JavaScript を有効にしてご利用下さい.
まずはポイントから。 ・接合仕様(どんな金物・仕口でつなぐか)は、告示の表または計算で決める ・同じ柱の「柱頭」と「柱脚」は同じ接合仕様にすること ■なぜ柱頭・柱脚の接合が重要か 耐力壁がちゃんと力を発揮するかどうかは、壁そのものだけでなく、端部の柱と横架材(梁・胴差し・土台など)を どうつなぐか(接合部) に大きく左右されます。 地震や風で水平力がかかると、耐力壁の端にある柱には引抜力が生じます。 この、柱を抜こうとする力に抵抗するために、柱の上端(柱頭)と下端(柱脚)をどんな金物・仕口で緊結するかをきちんと決める必要があります。
■接合仕様の決め方:3つの方法 柱頭・柱脚の接合仕様は、次のいずれかの方法で決めます。 ①告示1460号の表による方法 ・告示に載っている標準的な接合仕様とそれぞれの耐力(Nの値)を使う方法 ②告示1460号の解説にある略算式による方法(N値計算法) ・壁倍率などから、柱に作用する引抜力を簡易計算する方法 ・許容応力度計算の考え方をベースにしています ③許容応力度計算による方法 ・本格的な構造計算で、引抜力や接合部の耐力をきちんと算定する方法 ②のN値計算法では、告示1460号 表3にあるNの値が、各接合仕様の許容できる上限を示しています。 表に載っていない金物を使うときは、その金物の引張耐力が必要耐力以上あるかを確認しなければなりません。 ■柱頭と柱脚は同じ仕様にする理由 引抜力は、同じ柱の柱頭・柱脚で同じ大きさになります(上から抜こうとしても、下の固定でも同じ力が問題になるイメージ) そのため、同じ柱の上(柱頭)と下(柱脚)で接合仕様をそろえる必要があるとされています。 ■告示における接合仕様の段階((い)~(ぬ)) 告示1460号では、接合仕様が接合耐力の大きさごとに(い)~(ぬ)の10段階に整理されています。 ここではイメージしやすいように、ざっくり特徴を説明します。 ●(い)ほとんど引抜抵抗のない接合 例: ・短ホゾ差し ・かすがい打ち など 引抜抵抗力はほぼゼロ と考える接合です。 構造的に重要でない部分(非耐力要素など)に使うイメージです。 Nの値:0.0以下 必要耐力:0.0kN以下 ●(ろ)最低限確保したい接合(3.4kN) 例: ・長ホゾ差し込栓打ち ・CP-L金物+CN65釘 引抜抵抗力:3.4kN 計算上は引抜力が生じない場合でも、耐力壁としての役割を考えると、最低でも(ろ)以上の接合仕様にしておきたいレベルです。 Nの値:0.65以下 必要耐力:3.4kN ●(は)やや強めの金物(5.1kN) 例: ・CP-T金物+CN65釘 ・VP金物+CN90釘 引抜抵抗力:5.1kN 現場でよく使われるホールダウン手前のクラスの金物接合です。 同等品の金物も多く、市販品のバリエーションが豊富なゾーンです。 Nの値:1.0以下 必要耐力:5.1kN ●(に)羽子板ボルトなど(7.5kN) 例: ・羽子板ボルト+M12ボルト ・短冊金物+M12ボルト など 引抜抵抗力:7.5kN 羽子板ボルトを使う、比較的一般的な接合方法です。 Nの値:1.4以下 必要耐力:7.5kN ●(ほ)羽子板+スクリュー釘で少し強化(8.5kN) 例: ・羽子板ボルト+M12ボルト+ZS50(スクリュー釘) ・短冊金物+M12ボルト+ZS50(スクリュー釘) 引抜抵抗力:8.5kN (に)よりも、スクリュー釘を併用することで少し耐力を上げたタイプです。 Nの値:1.6以下 必要耐力:8.5kN ●(へ)10kNクラスのホールダウン金物 例: ・10kN用引寄金物+座付きボルト ・10kN用引寄金物(隅柱用) など 引抜抵抗力:10.0kN いわゆるホールダウン金物の入り口レベルです。 座付きタイプは土台側の耐力条件も関係するため、(へ)の区分のみとなっています。 Nの値:1.8以下 必要耐力:10.0kN ●(と)15kNのホールダウン金物 例: ・15kN用引寄金物(柱-横架材、隅柱など) 引抜抵抗力:15.0kN Nの値:2.8以下 必要耐力:15.0kN ●(ち)20kNホールダウン(必要耐力は25kN) 例: ・20kN用引寄金物(柱-横架材、隅柱など) 必要耐力:25.0kN (金物名称は20kNだが、告示上の必要耐力は25kNとして扱われます) Nの値:3.7以下 必要耐力:25.0kN ●(り)25kNホールダウン 例: ・25kN用引寄金物(柱-横架材、隅柱など) 必要耐力:25.0kN (ち)より強い金物を使いつつ、必要耐力としては同じ区分に入ります。 Nの値:4.7以下 必要耐力:25.0kN ●(ぬ)30kNクラス(15kN×2) 例: 15kN用引寄金物を2つ使う接合(柱・隅柱) 必要耐力:30.0kN 大きな引抜力が想定される柱(大開口、耐震等級3の隅柱など)で使われるレベルです。 Nの値:5.6以下 必要耐力:30.0kN ■実務的なポイントのまとめ ●接合仕様は、 ・告示の表(標準仕様) ・N値計算(略算) ・許容応力度計算(本格計算) のいずれかで決める ●同じ柱の柱頭と柱脚は、必ず同じ仕様にそろえる ●告示表にない金物を使うときは、 金物の引張耐力 ≥ 必要耐力になっているか を必ず確認する ●耐力壁として使う柱は、最低でも(ろ)以上の接合仕様にしておくのが望ましい どのレベルの引抜力に耐える接合が必要かをNの値と必要耐力を手がかりに選んでいくのが、告示1460号の基本的な考え方です。
次回は、アンカーボルトについて、お話します。
▲このページのTOPへ