NSJ住宅性能研究所

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構造壁シリーズ9

壁量計算

■そもそも、なぜ「壁量計算」が必要?

建物は、地震や風などの横向きの力(水平力)を受けます。
そのときに、

「外からかかる力」 < 「建物のもつ抵抗力」

になっていることを、設計段階で確認する必要があります。

木造住宅のような小規模建物では、この確認をする代表的な方法が 「壁量計算」 です。

やることはシンプルで、

・計算で、必要壁量(どれだけ壁が必要か)を求める
・設計した建物の、存在壁量(実際にある耐力壁の量)を計算する
・存在壁量 > 必要壁量 になっているかチェックする

という流れです。


■必要壁量とは?(どれだけ壁が必要か)

必要壁量とは、建物にかかる横向きの力に見合うだけの壁の量のことです。

設計で考える主な水平力は、

・地震力
・風圧力

の2つです。それぞれについて「必要壁量」が決められています。

●地震力に対する必要壁量

地震力は、基本的に、

建物の重さ × ある係数

で求めます。

建物の重さはだいたい床面積に比例します。

そのため、床面積あたりに必要な壁の量、という形で地震に対する必要壁量が決められています。

さらに、軟弱地盤では地震の揺れが大きくなりやすいため、

特定行政庁が「特に軟弱」と指定した地域では地震に対する必要壁量を 1.5倍 に増やす

というルールがあります(建築基準法施行令46条4項)

●風圧力に対する必要壁量

風による力(風圧力)は、

受風面積(外壁の見付け面積) × 係数

で求めます。

風圧力を、今度は見付け面積あたりの値に直したものが、風圧力に対する必要壁量になります。


■存在壁量とは?(建物が実際にもっている力)

存在壁量とは、

建物が実際に持っている水平抵抗力の合計のことです。

もっとかんたんに言うと、

建物の中にどれだけ耐力壁が入っていて、それらが合計でどのくらいの力に耐えられるか

を数値化したものです。

耐力壁1枚あたりの水平抵抗力は、

壁倍率 × 壁の長さ(柱芯間距離)

で求めます。

それらを全部足し合わせたものが存在壁量です。


■耐力壁としてカウントできる「最低の長さ」

どんな短い壁でも、何でも耐力壁として数えてよいわけではありません。

●筋かいの場合

筋かい壁を耐力壁として扱うには、

壁の長さ ÷ 壁の高さ ≥ 1/3(目安)

が必要とされています。

たとえば、階高を 2,700mm とすると、有効な壁の長さは 900mm以上 が目安となります。

●面材(構造用合板など)の場合

構造用合板などの面材壁では、

壁の長さ 600mm以上 を耐力壁として扱う

という基準があります

(「枠組壁工法建築物構造計算指針」((社)日本ツーバイフォー建築協会))


■耐力壁はどうやって水平力に抵抗する?

イメージとしては、

地震や台風で横向きの力(水平力)が建物にかかる
→その方向に対して、長い耐力壁が多いほど、よく踏ん張ってくれる

というイメージです。

力のかかる方向に対し、その向きの耐力壁の合計長さが長いほど、抵抗力が大きい

と覚えておくと分かりやすいです。


■軟弱地盤では壁量を増やす理由

地盤が軟らかいと、地震のときの揺れが増幅されやすくなります。
そのため、

特に軟弱と指定された地域に木造建物を建てる場合、地震に対する必要壁量を1.5倍に増やす

というルールになっています。

これは、建物をよりかたく(変形しにくく)することで、揺れの増幅による被害を減らすことが目的です。


■壁量の考え方(計算イメージ)

例として、次のようなイメージを考えます。

・2階にかかる水平力:10kN
・1階にかかる水平力:20kN(合計30kN)

耐力壁の耐えられる力の合計がどうかを見ます。

●2階の例

・2階の耐力壁A:5kNまで耐えられる
・2階の耐力壁B:10kNまで耐えられる
→ 合計:5 + 10 = 15kN

2階の水平力は10kNなので、

15kN(耐力壁) > 10kN(水平力) → OK

となります。

●1階の例

・1階の耐力壁C:15kNまで耐えられる
・1階の耐力壁D:20kNまで耐えられる
→ 合計:15 + 20 = 35kN

1階が負担する水平力は、1階自身の20kN+2階から伝わる10kN=30kN

なので、

35kN(耐力壁) > 30kN(水平力) → OK

となります。


<まとめ>

壁量計算で確認したいポイントは、ただひとつです。

水平力に対して、耐力壁の合計の耐力(存在壁量)が勝っているか?

つまり、

壁の耐力の合計 > 建物にかかる水平力

となるように、壁の、量と配置、を確保することが、木造住宅設計の基本になります。



次回は、必要壁量について、お話します。

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