NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ14

軒先の吹上げ

■片持ち梁と「引き」の考え方

日本の木造住宅では、昔から雨や日射を防ぐために軒の出を深くすることが多く、その軒先は、垂木を外側へはね出すことでつくられます。

この、はね出した部材が片持ち梁です。

片持ち梁としてきちんと機能させるには、

・支点(固定されている部分)がしっかり固定されていること
・反力に対抗するための「引き」が確保されていること

が必要です。

ここでいう「引き」とは、

はね出している方向と反対側、つまり建物の内側に確保された部材の長さ

のことです。

一般には、「引き」の長さ ≥ はね出し距離の1.5~2.0倍 とするのが望ましいとされています。

さらに、支点付近ではできるだけ断面欠損(欠き込み・穴あけなど)を少なくするよう配慮が必要です。

特に2方向に軒を出している出隅部分(建物の角)は、風の吹上げを強く受けやすく、大きな引抜力が生じやすい危険な箇所なので、より注意が必要です。



■垂木に作用する荷重

垂木には、次のような荷重が組み合わさって作用します。

・屋根の自重(屋根仕上げ材などによる、常に鉛直下向きの荷重)
・積雪荷重(雪が積もったときにかかる荷重)
・風圧力
〇上から押さえつける 吹下ろし力
〇下から持ち上げる 吹上げ力

垂木の断面(寸法・太さ)は、これらの荷重と軒の出の長さを考慮して決める必要があります。

垂木1本あたりの荷重には次の要素が効きます。

・屋根仕上げ材の重さ
・垂木の間隔(=負担幅B)

風圧力(特に吹上げ力)の大きさには、

・建設地の基準風速
・建物の高さ

などが影響します。

吹上げ力は、重力と反対向き(上向き)に作用します。

・屋根材が瓦のように重い場合:
 自重が大きいため、吹上げ力の影響は小さくなります
・屋根材が金属板のように軽い場合:
 吹上げ力が自重を上回りやすく、大きな引抜力が問題になります


■垂木の接合方法の種類

垂木を梁などに固定する代表的な接合方法は、次の3種類です。

・コーチボルト
・ひねり金物
・斜め釘

軒先は、

・風による繰り返し荷重を受けやすい
・外部に面しており、雨・湿気・温度変化などによる劣化が起こりやすい

といった厳しい条件にさらされる部分です。

そのため、設計時には余裕を持った接合仕様(安全側のディテール)を選ぶ必要があります。


■吹上げ力と引抜力の計算イメージ

吹上げによる荷重は、簡単には次の式で表せます。

吹上げ荷重:
w = (c × q − w₀) × B

c:風圧係数
q:速度圧(風速から求まる圧力)
w₀:屋根自重(1㎡あたりの重さ)
B:垂木間隔(負担幅)

吹上げ荷重 w が、軒の出(はね出し部分)の長さ l に作用すると、支点には次のような引抜力 Pがかかります。

支点にかかる引抜力:
P = w × l

w:吹上げ荷重
l:軒の出(はね出し距離)

この P に対して、接合部(コーチボルトなど)に十分な耐力があるかを確認する、というイメージです。


■実験条件のイメージ

以下の条件で行われた、接合部の引張耐力試験があります。

梁:スギ材、120角程度(L = 2730mm想定の一部試験体)
垂木:スギ材 45×120
支点から荷重位置までの距離:910mm(=軒の出)
支点間距離:910mm
土台幅:120mm
垂木間隔(負担幅 B):455mm

●接合方法:
・コーチボルト
・ひねり金物
・斜め釘

●試験結果の概要

試験では、それぞれの接合方法について、

・吹上げ力に対する引張耐力(どこまで耐えられるか)
・そのときの変形量

を調べています。

●グラフの条件:

横軸:変形量(mm) 0〜30mm
縦軸:荷重(kN) 0〜5kN
曲線:
「コーチボルト」
「ひねり金物」
「斜め釘」

この結果から分かったことは、

軒の出 l = 910mm、垂木間隔 B = 455mm とした場合、

2階建て屋根レベルで想定される吹上げ力に対して、

・コーチボルトやひねり金物は、十分な余裕を持って耐えられる
・一方で、斜め釘だけの場合は、耐力がギリギリで、安全性の余裕が小さい

という点です。


<まとめ>

・軒の出を大きくとる場合は、
→ はね出し距離に対して、1.5〜2.0倍以上の「引き」を確保すること

・軒先は、
→ 吹上げ・繰り返し荷重・経年劣化が重なる、厳しい条件の部分

・軽い屋根材(ガルバリウム鋼板など)+長い軒の出の場合は特に、
→ 吹上げ力に対する接合部の設計が重要

・接合方法としては、
→ コーチボルトやひねり金物を用いる方が安全性が高く、斜め釘だけに頼るのは危険寄り

ということが、実験結果からも裏付けられています。



次回は、水平構面の接合方法について、お話します。

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