると、剛心は北側寄りになります。

このとき地震の水平力が入ると、建物はただ横に揺れるだけでなく、ねじれる(回転する)動きが大きくなります。

偏心距離が大きいほど、ねじれも大きくなり、倒壊リスクが高まります。


■偏心が小さくても危ないケースもある

偏心が小さくても、耐力壁が外周に少なく、建物の中心部だけに集まっているようなプランは注意が必要です。

外周部が振られやすくなり、建物全体がねじれやすくなります。

木造は特に水平構面(床・屋根)が柔らかくなりやすいため、耐力壁はできるだけ外周にも配置する意識が重要です。


■起きやすい現象

●耐力壁が偏在するプランの例

南面大開口:
南側が開放的だが、北側に壁が寄ってねじれやすい

狭小間口:
出入口の影響で短辺方向の壁が不足しやすい

●壁が偏在したときのねじれ

耐力壁が偏ると、地震時に建物がねじれ破壊する可能性が高くなる。
対策としては、次が重要です。

・床面(水平構面)の剛性も考えながら耐力壁を配置する
・壁量が足りていても、ねじれが先に起きると倒壊リスクが高い

●中央コア(中心だけ壁がある)場合の変形

中央部だけに耐力壁を集めると、見かけ上は偏心率が問題なくても、ねじれに対する強さ(ねじれ剛性)が小さいため、地震時の偶然の偏り(家具・積載・施工差など)によって、建物がねじれて壊れる可能性があります

(これを「アクシデンタル・トーション」:偶発ねじれ、といいます)


■ゾーニング(細長い建物の考え方)

狭小間口など細長い建物では、建物をいくつかの範囲に分けて(ブロック分けして)考える方法があります。

これをゾーニングといいます。

・建物を ブロック①、ブロック②… のように分割し、各ブロックごとに壁量と配置のバランスを満足させる
・ブロックの分け方は、建物形状、耐力壁の位置、床・屋根の水平剛性などを見て、力の流れが無理なく伝わるように決める

●ゾーニング時の基本方針

・ゾーニングを行い、各ブロックごとに壁量を満足させる
・水平構面(床・屋根)の剛性を高める(力をうまく伝えるため)



次回は、L形・コの字形について、お話します。

▲このページのTOPへ