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■風圧力に対する必要壁量とは? 木造住宅は、地震だけでなく台風などの強い風からも建物を守る必要があります。 そのために、 どの階・どの方向に、どれだけの長さの耐力壁が必要か、 を決める指標が 風圧力に対する必要壁量 です。 ・地震:建物の重さに比例して水平力が大きくなる ・風 :建物が風を受ける面積(=受風面積)に比例して水平力が大きくなる 風を受ける面積を整理したものが、見付け面積 です。
■見付け面積とは? 見付け面積 は、その階が風を受ける、立面の投影面積(鉛直投影面積)」のうち、各階の床(FL)から 1.35mより上 の部分の面積のことです。 ・3階:3FLから1.35m上の高さで切った、そこから上の面積 → S3 ・2階:2FLから1.35m上までの分+その上の3階部分 → S2+S3 ・1階:1FLから1.35m上までの分+その上の2・3階部分 → S1+S2+S3 という考え方になります。 各階の中間高さから上が、その階の耐力壁が受け持つ部分、 というイメージで、これを簡便に扱うために FL+1.35m で区切るルールになっています。 一般的な住宅の階高を 約2.7m とみなして、その階の上半分を担当範囲にしているわけです。 この見付け面積は、 ・X方向(※桁行方向とする) ・Y方向(※梁間/妻側方向とする) それぞれ別々に求めます。 ■必要壁量の基本式と係数(50cm/㎡など) 風圧力に対する各階・各方向の必要壁量は、次の式で計算します。 風圧力に対する必要壁量(cm) = 見付け面積(㎡) × 見付け面積に乗ずる値(cm/㎡) この、見付け面積に乗ずる値は、建築基準法施行令46条の表に定められていて、内容は概ね次のとおりです。 区域|見付け面積に乗ずる値(cm/㎡)(表) 一般の地域|50 特定行政庁が指定する強風地域|50を超え75以下の範囲で、特定行政庁が定める値 <ポイント> 見付け面積に乗ずる値は、階数に関わらず同じ値 を使う(1階も2階も「50cm/㎡」などで共通) ただし、見付け面積そのものは下の階ほど大きくなる ので、結果として、 1階の必要壁量 > 2階の必要壁量 となるのが普通です。 なお、2025年4月施行の壁量等の基準見直しでは、主に地震力側(床面積×係数)の考え方が詳細化されており、風圧力に対する見付け面積あたりの係数(50cm/㎡など)は基本的に従来の整理がそのまま使われています。 ■X方向・Y方向ごとに計算する理由 建物の外観は、長手方向と短手方向で大きさが違うことが多く、その結果、風を受ける面積も方向によって違い ます。 そのため、風圧力の検討では必ず、 ・X方向に吹く風に対する必要壁量(X方向見付け面積) ・Y方向に吹く風に対する必要壁量(Y方向見付け面積) を 別々に 計算します。 ここで押さえておきたいイメージは次の通りです。 たとえば、X方向に吹く風 は、妻側立面に当たります(妻面の見付け面積が効く) →このとき、その水平力を主に負担するのは、風の向きと平行する方向に連続している耐力壁(桁行方向の壁列) です。 建物が細長い長方形の場合、 →長手方向は見付け面積が大きく、 →その面に直交する短手方向の耐力壁をたくさん確保しないと、風に弱くなりがち という特徴があります。 そのため、平面が細長い建物では、短手方向(平面の短い方向)の耐力壁を多めに確保する必要がある という結論になります。 ■地震力との違い 同じ水平力に対する必要壁量でも、地震と風では考え方が少し違います。 ●地震力に対する必要壁量 ・建物重量に比例 ・各階ごとに、床面積×係数で計算 ・X方向・Y方向で基本的に同じ係数(建物重量は方向で変わらない想定) ●風圧力に対する必要壁量 ・受風面積(見付け面積)に比例 ・各階ごとに、見付け面積×係数で計算 ・X方向とY方向で見付け面積が違うため、必要壁量も方向ごとに異なる 最終的に設計では、 地震力に対する必要壁量 と 風圧力に対する必要壁量 の大きい方をその方向の必要壁量として採用 それを上回るように耐力壁(存在壁量)を配置する、というルールになっています。
■想定している暴風のレベル(伊勢湾台風との関係) 建築基準法の風圧力の考え方は、 「稀に発生する暴風」に対して、建物が損傷しない程度 を目標としています。 ここでいう「稀に発生する暴風」とは、1959年の 伊勢湾台風 のとき、名古屋地方気象台で観測された、 10分間平均風速 約37m/s クラス、 の暴風を一つの目安としています。 つまり、 伊勢湾台風級の台風が来ても、構造的に大きく壊れないようにする、 というレベル感で風圧力に対する必要壁量が設定されている、という理解で差し支えありません。 <まとめ> ●風圧力は 建物が風を受ける面積(見付け面積)に比例 する ●見付け面積は、各階のFL+1.35mより上側の外壁等の投影面積で、X方向・Y方向別に求める ●必要壁量は、 ・見付け面積(㎡)× 係数(一般地域で50cm/㎡など) で計算し、下階ほど見付け面積が大きくなるので必要壁量も増える ・風は方向によって受ける面積が違うため、X方向・Y方向それぞれで必要壁量を計算し、特に細長い平面の建物では短手方向の耐力壁を多めに確保することが重要 ●想定している暴風は、伊勢湾台風(名古屋で風速約37m/s)級の強風であり、そのレベルでも損傷しないことを目標にしている このあたりを押さえておくと、風圧力に対する必要壁量の条文や計算式を見たときに、何を守るための、どういう安全余裕なのか がイメージしやすくなると思います。 次回は、四分割法とねじれについて、お話します。
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