NSJ住宅性能研究所

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構造壁シリーズ6

土壁等

■土壁・落とし込み板壁

土壁:
下地(竹や木)と土がしっかり密着していること+中塗りのかたさが大事

落とし込み板壁:
板がよく乾燥していること+板どうしがずれない工夫が大事


■土壁とは?

土壁は、貫(ぬき)を3〜4本入れた柱・梁の骨組みに、その上から、

・竹や木の小舞(こまい)(=下地になる格子状の部材)を組み
・小舞の上に土を塗りつけてつくる壁

のことです。

昔から使われてきた湿式の壁で、つくり方によって強さがかなり変わるのが特徴です。

昔は耐力を数値で評価しにくかったのですが、最近では試験データが増え、耐力壁としても認められるようになってきました。


■土壁に使う土と塗り方の段階

土壁に使う材料は、

・粘土
・ワラすさ
・水

などを混ぜたものです。

塗るときは、一般的に3段階に分けます。

・荒壁(あらかべ):一番最初の土
・中塗り:ひび割れを埋め、かたさを出す層
・上塗り:仕上げの層(見た目を整える)


■土壁の構造的なキーポイント(3つ)

土壁が構造的にちゃんと効く壁になるためには、次の3つが重要です。

①小舞と骨組み(柱・梁・貫)が一体になっていること

・木小舞の場合:釘でしっかり固定する
・竹小舞の場合:柱や横架材に差し込んだり、貫に釘打ちして、小舞が骨組みからずれないようにする

②土が小舞にしっかり付着していること

荒壁を塗るときに、「小舞にまとわりつく」イメージで、きちんと食いつくように塗るのが大事

③中塗りが、ひび割れなどのスキマをしっかり埋めていること

・荒壁に十分ひび割れを起こさせてから、そのスキマを埋めるように中塗りをする
・中塗りは「壁のかたさ」をつくる重要な層で、構造的にとても大切

地震などで被害を受けたとき、中塗りの部分が剥がれ落ちることがありますが、その部分がしっかり耐力を発揮した結果ともいえます。


■土壁の仕様イメージ

細かい数値は専門家向けですが、イメージしやすいように整理すると、

●土の種類:
荒木田土、荒土、京土など「粘りのある砂質粘土」

●荒壁:
土100Lあたり、ワラすさ約0.4〜0.6kgを混ぜて、両面から塗る

●中塗り:
土100Lあたり、ワラすさ約0.4〜0.8kgを混ぜる

●間渡し竹:
柱や梁に端部を差し込み、貫に釘で固定

●小舞竹:
割竹(幅20mm以上)などを約45mmピッチ以下で並べ、シュロ縄などで間渡し竹にくくりつける

●貫:
・厚さ15mm以上、幅100mm以上
・間隔は910mm以下で、3本以上設ける

…といったルールで、「骨組み+竹+土」が一体となるように設計・施工します。


■落とし込み板壁とは?

落とし込み板壁は、柱と柱の間に厚い板を上から落とし込んで積み重ねていく壁です。

●柱間:
1,800〜2,300mm程度

●使用する板:

・厚さ:27mm以上
・幅:130mm以上
・含水率:15%以下(=よく乾燥させた板)

板と板の継ぎ目にはダボを入れます。

・ダボ:
木材(15mm角または直径15mm以上)または鋼材(直径9mm以上)

・本数:
3本以上

・間隔:
620mm以下

ダボは、地震時などに水平方向の力がかかったとき、板どうしがズレないようにするための重要な部材です。


■落とし込み板壁の注意点と性能

●板の乾燥が超重要

板の乾燥が不十分だと、工事後に板が縮んでしまい、

・柱や横架材との間にスキマができる
・壁としての一体性が弱くなる
・その結果、耐力が低下する

といった問題が起きます。

そのため、含水率15%以下のよく乾燥した板を使うことが前提になります。

●ダボによる「ずれ防止」

板の継ぎ目ごとにダボを入れておくことで、

・水平力を受けても、板どうしがずれにくくなる
・壁全体として「一体の板」のように働き、粘り強く耐力を発揮してくれる


<まとめ>

●土壁

・小舞と骨組みの一体化、土の付着、中塗りのかたさ
→ この3つが、構造性能を左右する重要ポイント
・正しく施工すれば、試験データに基づき、耐力壁として評価可能

●落とし込み板壁

・よく乾燥した厚板を、柱間に落とし込んで積み上げる壁
・ダボで板どうしのずれを防ぎ、水平力に対して粘り強く抵抗する
・施工ポイント(乾燥・ダボ配置など)を守れば、非常に頼れる耐力壁になる



次回は、ラーメン架構について、お話します。

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