NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

床組・小屋組シリーズ4

床のたわみ

■床のたわみと居住性

床に人や家具などの荷重がかかると、床を構成している部材(床板・根太・小梁・大梁)が少しずつたわみます。

床の中央のたわみ量
=床板のたわみ
+ 根太のたわみ
+ 小梁のたわみ
+ 大梁のたわみ
→ これらの「合計」になります。

もし、それぞれの部材のたわみを、建築基準法ギリギリの許容値で設計してしまうと、合計すると床全体としてはかなり大きなたわみになることがあります。

そのため、

重要な部材ほど、安全率に余裕をもたせて設計する

ことが大切です。とくに居住性(歩いたときのフワフワ感・不安感)に影響します。



■たわみを小さくする考え方の基本

各部材の断面(せい・幅)を決めるときに効いてくる要素は主にこの2つです。

・スパン(支点間の距離)
・部材が受け持つ荷重の大きさ

基本的な考え方はシンプルで、

・スパンを短くする
・1本の部材にかかる荷重を減らす

ことで、たわみを小さくすることができます。


■床板のスパンと荷重の負担幅

床板は、人や家具などの荷重を直接受ける部材です。

床板は下にある 根太 に支えられています。

したがって、床板のスパン = 根太の間隔 になります。

床板のたわみを抑えたい場合は、

・床板を厚くする(せいを大きくする)
・根太間隔を狭くして、床板スパンを短くする

などの方法が有効です。


■根太のスパンと荷重の負担幅

次に、床板から伝わってきた荷重を受けるのが 根太 です。

根太は 床梁 に支えられています。

したがって、根太のスパン = 床梁の間隔 になります。

根太について、押さえておきたいポイントは2つです。

●単純梁と連続梁

根太が 1本の梁の上だけに乗っている 場合
→ 力学的には 単純梁 とみなせます

根太が 複数本の梁の上をまたいで連続している 場合
→ 連続梁 となります

連続梁の方が変形が抑えられ、

連続梁のたわみは、単純梁の半分以下になる

という利点があります。

●根太の間隔と1本あたりの荷重

根太が負担する荷重の範囲は、

左右の隣り合う根太との間隔の「半分ずつ」です。

つまり、

根太の間隔を細かく(狭く)する
→ 1本あたりの負担荷重が小さくなる
→ たわみも小さくできる

ということになります。


■床梁のスパンと荷重の負担幅

最後に、根太からの荷重を受けるのが 床梁 です。

床梁は 柱 や 大梁 に支えられています。

そのため、床梁のスパン = 柱間隔 または 大梁の間隔 になります。

床梁では次の点に注意します。

●スパンが長くなると

・たわみが大きくなる
・支点(柱・大梁)にかかる荷重も大きくなる

●その結果、

・梁そのものの断面設計 だけでなく、
・支点まわりの接合方法(柱・大梁との接合部) についても
十分に検討する必要があります。

また、床梁どうしの間隔についても、

梁の間隔を狭くする(本数を増やす)
→ 1本あたりの負担荷重が減る
→ たわみを小さくできる

という効果があります。


<まとめ>

床のたわみは、

床板 → 根太 → 床梁 → 柱・大梁

へと流れる荷重に対して、各部材のスパンと荷重の負担範囲をどう設定するかで決まります。

・スパンを短くする
・間隔を細かくして1本あたりの荷重を減らす
・断面を適切に大きくする
・重要な部材ほど安全率をしっかりとる

このあたりを押さえておけば、床のたわみを抑えて、居住性の高い床を設計しやすくなります。



次回は、床倍率について、お話します。

▲このページのTOPへ