NSJ住宅性能研究所

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床組・小屋組シリーズ8

代表的な屋根形状

■屋根の形と構造の関係

木造住宅の屋根の形は、

・見た目(デザイン・意匠)
・雨の流れ(雨仕舞)

だけでなく、

小屋組(こやぐみ:屋根を支える骨組み)の力の流れ方 を意識して決めることが大切です。

木造住宅でよく使われる5つの屋根形状と、その構造的な注意点をわかりやすく整理します。



① 切妻屋根(きりづまやね)
もっとも基本的な勾配屋根の形です。三角屋根のイメージです。

・建物の長い方向を「桁行(けたゆき)」
・短い方向を「張間(はりま)」

三角形になっている短辺側の外壁を妻面(つまめん・つまづら)と呼びます。

●構造上のポイント

妻面は風を正面から受けやすいため、耐風設計(筋かい・面材など)が重要。

妻側の屋根のはね出し部分を「けらば」といい、ここは吹き上げる風の力にも注意が必要。

屋根を支える小屋組(和小屋・洋小屋)は、桁行方向に倒れないように
小屋筋かいなどでしっかり固定しておく。

② 寄棟屋根(よせむねやね)
切妻屋根と違い、四方すべてに勾配がついている屋根です。

●特徴

妻側にも屋根が下がってくるため、雨仕舞は切妻屋根より有利。

小屋組は、和小屋・洋小屋どちらでも対応可能。

●構造上のポイント

桁行方向の立断面が三角形になり、接合部さえしっかりしていれば小屋組が倒れにくい形。

出隅(建物の角)まわりでは、垂木が片持ち梁として働きにくく、先端の破風板(はふいた)が構造的に重要な支持材になる。

③ 方形屋根(ほうぎょうやね)
平面が正方形の寄棟屋根です。四方から中心に向かって屋根が集まる形。

●構造上のポイント

屋根の四隅から伸びる隅木(すみぎ)が中心に集まり、それを心柱(しんばしら)で支えることが多い。

屋根頂部に部材が集中するため、接合部の納まりやディテールを十分に検討しておく必要がある。

④ 片流れ屋根(かたながれやね)
屋根の勾配が一方向だけに流れている形です。ロフト付きの住宅などでよく使われます。

●特徴・注意点

勾配によっては、片側の軒高・階高が高くなる。

高いほうの外壁や桁面は、風を受ける面積が大きくなりやすいため、

・庇(ひさし)の吹き上げ
・外壁の耐風設計

に注意が必要。

けらば側も、風の吹き上げや雨の侵入に配慮する。

⑤ 陸屋根(ろくやね)
ほぼ水平な、平らな屋根です。屋上テラスに使える形状。

●特徴

屋上をバルコニーや屋上庭園などとして利用しやすい。

ただし木造では、雨仕舞が難しく、採用例は少なめ。

●構造上のポイント

小屋裏空間がないため、屋根面と耐力壁が連続しやすく、水平剛性を確保しやすいというメリットがある。

反面、勾配が小さいので水が溜まりやすく、梁のたわみによって水たまり(ポンド)ができないよう、断面やスパンの計画に注意する必要がある。


<まとめ>

屋根形状は、デザインや雨仕舞だけでなく、風・地震に対して力がどう流れるかまで含めて考える必要があります。

特に、

・風を受ける面(妻面・高い外壁・けらば・庇)
・接合部に力が集中する部分(隅木の集まる頂部、出隅、破風板との接合部)

などは、構造的な弱点になりやすいため、意識してディテールを設計することが大切です。



次回は、和小屋と洋小屋について、お話します。

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