NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

構造壁シリーズ5

貫壁

■貫壁ってどんな壁?

貫(ぬき)とは、厚さ15~30mmくらいの細長い板材を、柱の途中の位置に通して、楔(くさび)で固定した部材のことです。

住宅で使う場合、1つの軸組にだいたい4本前後の貫を入れることが多いです。

このようにしてできた貫壁は、地震や風などで水平方向の力を受けたとき、貫と柱の接合部がめり込む力(めり込み抵抗)によって変形に抵抗します。

そのため、次の3つの条件が貫壁の強さ(耐力)を左右します。

・貫の厚さ
・貫が柱に差し込まれている長さ
・貫の本数(=めり込み接合部の数)

同じような仕組みで抵抗するものに面格子壁があります。

これらは絶対的な強度は高くないけれど、粘り強さが大きいという特徴があります。


①貫の厚さについて

貫の厚さを決めるときは、次のバランスが重要です。

●薄すぎる場合

・めり込み面積が小さくなる → 抵抗力が小さくなる
・貫自体が外側に座屈しやすくなる

●厚すぎる場合

・柱に大きな欠き込みが必要になる → 柱の断面欠損が大きくなる
・柱の強度が落ちる

そのため、貫の厚さは、最大でも柱幅の半分以下を目安にするのが望ましいとされています。

②柱への差し込み長さ(通し貫が有利)

貫を柱にどれくらい差し込むかも、耐力に大きく影響します。

基本的な考え方は、

・貫を柱に貫通させる(通し貫)ほうが強い
・柱の片側の面までしか差し込まない場合や、柱の途中で貫を継いでいる場合は、めり込み抵抗に使える面積が、見かけほどは働かない

イメージとしては、同じ太さの貫でも、

a)通し貫:めり込みに使える距離(面積)が「大」
b)柱の面で継いだ貫:距離「中」
c)柱の中心で継いだ貫:距離「小」

となり、a > b > c の順で抵抗力が高いと考えられます。

そのため、

・貫はできるだけ柱を貫通させる
・柱から出ている部分(はね出し長さ)は、少なくとも貫のせい以上とる

こうした納まりにすると、めり込み抵抗を有効に引き出しやすくなります。

③貫の本数と間隔

貫の本数を増やすと、
接合部の数が増える → めり込み面積が増える → 耐力アップ
というプラスの効果があります。

ただし、本数を増やしすぎると、

・貫と貫の間隔が狭くなる
・柱の断面が細かく欠けてしまう
→ 柱が割れやすくなる

というデメリットが出てきます。

目安としては、

・貫どうしの間隔は、少なくとも貫せいの2倍以上あける
・全体としては、おおよそ 600mm 間隔で均等に配置する

といった考え方が推奨されます。


■貫壁と面格子壁のイメージ

●貫を入れた軸組

・柱と横架材の間に、厚さ15~30mmの貫を何本か入れて楔で固定
・1つの軸組に対して、3~5本程度が一般的

●面格子壁

・細い格子材を市松状に組んだ壁
・格子どうしの交点が、お互いにめり込みながら水平力に抵抗する形式

どちらも、めり込みを使って粘り強く変形に抵抗するという点で共通しています。


■楔(くさび)の形状と固定方法

貫を柱に固定する楔の形状や入れ方も、耐力に影響します。

●一般的な楔の問題点

・楔を柱の両側から1本ずつ打ち込み、真ん中で突き合わせるタイプの場合は、柱と楔の間に隙間ができやすい

・地震時のように何度も横揺れを受けると、片側の楔だけが緩んで遊びやすい(ガタが出る)

貫は、柱との間に隙間ができると、そもそも水平力に抵抗できなくなってしまいます。

そのため、楔の形状や入れ方も重要な設計要素になります。


●楔のバリエーション

代表的な楔の種類として、

・一般の楔(両側から打ち込むタイプ)
・扁平楔(薄くて幅の広い楔)
・一本楔(1本の楔が柱を貫通しているタイプ)

があります。

扁平楔や一本楔のように、

・楔を扁平にして面で押さえる
・1本の楔が柱を貫通していて、必ずどちらか一方を押さえつけている

といった形状にすることで、

・どちら側かが必ず押さえられている → 抜け出しにくい
・貫と楔の間に隙間ができにくい

というメリットが得られます。


■材料はよく乾燥したものを使う

最後にとても大切なポイントがひとつあります。

「柱・貫・楔には、十分に乾燥した材料を使うこと」

理由はシンプルで、

・乾燥が不十分な材は、後から大きく縮んで隙間があきやすい
・特に貫や楔の部分に隙間ができると、めり込み抵抗が働かなくなり、壁としての性能が大きく低下する

からです。

貫壁は、

・めり込み
・がっちりした固定

が命です。

そのため、

・貫の厚さ
・柱への差し込み長さ(できれば通し貫)
・本数と間隔のバランス
・楔の形状と打ち方
・すべての部材の乾燥状態

といった条件を総合的に考えながら設計・施工することが重要になります。



次回は、土壁等について、お話します。

▲このページのTOPへ