NSJ住宅性能研究所

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構造壁シリーズ7

ラーメン架構

■ラーメン架構とは?

柱と梁だけで水平力に耐えるラーメン架構の強さは、柱の太さと接合部(仕口)のつくり方でほぼ決まります。

●木造でいう「ラーメン架構」

柱と梁のつながり方(接合部)がピン接合だと、地震や風などの水平力がかかったとき、柱と梁はクニャッと倒れてしまい、ほとんど抵抗できません。

一方、

柱と梁を剛接合(がっちり固定)にすると、同じ水平力がかかっても、接合部が直角(90°)を保とうとするので、変形が小さくなります。

このように、

柱と梁の骨組み(軸組)だけで、水平力に抵抗できる構造
をラーメン架構(ラーメンフレーム)と呼びます。


■ラーメンフレームとピンフレームの違い

●ピンフレーム

・柱と梁の接合部:ピン接合
・水平力がかかると、骨組み全体が平行四辺形のように変形する
・ 変形は大きい(グニャッと曲がるイメージ)

■ラーメンフレーム

・柱と梁の接合部:剛接合
・水平力がかかると柱・梁はS字状に少ししなりながらも接合部の角度はほぼ90°を維持
・変形は小さい(粘り強く踏ん張る)


■木造住宅とラーメン架構

一般的な木造住宅では、

・柱・梁の断面が小さい
・接合部も、どうしてもピン接合に近い性状になる

そのため、

柱と梁の骨組みだけでは、水平力に十分抵抗できないので、耐力壁(筋かい・面材壁など)を別に設けて地震や風に抵抗させるのが普通です。

一方で、

体育館や集会室などの大規模な木造建築では、柱や梁の断面を大きくして、接合部を工夫し、ラーメン架構として設計することがあります。


■木造ラーメン架構で使われる接合部の種類

木造ラーメンでよく使われるモーメント抵抗型の接合部には、例えば次のようなものがあります。

①合わせ梁型モーメント接合
②鋼板挿入ドリフトピン接合・鋼板添え板ボルト型モーメント接合
③引きボルト型モーメント接合
④引きボルト型モーメント接合(梁通しタイプ)

これらは共通して、

接合部にかかる曲げモーメント(M)に抵抗するように設計されています。

ただし、

接合部は、梁にかかる鉛直荷重も支える必要があるため、大入れをしたり、ホゾやダボ(シアコネクタ)を設けたりして、せん断方向の力も受けられるようにすることが大切です。

梁が柱より勝つ形(梁勝ち)の場合でも、考え方は同じです。


■半剛接合のイメージ

ここでは、数式は、雰囲気だけ押さえればOKです。

① 合わせ梁型モーメント接合

サンドイッチした木材などで複数の部材が協力してモーメントを負担します。

イメージとしては、

各接合位置に働く力の大きさや距離を考え、それらの組み合わせで全体のモーメントMを決めるイメージです。

(式:M = fi(Σ ri² / rm)n
などと表されるが、ここでは、接合部の数や力の分布によってモーメント耐力が決まるくらいで理解しておけば十分です)

② 鋼板挿入ドリフトピン/鋼板添え板ボルト型

柱と梁の間に鋼板(ガセットプレート)を挟み、ドリフトピンやボルトで留める方式

鋼板と木材が一体となり、柱梁接合部として大きな曲げモーメントに抵抗できます。

③ 引きボルト型モーメント接合

柱と梁を、引きボルトで締め付けて一体化させるタイプ

シアコネクタとして、ホゾやダボなどを併用します。

モーメントは、おおざっぱに、

M = F × g

F:ボルトに働く引張力
g:力の作用点と回転中心との距離(レバーアーム)

という形で考えられます。

④ 引きボルト型モーメント接合(梁通しタイプ)

梁が柱を貫通するように通っているタイプ

梁通し部にシアコネクタ+引きボルトを設け、
柱と梁を一体化することでモーメントに抵抗します。

ここでも基本的な考え方は
「引きボルトの力 × 距離 でモーメントに抵抗」です。


■方杖(ほうづえ)の役割

●接合部を固めるための部材

方杖とは、柱と梁の間に入る斜め材のことです。

柱と梁の接合部の回転を押さえることで、接合部の角度(ほぼ90°)を保ちやすくします。

その結果、

方杖を入れると、ピン接合に近い接合でも、ラーメン架構に近い働きをさせることができる

というイメージになります。

●鉛直荷重に対しても有効

方杖は鉛直荷重(自重・積載荷重など)に対しても役に立ちます。

梁側から見ると、
→ 方杖が入ることで有効スパンが短くなる
→ 梁のたわみを減らすことができる


■方杖を入れるときの注意点

ただし、良いことばかりではありません。
方杖が取り付く柱の部分には、大きな曲げ応力が集中します。

・水平力がかかると(水平力が建物に作用すると)、方杖を介して、柱の中間を押す力が働きます。

その結果、

柱が細いと、その部分で折れてしまう危険があります。

・鉛直荷重がかかると(常時荷重(自重など)が梁にかかると)、方杖は梁を下から突き上げるように支える

その反力として、方杖は柱を横から押す力を与えます。

ここでも、やはり柱の途中に大きな力が集中します。


■方杖を使うときの設計上のポイント

方杖が取り付く柱は断面を大きくする必要があります。

特に、

方杖に押される方向のせい(断面高さ)を大きくすると、曲げに対して有利になります。

昔の木材が不足していた時代の木造校舎などでは、方杖の力に耐えるために、柱を2~3本並べて束ねるようにして補強している例もあります。


<まとめ>

●ラーメン架構は柱と梁の骨組みだけで水平力に抵抗できる構造
●木造住宅は接合部がピンに近く、普通は耐力壁に頼るが、大規模木造ではラーメン架構を採用することもある
●ラーメン架構の性能は、
・柱の太さ
・接合部(モーメント抵抗接合)の設計
に大きく左右される
●方杖は、
・柱梁接合を固めてラーメン的な働きをさせる
・梁のたわみを減らす

一方で、

柱の途中に大きな曲げ・押しの力が集中するため、柱断面の設計に要注意

こんなイメージで押さえておくと、木造ラーメン架構と方杖の役割の全体像がつかみやすくなると思います。



次回は、壁倍率について、お話します。

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