NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ13

洋小屋

■洋小屋ってどんな小屋組?

洋小屋は、いくつかの部材を、トラス状に組み合わせてつくる小屋組です。

主な部材はこんな感じです。

・合掌(がっしょう):
屋根勾配に沿って斜めに立つ部材(左右から棟に向かって立ち上がる材)

・陸梁(ろくばり):
水平に架けられた梁(トラスの下弦材のイメージ)

・真束(しんづか):
棟から陸梁へ、鉛直方向に立てる束

・方杖、斜材:
束同士を斜めに繋ぐ部材(トラスの対角材の役割)

これらで1つのトラスユニットをつくり、それを約2mピッチで並べて、その上に母屋や垂木をのせて屋根面を構成します。



■和小屋との違い・構造的な特徴

●陸梁が引張だけを受ける

洋小屋では、陸梁は鉛直荷重に対してほとんど、引張力だけを負担します。

そのため、和小屋の小屋梁のように大きな断面が不要なことが多いという利点があります。

●トラス方向(張間方向)は強い

地震や風などの水平力に対しても、トラス方向(=張間方向)は強いので、和小屋のように小屋組の中にたくさん耐力壁を設けなくてもよい場合があります。

ただし、接合部はとても重要です。

各部材の接合部は、引張力にも圧縮力にも耐えられるように、しっかりと緊結しておく必要があります。

●桁行方向は別途、倒れ止めが必要

一方で、桁行方向(長手方向)にはトラスが形成されていません。

そのため、和小屋と同じように、

・小屋組に小屋筋かいを入れる
・耐力壁を設ける

などして、桁行方向の倒れ止めをきちんと計画する必要があります。

●洋小屋で特に注意するポイント

洋小屋で意識しておくべきポイントを整理すると、以下のとおりです。

・合掌、真束、吊束、方杖、陸梁などの配置と接合

・合掌尻にはスラスト(外側に開こうとする力)が働くので、
→ 陸梁の余長(合掌から梁端までの距離)を十分に確保する

・屋根面の水平剛性をしっかり確保する
→ 構造用合板などで一体的な面にする など

・小屋組の横倒れ防止
→ 小屋筋かい・ブレースなど

・軸組内の耐力壁(建物全体としての耐震要素)

・天井面の水平剛性も活用できる場合は、それも一緒に考える

・軸組から外れた位置の耐力壁がある場合、その負担のさせ方にも注意

■合掌尻(がっしょうじり)の設計が最重要

●合掌尻とは?

合掌が陸梁の上に乗っている部分、つまり、斜め材(合掌)と水平材(陸梁)がぶつかる根元です。

この部分には、

屋根荷重やトラスの力の流れによって
→ スラスト(外側に開く力)
→ せん断力・支圧力・引張力

など、いろいろな力が集中します。

そのため、トラスの中で最も注意すべき接合部が、この「合掌尻」です。

●合掌尻の破壊の種類(3パターン)

合掌尻の破壊モードには、大きく3種類あります。

① 陸梁端部のせん断破壊(最もよく起こる)

合掌から陸梁の端までの距離が短いと、その部分がせん断力に耐えられず、端部が飛んでしまうように破壊します。

洋小屋で一番よく見られる破壊形式です。

→ 対策:
 合掌から陸梁端部までの距離(A)を十分長くとること

② 陸梁のめり込み破壊(支圧破壊)

合掌と陸梁が接している部分が押しつぶされるように変形する破壊です。

耐力は低下し、局所的にゆがみは出るものの、架構全体がすぐに崩壊するほどの、致命的な破壊にはなりにくいです。

→ 対策:
接触面積を大きくする(=合掌の断面を大きくする など)ことで、
支圧応力を下げて耐力を上げることができる

③ 陸梁の引張破壊(めったに起こらない)

陸梁の仕口の周りに大きな切欠きがある、あるいは陸梁の断面が小さすぎる場合に、その部分が引きちぎられるように破壊します

実務上は、めったに見られない破壊形式です。

→ 対策:
・仕口の切欠きをできるだけ小さくする
・陸梁断面を必要以上に細くしない

■合掌尻の設計条件(簡単な数式の意味)

合掌尻周りでは、だいたいこんなパラメータが出てきます。

A:合掌から陸梁端部までの距離(陸梁の余長)
B:陸梁端部の幅
d:陸梁のせい(高さ)
Ac:支圧面積(押し付けられている面の面積)
As:せん断面積(せん断でちぎれそうな面の面積)
Px, Py:それぞれx方向・y方向成分の力
P:合掌尻に作用する合力

(1)支圧で決まるようにする条件:Ac / As ≦ 1/15

支圧面 Ac で耐力が決まるようにするには、

 Ac / As ≦ 1/15 とする

という条件があります。

ざっくり言うと、

・せん断でちぎれる前に、押しつぶしで決まるようにしたい
・その方が、急激に壊れにくく、粘り強い破壊モードになる

という設計思想です。

例:

陸梁の幅 B = 15mm(※ここでは部材寸法の一例)
梁幅 120mm、4寸勾配、スギ無等級材

とすると、

A ≧ 15 × B = 225

→ 合掌から陸梁端までの距離は少なくとも225mm以上ほしい
 このときの許容荷重 P ≒ 12.5kN(この条件のもとでの目安)です

(2)断面形状の条件:B ≦ d / 3

さらに、

B ≦ d / 3

という条件もあります。

これは、陸梁端部のせいBが大きくなりすぎないようにするための条件で、

梁せい d に対してバランスの良い寸法関係にしておくことで、

・応力の流れが安定し、
・局所破壊を起こしにくくする

という意味合いがあります。


<まとめ>

洋小屋はトラス構造の小屋組で、陸梁が引張力を受ける構造のため、断面を小さくできる利点があります。

ただし、接合部が非常に重要で、特に合掌尻にはスラストやせん断・支圧・引張などさまざまな力が集中します。

合掌尻では、

・梁余長を十分にとる(Aを大きくする)
・接触面積を増やして支圧破壊モードとする(Ac/As ≦ 1/15)
・断面バランスを整える(B ≦ d/3)

などの工夫で、急激に壊れない、安全で粘り強い架構にすることができます。

トラス方向(張間方向)は強い一方、桁行方向の倒れ止め(筋かい・壁など)は必須です。



次回は、軒先の吹上げについて、お話します。

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