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■ラーメン架構とは? 柱と梁だけで水平力に耐えるラーメン架構の強さは、柱の太さと接合部(仕口)のつくり方でほぼ決まります。 ●木造でいう「ラーメン架構」 柱と梁のつながり方(接合部)がピン接合だと、地震や風などの水平力がかかったとき、柱と梁はクニャッと倒れてしまい、ほとんど抵抗できません。 一方、 柱と梁を剛接合(がっちり固定)にすると、同じ水平力がかかっても、接合部が直角(90°)を保とうとするので、変形が小さくなります。 このように、 柱と梁の骨組み(軸組)だけで、水平力に抵抗できる構造 をラーメン架構(ラーメンフレーム)と呼びます。
■ラーメンフレームとピンフレームの違い ●ピンフレーム ・柱と梁の接合部:ピン接合 ・水平力がかかると、骨組み全体が平行四辺形のように変形する ・ 変形は大きい(グニャッと曲がるイメージ) ■ラーメンフレーム ・柱と梁の接合部:剛接合 ・水平力がかかると柱・梁はS字状に少ししなりながらも接合部の角度はほぼ90°を維持 ・変形は小さい(粘り強く踏ん張る) ■木造住宅とラーメン架構 一般的な木造住宅では、 ・柱・梁の断面が小さい ・接合部も、どうしてもピン接合に近い性状になる そのため、 柱と梁の骨組みだけでは、水平力に十分抵抗できないので、耐力壁(筋かい・面材壁など)を別に設けて地震や風に抵抗させるのが普通です。 一方で、 体育館や集会室などの大規模な木造建築では、柱や梁の断面を大きくして、接合部を工夫し、ラーメン架構として設計することがあります。 ■木造ラーメン架構で使われる接合部の種類 木造ラーメンでよく使われるモーメント抵抗型の接合部には、例えば次のようなものがあります。 ①合わせ梁型モーメント接合 ②鋼板挿入ドリフトピン接合・鋼板添え板ボルト型モーメント接合 ③引きボルト型モーメント接合 ④引きボルト型モーメント接合(梁通しタイプ) これらは共通して、 接合部にかかる曲げモーメント(M)に抵抗するように設計されています。 ただし、 接合部は、梁にかかる鉛直荷重も支える必要があるため、大入れをしたり、ホゾやダボ(シアコネクタ)を設けたりして、せん断方向の力も受けられるようにすることが大切です。 梁が柱より勝つ形(梁勝ち)の場合でも、考え方は同じです。 ■半剛接合のイメージ ここでは、数式は、雰囲気だけ押さえればOKです。 ① 合わせ梁型モーメント接合 サンドイッチした木材などで複数の部材が協力してモーメントを負担します。 イメージとしては、 各接合位置に働く力の大きさや距離を考え、それらの組み合わせで全体のモーメントMを決めるイメージです。 (式:M = fi(Σ ri² / rm)n などと表されるが、ここでは、接合部の数や力の分布によってモーメント耐力が決まるくらいで理解しておけば十分です) ② 鋼板挿入ドリフトピン/鋼板添え板ボルト型 柱と梁の間に鋼板(ガセットプレート)を挟み、ドリフトピンやボルトで留める方式 鋼板と木材が一体となり、柱梁接合部として大きな曲げモーメントに抵抗できます。 ③ 引きボルト型モーメント接合 柱と梁を、引きボルトで締め付けて一体化させるタイプ シアコネクタとして、ホゾやダボなどを併用します。 モーメントは、おおざっぱに、 M = F × g F:ボルトに働く引張力 g:力の作用点と回転中心との距離(レバーアーム) という形で考えられます。 ④ 引きボルト型モーメント接合(梁通しタイプ) 梁が柱を貫通するように通っているタイプ 梁通し部にシアコネクタ+引きボルトを設け、 柱と梁を一体化することでモーメントに抵抗します。 ここでも基本的な考え方は 「引きボルトの力 × 距離 でモーメントに抵抗」です。 ■方杖(ほうづえ)の役割 ●接合部を固めるための部材 方杖とは、柱と梁の間に入る斜め材のことです。 柱と梁の接合部の回転を押さえることで、接合部の角度(ほぼ90°)を保ちやすくします。 その結果、 方杖を入れると、ピン接合に近い接合でも、ラーメン架構に近い働きをさせることができる というイメージになります。 ●鉛直荷重に対しても有効 方杖は鉛直荷重(自重・積載荷重など)に対しても役に立ちます。 梁側から見ると、 → 方杖が入ることで有効スパンが短くなる → 梁のたわみを減らすことができる ■方杖を入れるときの注意点 ただし、良いことばかりではありません。 方杖が取り付く柱の部分には、大きな曲げ応力が集中します。 ・水平力がかかると(水平力が建物に作用すると)、方杖を介して、柱の中間を押す力が働きます。 その結果、 柱が細いと、その部分で折れてしまう危険があります。 ・鉛直荷重がかかると(常時荷重(自重など)が梁にかかると)、方杖は梁を下から突き上げるように支える その反力として、方杖は柱を横から押す力を与えます。 ここでも、やはり柱の途中に大きな力が集中します。 ■方杖を使うときの設計上のポイント 方杖が取り付く柱は断面を大きくする必要があります。 特に、 方杖に押される方向のせい(断面高さ)を大きくすると、曲げに対して有利になります。 昔の木材が不足していた時代の木造校舎などでは、方杖の力に耐えるために、柱を2~3本並べて束ねるようにして補強している例もあります。 <まとめ> ●ラーメン架構は柱と梁の骨組みだけで水平力に抵抗できる構造 ●木造住宅は接合部がピンに近く、普通は耐力壁に頼るが、大規模木造ではラーメン架構を採用することもある ●ラーメン架構の性能は、 ・柱の太さ ・接合部(モーメント抵抗接合)の設計 に大きく左右される ●方杖は、 ・柱梁接合を固めてラーメン的な働きをさせる ・梁のたわみを減らす 一方で、 柱の途中に大きな曲げ・押しの力が集中するため、柱断面の設計に要注意 こんなイメージで押さえておくと、木造ラーメン架構と方杖の役割の全体像がつかみやすくなると思います。
次回は、壁倍率について、お話します。
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