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■「床倍率1」ってなに? 床倍率は、床や小屋組(屋根まわりの骨組み)が、どれくらい横方向に変形しにくいか(=かたさ)を表す指標です。 そのうち 「床倍率1」 とは、 床の長さ1mあたり、1.96kN(約200kg)の水平力をかけたときに、 床の変形角が 1/150ラジアン になる性能をもつ床 という意味です。 壁でいう「壁倍率」と同じ考え方ですが、試験方法が違うため、許容される変形角は床が1/150、壁が1/120 といったように数値が異なります。 ・床倍率1:1.96kN/m(≒200kg/m) ・床倍率0.5:0.98kN/m(≒100kg/m) ・床倍率2.0:3.92kN/m(≒400kg/m) 数値が大きいほど、かたい床=水平方向に変形しにくい床です。
■床倍率が高いと何がよいのか 床は、地震力や風圧力などの水平力を耐力壁まで運ぶ水平の道路の役割をしています。 床倍率が高い → 床が変形しにくい → 大きな水平力を安定して伝えられる その結果、下階の耐力壁どうしの距離(構面間距離)を長くとることも可能になります。 逆に床が柔らかいと、耐力壁の量は足りていても、床が先に大きく変形・破壊してしまい、耐力壁がうまく働かない危険があります。 ■小屋組にも床倍率の考え方は使える 床倍率は、小屋組(屋根まわりの構造)にも適用できます。 ●勾配屋根を「水平な板」とみなす 小屋組の床倍率を考えるときは、 勾配のついた屋根面の剛性を水平な面に置き換えて考える(水平面に変換する) という考え方をします。 そのうえで、 ・小屋梁レベルに入れた火打梁 ・屋根面の面材などによる屋根面の床倍率 は、足し合わせて(加算して)評価できます。 ■垂木は転ばし根太に近いイメージ 屋根の垂木は、桁梁や母屋に少し欠き込んで載せるのが一般的です。 この納まりは、床組でいうところの、転ばし根太に近い扱いになります。 ただし注意点として、 屋根勾配が急になるほど、垂木が転びやすくなる → つまり、同じ仕様でも屋根勾配がきついほど床倍率は低く評価される傾向があります なお、5寸勾配以下の屋根であれば、同じ仕様の転ばし根太床と同等の床倍率とみなせます。 さらに、 垂木に転び止めを設けた場合は、「半欠き」や「落し込み」といった、よりがっちりした根太床と同じくらいの床倍率になると考えることができます。 ■床面の形状と変形量の関係 同じ床倍率、同じ耐力壁の構面間距離でも、床面の形(奥行きや長さ)が変わると、水平変形量は変わります。 例:風圧力が作用する場合 奥行きD₁・長さL₁ の床① 奥行きD₂・長さL₁ の床② 床倍率も、耐力壁の構面距離L₁も同じでも、奥行きDが大きい床ほど、床全体としての水平変形量は小さくなります。 これは、 梁せい(梁の高さ)を大きくすると、たわみが小さくなる というイメージと同じで、 床の「幅・奥行き」が大きいほど、面としては変形しにくくなる ということです。 また、 同じ奥行きでも構面間距離が長い床は、 → より高い床倍率が求められます 同じ構面間距離でも奥行きが小さい床は、 → やはり高い床倍率が必要になります ■1階と2階の構面位置がずれている場合の注意 1階と2階で耐力壁の位置(構面)が一致していない場合、2階の床は次のような役割を同時に担うことになります。 ・2階床に作用する水平力Q₂を受ける ・途中にある耐力壁が負担した水平力を、さらに1階の耐力壁へ伝達する つまり、その床は 2階分+中間の耐力壁分の水平力を下階まで運ぶバイパスのような役割 をしていることになります。 そのためこのような場合、 2階の床倍率を高めに確保しておく必要がある というのがポイントです。 ■床が先に壊れてはいけないという考え方 大地震のような大きな外力が作用したとき、 床(水平構面)は、耐力壁より先に壊れてはならない という考え方が非常に重要です。 もし床が先に破壊してしまうと、耐力壁の量や性能は十分でも力を伝える道である床が壊れてしまうため、耐力壁が本来の力を発揮できず、建物倒壊のリスクが高まることになります。 だからこそ、 必要な壁量を満たすだけでなく、それをしっかり支えるだけの床倍率(床のかたさ)を確保する ことが、木造住宅の安全設計では欠かせません。 <まとめ> ・床倍率1=1mあたり約200kgの水平力に耐え、変形角1/150で収まる床のかたさ ・数値が大きいほどかたい床になり、水平力を遠くの耐力壁まで安全に伝えられる ・勾配屋根も、水平面に置き換えることで床倍率として評価できる ・床の形状(奥行き・構面間距離)や、1・2階の構面のズレによって 必要な床倍率は変わる ・地震時には、床が先に壊れないようにすることが大前提 というイメージを持っておくと、床倍率の意味がずっと分かりやすくなると思います。
次回は、水平構面と変形について、お話します。 <重要>今後のブログ執筆についてのお知らせ ブログ移行のお知らせ いつも当ホームページのブログをご覧いただき、誠にありがとうございます! これまで木造住宅の耐震診断・耐震補強、建築基準法、住宅の安全性に関する情報などを、こちらのホームページで発信してまいりました。 日々の記事を読んでくださる皆さまの存在が、私にとって大きな励みとなっております。 あらためて、心より感謝申し上げます。 このたび、より読みやすく、継続的に情報をお届けしていくため、ブログ記事の公開先をnoteへ移行することにいたしました。 完全移行日は、2026年6月1日を予定しております。 今後は、木造住宅の耐震診断・補強設計に関する実務的な内容や、建築基準法改正に関する解説、建築関係者や不動産大家さんの方に役立つ情報などを、noteにて発信してまいります。 新しいブログはこちらからご覧いただけます。 noteの記事はこちら↓ これまでホームページのブログを読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。 場所は変わりますが、これからも「日本にもっと安心・安全・良質な木造リノベを!」という想いを大切に、少しでもお役に立てる情報を丁寧に発信してまいります。 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
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