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四分割法は、 耐力壁(地震や風に耐える壁)が、建物の平面内でバランスよく配置されているか を簡単にチェックするための方法です。 木造住宅は、鉄筋コンクリート造などに比べて床や架構が柔らかくねじれやすいため、 壁量(どれだけ耐力壁があるか) だけでなく、 どこに壁があるか(配置バランス) も確認する必要があります。 ■ねじれが問題になるケース 建物全体の壁量は足りていても、耐力壁が一部に偏っていると、地震力が加わったときに建物がぐるっと回るようにねじれて、倒壊の危険が高まります。 例: 片側だけ道路に面した狭小住宅 → 道路側は開口が大きく壁が少ない/反対側は壁だらけ 角地の住宅 → 道路側2面はほぼ開口、残り2面は壁が集中 阪神・淡路大震災では、こうした壁配置の偏りによるねじれ倒壊が多くみられました。 この反省から、2000年の建築基準法改正で、従来の「壁量計算」に加えて、耐力壁をバランスよく配置するための規定(旧:平成12年建設省告示第1352号)が導入されました。 ※現在は、2024年の告示改正により、四分割法を定めていた旧・告示第1352号は廃止され、内容は国交省告示第1100号「木造の建築物の軸組の構造方法及び設置の基準を定める件」に統合されています。 ただし、四分割法の考え方・計算手順そのものは、基本的に従来と同じです(2025年11月時点)
■ねじれと重心・剛心 建物がねじれるかどうかは、本来は「偏心率」という指標でチェックします。 ・重心:建物の重さの中心 ・剛心:建物の水平剛性の中心(=耐力壁などの固さの中心) 地震力が作用したとき、重心と剛心が離れている(偏心している)と、 建物は単純に横に揺れるだけでなく、回転を伴うねじれ振動を起こします。 偏心率計算は本格的な構造設計の知識が必要なので、木造住宅向けには、もっと簡単にねじれの危険度を判定できる方法として四分割法が用意されています。 この方法で条件を満たせば、偏心率の基準も概ねクリアしていると考えてよい、という位置づけです。 ■四分割法の基本的な考え方 四分割法では、各階・各方向(X方向とY方向)ごとに、建物平面を次のように切り分けます。 ・X方向(長手方向など) 平面を上側(上半分)と下側(下半分)に分ける ・Y方向(短手方向など) 平面を左側(左半分)と右側(右半分)に分ける このとき、それぞれの方向について、両端1/4の範囲(側端部分)の耐力壁の量とバランスをチェックします。 ポイントは次の2つです。 ・X方向の検討 → X方向に長さを持つ耐力壁だけを数える ・Y方向の検討 → Y方向に長さを持つ耐力壁だけを数える つまり、その方向の水平力に抵抗する壁だけを対象にします。 ■四分割法の具体的な手順 ① 側端部分の存在壁量と必要壁量を求める 各階・各方向について、建物の長さを4等分し、両端の1/4部分を側端部分と呼びます。 ・存在壁量 側端部分に存在する耐力壁の、長さ × 壁倍率の合計 ・必要壁量 側端部分の床面積 × 地震力に対する必要壁量(cm/m²) 必要壁量の係数は、一般の壁量計算と同じ考え方です(地震力に比例) ② 壁量充足率を計算する それぞれの側端部分ごとに、次の式で壁量充足率を求めます。 壁量充足率 = 存在壁量 ÷ 必要壁量 上側と下側(または左側と右側)の両方とも 1.0以上 → その方向についてはOK(ねじれの危険は小さい) → この場合、次の「壁率比」のチェックは不要です ③ 両端のバランス(壁率比)をチェックする もし、どちらか一方でも壁量充足率が1.0を下回る場合は、 多い側と少ない側のバランスを確認します。 壁率比 = 壁量充足率(小さい方) ÷ 壁量充足率(大きい方) この値が、 壁率比 ≧ 0.5 を満たしていれば、壁の偏りが大きすぎないと判断してOKになります。 逆に、0.5未満なら、片側に壁が偏りすぎていて、ねじれの危険が高いと判断されます。 ■よくある壁配置の危険パターン ① 開口が片側に集中しているケース ・道路側のファサードを大きく開け、玄関や大きな窓を集中 ・それ以外の3面が壁だらけ このようなコの字状の壁配置では、地震力が加わったときに、開口側が大きく振られやすく、ねじれ変形が起きやすいです。 ② L字型に壁が偏っているケース ・角地の建物で、道路側2面はほぼ開放 ・反対側2面にL字状に壁が集中 この場合も、耐力壁の中心が片側に寄るため、建物がL字の角を軸にして回転するようにねじれやすい配置になります。 四分割法は、こうした偏った配置を数字で客観的に判断するための道具といえます。 ■セットバックしている場合の扱い(平屋部分など) 建物の一部がセットバックしている場合(たとえば2階建ての一部が平屋になっているなど)には、側端部分の範囲ごとに、「平屋として扱うか」、「2階建ての1階として扱うか」、を整理して考えます。 代表的な考え方の例: 1AU(上側の平屋部分) → その部分だけを「平屋」として必要壁量・存在壁量を計算 1AD(2階建て部分の1階側) → 「2階建て部分の1階」として必要壁量を計算 側端部分が全部平屋であるなら、その範囲の必要壁量は平屋として求めてよいという扱いになります。 ■最近の法改正との関係 2000年の法改正で、 壁量計算+四分割法(旧・告示1352号)が、一般的な木造住宅の仕様規定として整備されました。 2024年の告示改正で、 告示1351号・1352号は告示1100号に統合・整理されました(名称も変更) 2025年4月からは、いわゆる「4号特例」の廃止・縮小により、2階建て木造住宅(新2号建築物)でも構造審査・構造図書の提出が前提となる方向に変わっていますが、四分割法自体は、仕様規定の一つとして引き続き重要な位置づけです。 <まとめ> ・壁量計算:建物全体として、耐力壁の量が足りているかを見る ・四分割法:耐力壁が、平面内でバランスよく配置されているかを 簡単な計算でチェックする方法 と覚えておくと、木造住宅の耐震設計を勉強するうえで、かなり整理しやすくなると思います。
次回は、柱の引抜きと接合方法について、お話します。
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