NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ9

和小屋と洋小屋

■小屋組の2つのタイプ

木造の屋根を支える小屋組は、大きく「和小屋」 と 「洋小屋」 の2つに分けられます。

和小屋と洋小屋のポイントは、

・和小屋:小屋梁(こやばり)の断面(太さ・大きさ)に注意が必要
・洋小屋:引張力がかかる接合部(ボルト・金物)に注意が必要
・どちらの場合も、桁行方向(建物の長手方向)に倒れ止めを設けることが大事

ということです。



■和小屋(わごや)
和小屋は、日本の木造住宅で昔から使われている、小屋組の基本的な形式です

水平に小屋梁をかける
→その上に束(つか)を立てる
→束の上に母屋(もや)を渡し
→母屋に垂木(たるき)を掛けて屋根を支える

という、積み木のように上へ上へと組み上げていく構造です。

●特徴

屋根の荷重のほとんどを小屋梁が受けるため、
→ 小屋梁の断面が大きくなる(太い梁が必要)

さまざまな屋根形状に対応しやすく、
→ 小屋裏空間の利用(収納・ロフトなど)もしやすい

●注意点

張間方向・桁行方向の両方で、小屋組が倒れないように、
→ 筋かいや壁を設けておく必要がある

小屋梁より上の構造が比較的自由な分、
→ その下の構造(下階の壁・柱など)との一体性が弱くなりやすい

特に、地震や風などの水平力をどうやって下の構造に伝えるかが課題になりやすい。

●登り梁形式

近年は、

・小屋裏を見せるデザインにしたい
・小屋裏収納を広く取りたい

といったプランでは、小屋束や母屋を使わず、代わりに、

断面の大きな垂木(=登り梁)を直接かける登り梁形式

を採用するケースも増えています。


■洋小屋(ようごや)

洋小屋は、トラス構造を用いた小屋組のことです。

日本では、明治時代に西洋人技術者の指導を受けた官庁建築や、工場・学校などの大空間を必要とする建物で多く採用されました。

背景には、トラス理論という力学的に合理的な考え方の導入があります。

●特徴

小屋組をトラス形状(合掌+斜材+束+陸梁)にすることで、各部材には基本的に軸力のみ(引張・圧縮)が作用する。

その結果、
→ 比較的小さな断面の部材でも、大きなスパンを飛ばすことが可能

一方で、斜材が多く入るため、
→ 小屋裏の空間は和小屋に比べて使いにくく、小屋裏利用は制限されやすい

●接合部の注意点

トラスでは、特に引張力が作用する接合部が重要。

そのため、ボルトや金物を使って、接合部を確実に固定することが求められる。

●水平荷重と倒れやすさの違い

・張間方向
→ 洋小屋ではトラスになっているため、倒れにくく、水平力にも強い

・桁行方向
→ トラスになっていないため、そのままだと倒れやすい方向になる
→ そこで、棟木付近に小屋筋かいなどを入れて、桁行方向の倒れを防止する

●施工(建方)時のポイント

洋小屋のトラスは接合部が多く複雑なため、現場では、まず地面でトラスを組み立て(地組み)、それをクレーンなどで吊り上げて、桁梁や柱の上に載せる方法が一般的。

そのため、
→ 敷地が狭い場合(狭小地)では、この地組み・吊り上げ作業が難しくなる
という施工上のデメリットもある。


■小屋組の仕組み

●和小屋のイメージ
小屋梁が屋根荷重を主に支える「土台」のような役割

その上に小屋束・母屋・垂木を載せていくことで、
→ さまざまな屋根形状に対応しやすい構成になっている

登場する主な部材:
棟木、垂木、母屋、小屋束、小屋梁、桁

●洋小屋のイメージ
合掌・斜材・束・陸梁を組み合わせて、一体のトラス構造として屋根荷重を支える

各部材には主に引張力・圧縮力が作用し、引張力がかかる部位は、ボルトや金物でしっかりと留める必要がある。

登場する主な部材:
棟木、合掌、束、斜材(方杖)、陸梁


■桁行方向の倒れ防止

和小屋・洋小屋のどちらでも、桁行方向(建物の長手方向)は倒れやすい方向になりやすい。

そのため、
→ 桁行方向にも、筋かいを入れた壁などの「倒れ止め」を設けることで、
地震や台風などの水平力に対して安定した小屋組とする。



次回は、母屋と垂木について、お話します。

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