NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

架構計画シリーズ3

災害と木構造基準の変遷の詳細

主な災害(年月日・災害名・M)|被害の内容(木造中心の概要)|木構造基準の主な内容(改定内容)

1891年10月28日 濃尾地震 M8.0
|内陸直下の巨大地震。岐阜・愛知を中心に多くの木造家屋が全壊・倒壊し、約7,000人以上が死亡。活断層の地表地震断層も明瞭に出現。
|地震後に「震災予防調査会」が設置され、木造住宅の耐震化に関する提言を実施。基礎の重要性、切欠きの抑制・金物による接合・筋かいで三角形フレームを作るといった、現在にも通じる木造耐震の基本原則が示される。



1923年9月1日 関東地震(関東大震災) M7.9
|東京・横浜を中心に、木造家屋の倒壊と大火災で10万⼈超が死亡。約37万戸以上の住家が全半壊・焼失し、約250万⼈が被災。
|1924年の市街地建築物法改正で、世界でも早い段階で「耐震設計」を法規に導入。震度に応じた地震力(震度係数)の考え方が明文化され、木造を含む建物に「中小地震で無被害・大地震で倒壊防止」という基本目標が設定される。

1948年6月28日 福井地震 M7.1
|福井平野を中心に木造家屋の倒壊と火災が多発。約3,800人が死亡、約3.6万棟が全壊し、福井市では建物の約8割が倒壊または焼失。
|この被害を受け、1950年に建築基準法が制定。全国一律で構造安全を確保する仕組みが整備される。木造については、土台・基礎の構造、柱の最小寸法、必要壁量などの仕様規定が初めて包括的に規定され、在来木造の基本枠組みが形成された。

1968年5月16日 十勝沖地震 M7.9
|北海道・東北北部で被害。特に鉄筋コンクリート造にせん断破壊が多発したが、木造も沿岸部を中心に被害。
|RCのせん断補強を強化する1971年の基準改正のきっかけとなり、設計用水平力の考え方が見直される。直接の対象はRC中心だが、その後の1981年大改正(新耐震)につながるステップとなり、木造も含めた全体の耐震レベル引き上げの流れをつくる。

1978年6月12日 宮城県沖地震 M7.4
|仙台周辺で1,000棟超の建物が全壊・多数が半壊。木造・RCともに被害が発生し、当時の耐震基準の限界が露呈。
|これを受けて1981年6月1日施行の「新耐震設計法」が導入。建物を「頻度の高い中地震」と「稀な大地震」の2段階で性能設計する思想が明確化される。木造では、必要壁量の見直し・壁配置のバランス・許容水平力の考え方が整理され、現在の「新耐震(1981基準)」の骨格ができる。

1995年1月17日 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) M7.3
|阪神間で6,400人以上が死亡。全壊建物約10万棟の多くが1981年以前の木造住宅で、筋かい不足・偏心配置・金物不足・無筋基礎などが原因の倒壊が目立つ。
|新耐震の有効性を確認しつつ、旧基準建物の耐震化促進が国家課題となる。1995年に耐震改修促進法、1998年に基準法の一部改正、さらに2000年の建築基準法改正で木造の仕様規定が大幅強化。
・地盤調査の事実上の義務化と、地盤に応じた基礎仕様
・筋かい・面材耐力壁の接合金物の種類・取付方法の明確化
・柱頭柱脚金物・アンカーボルトなど引抜き対策の標準化
・耐力壁の配置バランス(四分割法など)の明記
など

2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) M9.0
|M9クラスの巨大地震と津波により、約1.6万人が死亡・数千人が行方不明。建物は12万棟以上が全壊し、沿岸部の木造住宅が津波で多数流失。
|揺れに対しては1981年以降の耐震基準で建てられた建物の被害が相対的に小さかったことが確認される一方、津波に対しては壊滅的被害。これを契機に、
・津波避難ビル・避難施設の構造基準やガイドライン整備
・学校・庁舎など公共建築の耐震・津波対策強化
・木造住宅の耐震改修・高台移転の推進
など「地震+津波」を見据えた総合的な安全戦略が進む。

2016年4月16日 熊本地震(2016年熊本地震) M7.3
|4月14日の前震M6.5に続き本震M7.3が発生。熊本県益城町などで木造住宅の倒壊が集中し、約8,000棟が全壊、数万棟が大きな被害。新耐震以降の木造でも、壁配置の偏りや接合部仕様の不備により倒壊した例が報告される。
|2000年基準以降の木造でも設計・施工次第で大きな差が出ることが明確になり、
・木造住宅の評点評価や耐震診断の重要性が再認識
・接合金物の確実な施工や耐力壁バランスの徹底が強調
この知見と、省エネ化による建物重量増への対応を背景に、2025年4月施行の建築基準法改正(4号特例の縮小・小規模木造の壁量/柱小径基準の見直し)へとつながる。

(以降、能登半島地震など、災害は続いています…)

上記は、あくまでも法改正へ特に大きく影響を与えた災害です(大きな爪痕を残した多くの災害が日本にはたくさん起こっています)

最新の大改正は2025年4月1日施行の建築基準法改正で、4号特例の縮小と、小規模木造の壁量・柱小径の算定方法の抜本的な見直しが行われています。

これは、災害そのものではありませんが、上記の一連の地震被害の蓄積を背景としており、木構造基準の変遷を語るうえで不可欠な要素です。



次回は、解析方法について、お話します。

▲このページのTOPへ