NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ11

登り梁

■登り梁形式とは?

屋根の勾配に合わせて、梁を斜めに掛ける小屋組を、登り梁形式といいます。

垂木を太くして、小屋梁・小屋束・母屋などをほとんど使わないので、

・天井を高くして、のびのびした空間をつくりやすい
・部材点数が減るので、いかにも合理的に見える

といったメリットがあります。

小屋梁がないぶん、建て方(骨組みを組み上げる作業)のときに足場になる材が少なく、施工精度の高さが求められます。

構造的には、和小屋のグループに入りますが、小屋梁をほとんど設けないことが、構造上の大きなポイントです。



■登り梁にかかる力と問題点

●たわみとスラスト(横に広がる力)

登り梁形式では、小屋組に鉛直荷重(自重・積載・雪など)がかかると、

・屋根全体がたわみやすい
・桁梁(外周部の梁)に、外側に開こうとする力=スラストが生じる

という特徴があります。

「どうせ居住性(揺れの感じやすさ)にはあまり関係ないし…」
と考えて、棟木や登り梁の断面を細くしすぎると、

・登り梁・棟木が大きくたわむ
→その結果、スラストがさらに大きくなる
→さらに屋根がたわみ、仕上げ材のズレ・外壁のひび・雨漏りなどが起こりやすくなる

という悪循環に陥ります。

●雪による偏荷重(かたよった荷重)

積雪時には、

・南側の屋根の雪は溶けやすい
・北側の屋根には雪が残りやすい

といったことが起こり、屋根の荷重が片側に偏ります。

この偏荷重によって、建物全体が傾くおそれがあります。

また、妻面(屋根の三角形の面)は風を正面から受けやすいので、耐風設計にも注意が必要です。


■登り梁形式の弱点に対する主な対策

登り梁形式を採用するときは、次のような対策が重要です。

① 棟木・桁梁のたわみを小さくする

登り梁や棟木・桁梁の断面に余裕を持たせる
→たわみを小さくすれば、スラスト(横に広がる力)も小さくなる

② 耐力壁を屋根面(登り梁の位置)まで延ばす

耐力壁を2階床で終わらせず、登り梁の位置までつなげる
→そうすることで、屋根面にかかった水平力を確実に耐力壁まで伝達できる

③ 屋根面の水平剛性を高める

構造用合板などを用いて、屋根面を面として固める
→水平剛性(水平に変形しにくさ)を高めることで、地震力や風圧力を耐力壁にスムーズに流せる

④ 妻面の耐風処理をする

妻面が風で大きく変形しないように、たとえば次のような方針をとります。

・梁断面を大きくする
・通し柱を使い、柱断面を大きくする
・通し柱の本数を増やして、柱間隔を細かくする
・屋根と直交方向に小屋梁を設ける


■スラストを抑える最も有効な方法

スラストを減らすためには、

桁梁どうしを水平材でつなぐ(=小屋梁などでタイバーの役割を持たせる)

ことが最も効果的です。

そのため、登り梁形式であっても、おおよそ2間(約3.6m)ごとに小屋梁を設けるのが望ましいとされます。

ここで設ける小屋梁は、

・屋根荷重を直接支える必要はない(⇒断面は小さめでもよい)
・ただし、スラストを受けるので、桁との接合部に引寄金物などの確実な接合が必要

という位置づけになります。


■登り梁形式のディテール上の注意点

注意事項を整理すると次の通りです。

●水平力の伝達と小屋組内部の補強

・耐力壁に水平力が伝わるように、小屋組の中にも壁(筋かい・耐力壁)を設ける
・小屋梁は屋根荷重を支える必要はないが、桁梁が水平方向に変形するのを防ぐ役割がある

●吹上げ(屋根の下からの風)への対策

・軒先が風で持ち上げられても外れないよう、金物などでしっかり留める
・軒の出隅部は特に風を強く受けるので、接合部を重点的に補強する
・軒先の吹上げ対策は、母屋・垂木形式と同様に配慮する

●屋根面・桁方向の安定

・屋根面の水平剛性をしっかり確保する(構造用合板などで一体化)
・桁行方向に対しては、小屋組が横倒れしないよう、筋かいなどで倒れ止めを設ける

●接合部・外周部の補強

・外周部の接合部には、引寄金物などを用いて十分に補強する
(スラストや風荷重に対して緩まないようにする)


<まとめ>

登り梁形式は、

開放的でデザイン性の高い空間がつくれる一方で、たわみ・スラスト・偏荷重・耐風性といった構造上の弱点を持つ

という、メリットとリスクの両方が大きい形式です。

そのため、

・断面に余裕を持たせてたわみを抑える
・屋根面の水平剛性を確保する
・耐力壁や小屋梁の配置・接合を、スラストや風を意識して計画する

といった対策をセットで行うことが、登り梁形式の設計では非常に重要になります。



次回は、折置組と京呂組について、お話します。

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