NSJ住宅性能研究所

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構造壁シリーズ16

大壁と真壁

結論から言うと、

同じ面材壁でも「大壁」と「真壁」では、地震などの水平力が柱・梁に伝わる経路が違うので、真壁の方が少し「グニャッ」としやすい(剛性が低くなりやすい)です。


■大壁と真壁の違い

●大壁
柱や梁の 外側を面材(合板など)で一面に覆う つくり方
→ 柱・梁は壁の中に隠れているイメージ

●真壁
柱や梁が 室内側に見えていて、その内側のラインに面材を張るつくり方
→ 柱・梁が露出していて、その内側に壁があるイメージ



■大壁の力の流れ

地震などで 水平力 がかかったとき、

水平力 → 面材の面内せん断 → 釘のせん断 → 柱・梁

力の流れはこうなります。

もう少しかみ砕くと、

水平力がかかると、まず 面材(合板など)が面内方向にせん断変形 しながら抵抗する

→変形によって、面材と柱・梁をつないでいる釘にせん断力 がかかる

→釘がその力を 直接、柱・梁に伝える。

つまり大壁は、

面材 ―(釘)→ 柱・梁

という シンプルな1ステップ で力が伝わる構造です。

そのため、面材を留め付ける釘の性能 が壁全体の耐力に大きく効いてきます。


■真壁の力の流れ

真壁では、柱や梁に直接面材を張らず、その間に 受け材 という下地材が入ります。

このため、力の流れは少し複雑になります。

水平力
→ 面材の面内せん断
→ 面材と受け材をつなぐ釘のせん断
→ 受け材
→ 受け材と柱・梁をつなぐ釘のせん断
→ 柱・梁

図式化すると、

面材 ―(釘)→ 受け材 ―(釘)→ 柱・梁

という 2ステップ の伝達になります。


■真壁で注意すべきポイント

●隅角部(コーナー部)
受け材同士の取り合いで すき間ができやすく、留める釘には 引抜力がかかりやすい
→ コーナー部の釘の打ち方・本数は特に重要

●変形時の釘の挙動
壁が変形すると、

・面材と受け材をつなぐ釘
・受け材と柱・梁をつなぐ釘

の両方にせん断力や引抜力がかかり、釘が抜けやすくなる。

●両面張りの場合
面材を両側から張るときは、片面張りのときと比べて 受け材を柱に留める釘を2倍の本数 打つのが基本
→ 両側から面材に引っ張られても、受け材がしっかり柱に固定されるようにするためです


■なぜ真壁のほうが剛性が低くなりやすいのか

整理すると、

●大壁
面材 → 釘 → 柱・梁
⇒ 力の経路が短く、部材も少ないので、剛性が出やすい。

●真壁
面材 → 釘 → 受け材 → 釘 → 柱・梁
⇒ 間に「受け材」と「釘」がもう一段入るため、

・受け材自体の剛性
・受け材を留める釘の本数・位置・施工精度

によって、全体としてたわみやすく(剛性が低く)なる傾向 がある。

このため、同じ面材・同じ釘でも、一般的には真壁の方が大壁より耐力・剛性が低くなりがち だと考えられます。

真壁でしっかり耐力を出したい場合は、特に、

・受け材のサイズ・取り合い
・受け材を柱・梁に留める釘の本数・位置
・隅角部のディテール

に注意して設計・施工することが大切になります。



次回は、水平構面について、お話します。

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