NSJ住宅性能研究所

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架構計画シリーズ1

木造住宅の被害

■木造住宅で起こりやすい被害の原因

木造の建物が大きな被害を受ける主な原因は、だいたい次のようなものです。

・部材(柱・梁など)の断面寸法が足りない(細すぎる・弱すぎる)
・耐力壁の量が足りない、または配置が悪い
・金物や仕口などの接合部が弱い・不足している
・基礎が弱い、もしくは地盤が悪い

日本は4つのプレートの境目に位置し、活断層も多いため、地震大国と呼ばれます。

さらに、北日本では豪雪、南日本では台風の上陸など、自然災害も多い国です。

こうした自然現象が、木造建物にどのような形で被害として現れるのかを整理します。



① 台風による被害

典型的な被害の例:
・強い風で軒先が持ち上げられ、屋根全体が飛ばされる
・屋根材(瓦・スレートなど)が剥がれて落下する
・看板が飛ばされる
・納屋などの小さな建物が、風で転倒する

これらの多くは、部材どうしの接合が不十分なことが原因です。

特に、屋根と軒先の取り合い、柱・梁・桁と金物の固定、アンカーボルトの有無・本数などが重要です。

例:
納屋が転倒するケースでは、基礎と建物をつなぐアンカーボルトがなかったり、本数が足りなかったりすることが原因になります。

② 積雪による被害

主な被害パターン:
想定より多く雪が積もり、梁や柱が荷重に耐えられず、つぶれる・折れる

北側と南側で雪の解け方が違い、片側だけに重い雪が残る
→ 建物に偏った荷重がかかり、全体が傾く・ねじれる

ポイントは、雪荷重の大きさと荷重の偏りです。

設計時に地域の積雪量をきちんと想定し、梁や柱の断面やスパンを適切に決めておかないと、部材が壊れやすくなります。

③ 地震による被害

地震被害の中で、特に多いのが 、地盤・基礎に原因があるケース です。

地盤・基礎に関する典型的な被害;

・束石だけの簡易な基礎の場合:

束石の上に柱を立てただけのような構造だと、地震時に柱の足元がバラバラに動きやすくなります。
→その結果、建物全体が大きく変形し、倒壊につながることがあります。

・軟弱地盤+無筋コンクリート基礎:

軟弱な地盤の上に、鉄筋の入っていないコンクリート基礎(無筋基礎)をつくる

地震で地盤が大きく揺れると、基礎が割れたり、ずれたりする
→ それに引きずられて上部構造(柱・梁・壁など)も大きな被害を受けます。

・アンカーボルトの不足・不備

基礎と土台をつなぐアンカーボルトが足りない、締め付けが甘い、位置が悪いなどの場合、大きな地震で建物が基礎からズレたり、浮き上がったりして、上部構造に深刻な損傷を与えます。

・耐震要素や接合不良による被害:

地盤・基礎の問題に次いで多いのが、次の2つです。

〇耐震要素(耐力壁など)の不足・偏り
〇接合部の不良

特に、以下のような建物は危険になりやすいです。

◆南側の開口部(窓や掃き出し)が大きく、壁が少ない住宅
◆間口の狭い都市型住宅(狭小間口)
◆角地に建つ建物で、道路側に開口が多く、壁が偏っているもの

こうした建物では、耐力壁が一方向や一部に偏っているため、地震時に建物がねじれるように揺れ、最悪の場合は、特定の階がつぶれる層崩壊や、ねじれを伴う倒壊を起こすことがあります。

・水平構面の水平剛性不足による被害

一見、分かりにくいですが、床や屋根などの水平構面の剛性が不足していることが原因で起こる被害もあります。

例として、細長い平面形をした酒蔵のような建物があります。

・建物の中間部に壁がほとんどなく、がらんどうになっている
→地震時に、中間部の水平構面が大きく変形する
→変形に耐えきれず、その部分から崩壊する

このように、壁だけでなく、床・屋根の固さ(水平剛性)も耐震設計では重要です。

・老朽化・劣化による被害

新築時には問題がなくても、時間の経過や劣化によって大きな被害につながるケースもあります。

特に注意が必要なのが、

〇腐朽(木材の腐れ)
〇蟻害(シロアリによる被害)

これらは、構造材そのものの強度を低下させますが、

◆仕上げ材(外壁・内装材)の裏側で進行する
◆見た目からは分かりにくい

という厄介な特徴があります。

●対応の考え方

・腐朽、蟻害を受けにくい工法・材料を採用する
・竣工後も定期的に点検しやすいような、点検性の高い設計にしておく

こうした工夫が、長期的な安全性の確保には重要です。



■代表的な被害パターン(整理)

●台風による被害パターン
・先の接合不良 → 屋根の吹き上がり・飛散
・アンカーボルトの不備 → 建物全体の浮き上がり・転倒

●積雪による被害パターン
・偏った雪荷重 → 梁・柱の破壊、建物の傾斜

●地震による被害パターン
・無筋基礎が壊れ、それに伴って上部構造も壊れる
・特に軟弱地盤上に多い
・接合不良により、柱や土台が基礎から踏み外してしまう
・狭小間口の建物で、耐力壁が不足し、特定の階がつぶれる(層崩壊)
・水平構面の水平剛性不足により、建物の一部が大きく変形して破壊する

このように、木造住宅の被害は、

・地盤、基礎
・部材の強さ(断面)
・耐力壁の量と配置
・接合部の信頼性
・水平構面の剛性
・劣化対策

といった基本的なポイントを押さえることで、大きく減らすことができます。



次回は、災害と構造基準の変遷について、お話します。

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