NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ10

母屋と垂木

■母屋・垂木形式

母屋・垂木形式の小屋組は、

・下に小屋梁
・その上に小屋束(たて材)
・さらにその上に母屋
・母屋から垂木が掛かって屋根を支える

という構成になっています。

小屋梁の断面さえ十分に確保しておけば、小屋束の位置を比較的自由に決められるので、いろいろな屋根形状に対応しやすいのが特徴です。

ただし構造的には、

・小屋梁より下の軸組(柱・梁など)

・小屋組(母屋・垂木など)

を別々に考えるのではなく、一体の架構として考える必要があります。



■水平力(地震・風)にどう抵抗させるか?

●小屋束だけでは水平力に弱い

地震力や風圧力などの水平力に対しては、小屋束だけではほとんど抵抗できません。

そのため、小屋組の中にも、

・筋かい
・壁(面材で固めた部分)

などを設けて、水平力に抵抗できる小屋壁をつくる必要があります。

●トラスと勘違いしやすいポイント

張間方向を見ると、

・斜めに掛かった垂木
・水平な小屋梁
・その間の小屋束

で三角形ができているので、トラスっぽく見えることがあります。

しかし実際には、

・垂木は 釘留め
・小屋束は かすがい留め

程度であり、トラスとして期待できるほど剛な接合ではありません。

したがって、

トラスだから水平力に強いだろう

と考えるのは誤りで、垂木と小屋梁の間に壁(面材+筋かいなど)を設けて水平力に抵抗させる必要があります。


■2階の耐力壁と屋根面の連続性

2階に耐力壁がある場合は特に、

屋根に作用した水平力 → 小屋組の壁 → 天井面 → 2階の耐力壁

という力の流れ(伝達経路)が切れないようにしておくことが重要です。

そのために、

・小屋組の中にも、2階の耐力壁と同じ構面に対応する位置に壁(筋かい・合板など)を設ける

・耐力壁がある軸組と小屋の壁の位置がずれている場合は、その付近の天井面を面材などで固めて、力をバトンタッチできるようにする

という工夫をします。

イメージとしては、

屋根面 → 小屋壁 → 天井面 → 2階耐力壁

を、ひとつの連続した水平構面のネットワークとしてつなぐイメージです。


■桁行方向(建物の長手方向)の注意点

桁行方向(建物の長手方向)についても、同様に水平力への抵抗を考えます。

特に、棟木付近は、水平力を受けたときに横倒れしやすい部分です。

そこで、

・屋組内に壁を設ける
・小屋筋かいを入れて、棟木や母屋の横倒れを防止する

といった対策が必要です。


■垂木のはね出し(軒の出)と風の問題

日本の住宅では、

・日よけ
・雨仕舞

の都合から、軒の出を深くする(垂木のはね出しを長くする)ことがよくあります。

しかし、軒の出が長くなると、強風時に 大きな吹上げ力(上向きの風圧) を受けやすくなります。

特に、屋根仕上げが金属板などの軽い材料の場合は、

・強風で屋根が「めくれ上がる」
・最悪、屋根が飛ばされる

といった危険性があります。

そのため、垂木と桁梁(軒桁)の接合部は、単なる釘だけでなく、金物などを使ってしっかり緊結することが重要です。

特に軒の出の隅角部は、最も風にあおられやすいので、接合部の設計・施工に要注意です。


■「注意点」の整理

ポイントを、整理すると次のようになります。

・小屋組内の壁で負担した水平力を2階の耐力壁へ伝達するために、
→ 天井面の水平剛性(面としてのかたさ)を確保する

・軒の出の隅部は最も風にあおられるので、
→ 垂木や仕上材の接合部に注意する

・吹上げ時に屋根が外れないように、
→ 金物などで確実に留める

・桁行方向についても、
→ 壁や小屋筋かいを設けて、棟木や母屋の横倒れを防止する

・屋根面の水平力が耐力壁にきちんと伝わるように、
→ 小屋組内にも同一構面上に壁を設ける(2階の耐力壁と「面」がそろっていればOK)



次回は、登り梁について、お話します。

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