NSJ住宅性能研究所

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構造壁シリーズ13

柱の引抜きと接合方法

■なぜ「柱の引抜き」を気にするのか

耐力壁に地震や風などの水平力がかかると、壁の端部にある柱には、上向きに柱を引き抜こうとする力(引抜力)が生じます。

木造は鉄筋コンクリートに比べて軽く・柔らかいので、

・柱が土台や梁からスポッと抜けないように
・接合部でしっかり力を伝えられるように

柱と土台・梁の接合方法がとても重要になります。

接合方法は大きく分けて次の3タイプです。

①接合金物を使う方法
②ボルトを使う方法
③木材(ホゾ・貫など)を使う方法

共通のポイントは、

柱の芯(軸)に近い位置で引き寄せるほど、効率よく引抜力に抵抗できる

ということです。


① 接合金物を使用する方法

〇概要

柱と土台・梁の側面に、ホールダウン金物・VP金物・コーナー金物などを取り付ける方法です。

このときの主な頑張りどころは、

・釘やビスのせん断力(切ろうとする力に対する強さ)
・釘やビスの引抜耐力(抜こうとする力に対する強さ)
・木材へのめり込みに対する耐力

などです。

柱が引き抜かれるとき、釘やビスが木材をむしり取るように壊れながら抵抗するイメージです。

〇代表的な金物

●ホールダウン金物

・柱と土台・基礎を、アンカーボルト+金物でガッチリ結ぶタイプ
・抵抗する要素:
◎アンカーボルトやラグスクリューの引張耐力
◎座金のめり込み耐力
◎柱や土台のせん断・めり込み など

●VP金物

・柱の側面から、土台や基礎に向けて釘やビスで固定するタイプ
・主役は、釘やビスのせん断力

●コーナー金物

・柱と土台のコーナー部分などで使うL字金物
・釘・ビスの引抜きとせん断の両方で引抜力に抵抗


② ボルトを使用する方法

〇概要

通しボルト・軸ボルト・ホゾパイプ・Dボルトなどの棒鋼(ボルト)で
柱と土台・梁を一体化させる方法です。

とくに、

柱の軸芯(断面の中心付近)を通るようにボルトを配置すると、応力の中心で引き寄せることができ、理論的にとても合理的

とされています。

●通しボルト

・基礎付近から、下の梁 → 柱 → 上の梁まで、一本のボルトを通すイメージ
・梁をボルトで押さえ込むことで、梁や柱が浮き上がるのを防ぐ

例:
基礎 → 土台 → 胴差し(中間の梁) → 上の梁 まで全ねじボルトを通し、座金とナットで締め付ける構成など

軸ボルト・ホゾパイプ・Dボルト、
これらは、いずれも柱の芯に近いところで柱と土台・梁を引き寄せるタイプです。

●軸ボルト

・柱の中に箱状の穴をあけてボルトを通す方法
・ただし、穴を少し大きめにあけるため、締めるまで「あそび(初期ガタ)」が出やすいのが弱点

●ホゾパイプ

・柱の中に金属パイプ(ホゾパイプ)を入れ、その中をボルトが通るタイプ
・パイプと柱の間に隙間が少ないので、ガタが少なく、引き寄せ効果が大きい

●Dボルト

・柱の中に専用金物をセットし、皿ボルトなどで土台・梁を柱側に引き寄せるタイプ
・座金のめり込みや、柱の圧縮・せん断などの組み合わせで引抜きに抵抗します。

これらのタイプは、端距離(ボルト穴の端から材端までの距離)を十分に確保して、木が割れないようにディテールを決めることが重要です。

③ 木材を使用する方法(ホゾ・貫など)

金物を使わず、木材同士の組み方だけで引抜きに抵抗する方法です。

代表的なものは、

●長ホゾ差し込栓打ち
●雇いホゾ差し込栓打ち
●竪貫(たてぬき)
●地獄ホゾ

などです。

●長ホゾ差し込栓打ち

・柱に深いホゾ(長ホゾ)を設け、土台や梁に差し込んだうえで込み栓(木製のクサビ状ピン)を打ち込んで抜けないようにする方法
・耐力に効いてくる要素:
◎柱やホゾ、込み栓の樹種(強度)
◎ホゾの厚さ・出っ張り長さ
◎込み栓の位置や径

ホゾがせん断されたり、込み栓がせん断されたりしながら引抜力に抵抗します。

●雇いホゾ差し込栓打ち

・土台や梁とは別に、「雇いホゾ」という部材をかませて接合する方法
・単純な引張だけなら、長ホゾと似た破壊性状(ホゾ抜け・ホゾや込み栓のせん断など)ですが、
・実際には、耐力壁が菱形に変形すると水平力+引張力が同時にかかり、
◎ホゾや柱の割裂き(割れ)が起こる
◎込み栓のせん断破壊
◎ホゾ抜け

などの破壊が組み合わさって起こりやすくなります。

そのため、割裂を起こさないようなディテール・寸法計画が重要です。

●竪貫(たてぬき)

・隅柱などで込み栓を打ちにくい場合、
柱のすぐ脇に縦方向の貫材を立て、そこに込み栓を打つ方法です
・これにより、柱と土台・梁を木材+込み栓で締め付けて、引抜力に抵抗します

●地獄ホゾ

・ホゾの先端に楔を打ち込んで扇形に開かせることで、土台との摩擦力とめり込みで抜けにくくする方法です。
・ただし、
◎木材の乾燥収縮
◎施工精度のバラツキ
が大きく影響し、耐力を安定して評価しにくいという問題があります。


<まとめ>

●木造の柱は、耐力壁に水平力がかかると引き抜かれようとする力を受ける
●そのため、
・接合金物
・ボルト
・木組み(ホゾ・貫・込み栓など)
をうまく組み合わせて、柱が抜けないように接合部を設計することが重要
●特に、柱の芯に近い位置で引き寄せる接合ほど、効率よく引抜力に抵抗できる

こんな観点で読むと、どの接合ディテールが、どんな力でどのように耐えているか、がイメージしやすくなります。



次回は、柱頭柱脚について、お話します。

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