NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

床組・小屋組シリーズ3

火打ち

■火打ちとは?

火打ちとは、床や小屋の「隅(すみ)」の部分に、およそ 45°の角度 で斜めにかける梁(はり)のことです。

主な役割→ 水平構面(床や小屋)のひずみ(変形)をおさえること

地震や風、荷重などで床が、平行四辺形のようにズレてしまうのを防ぐための部材です。


■火打ちの強さと配置の目安

火打ちには、床倍率(ゆかばいりつ)という指標がありますが、火打ちだけでは床倍率は1.0未満で、特別強いとは言えません。

そのため、

・火打ちだけに過度な期待はできない
・一般的には、4m程度ごと に火打ちを入れるのが妥当な目安

耐力壁の配置が悪い など、建物全体のバランスが悪い場合は、火打ちだけでは十分に対応できないこともあります。



■火打梁の一般的な納まり

●標準的な火打梁

・通常は 90mm角程度の木材 を使用
・床梁に ボルトで留める のが一般的
・ボルト位置の目安:材の端からボルトまでの距離 L ≒ 750mm前後 が望ましい

●梁の高さに段差がある場合(渡り腮の火打ち)

直交する梁の高さがそろっていないときは、次のような納まりがあります。

・片方の梁には渡り腮(わたりあご)で掛けて、ダボまたはボルト留め
・もう一方には ホゾを差して鼻栓(はなせん)留め

この方法の注意点:

・火打ちを隣り合って何本も並べて入れることが難しい
・建方時(組み立て時)に、施工上の工夫が必要

●金物を使った火打ち

最近では、次のような鋼製火打金物もよく使われます。

・ボルト用の 座彫りや梁の欠き込みが不要
・ラグスクリューで留めるだけ でよいものもある
・施工性がよく、耐震補強工事にも使われることが多い

例:
梁・胴差しに火打金物(HB)を取り付け、
平釘(3-ZF55)やM12の六角ボルトなどで固定し、
ボルト位置は材面から 700mm程度 を目安とする、など


■火打土台は本当に必要か?

1階の床まわりで土台同士を斜めにつなぐ火打ちを、特に火打土台(ひうちどだい) と呼ぶことがあります。

しかし、現在よく使われる ベタ基礎 では、

・鉄筋コンクリートの耐圧盤(スラブ)の水平剛性が非常に高い
・土台をアンカーボルトで基礎にしっかり緊結していれば、1階床がひずむ心配はほとんどない

そのため、

・通常のベタ基礎の住宅では、火打土台は基本的に不要
・布基礎でも、基礎で囲まれた面積が20㎡以内なら、火打土台は不要

●火打土台が必要になるケース

逆に、火打土台が必要になる のは、次のような場合です。

・基礎の立上りが外周部だけで、内部はすべて 束立て(床束で支えるだけ) の場合
・伝統構法などに見られる 石場立て(いしばだて)基礎 の場合

このようなケースでは、基礎そのものの水平剛性が低いため、火打土台で床のひずみを抑える役割が重要になります。


■イメージ整理

① 火打ちの入った梁
→ 床梁同士を斜めに結ぶ火打ちが入り、4m程度の間隔が目安

② 火打梁(90mm角)
→ 梁と火打梁がボルトで接合され、ボルト位置は端から 750mm前後

③ 渡り腮の火打ち
→ 高さの違う上下の梁に対して、渡り腮・ダボ/ボルト・鼻栓などで納める

④ 鋼製火打ち
→ 木の梁や胴差しに、金物(HB)+釘+ボルトで固定する

⑤火打土台
→ 一般的な火打土台/下にすぐコンクリート基礎があるので不要な例/ 玉石基礎で必要になる例、などの比較



次回は、床のたわみについて、お話します。

▲このページのTOPへ