NSJ住宅性能研究所

構造壁シリーズ1

耐力壁の役割

耐力壁は、地震や風などの横からの力（水平力）に対抗するための、最重要パーツです。

ただ数を増やすだけでなく、建物がねじれないようにバランスよく配置することが大切です。


■なぜ耐力壁が必要？

木造では、柱と梁の接合部を完全にガッチリ固定（剛接合）するのが難しく、住宅は部材断面も小さめです。

そのため、柱・梁だけだと水平力で大きく傾き、最悪は倒壊するおそれがあります。

この弱点を補うのが、筋かい等でつくる耐力壁です。

建物の水平抵抗力は、各耐力壁がもつ抵抗力を合計したものになります。

■「壁量計算」で量をチェック

設計では、建物にかかる想定の水平力よりも、建物全体の水平抵抗力が大きくなるように耐力壁を確保します。

その確認方法の一つが壁量計算です。

各耐力壁の 水平抵抗力 = 壁倍率 × 壁長さ

水平抵抗力の総和が、建物条件から求める必要壁量（地震力・風圧力で決まる）を上回ればOKです。

※注意：壁量計算は「各耐力壁の性能が確保されている」、「力が各耐力壁に均等に流れる」という前提で成り立っています。実務ではこの前提を満たす納まり・仕様が重要です。


■配置の基本（ねじれを防ぐ）

耐力壁は、重心（建物重量の中心）と剛心（水平抵抗の中心）ができるだけ近いように、バランスよく配置します。

重心と剛心の距離を偏心距離といい、これが大きいとねじれが起きやすくなります。


■耐力壁の配置例

①中心に集中配置
偏心距離は小さくても、中心ばかりが固いと、地震時に外周の床が振られやすくなり、ねじれが生じやすい。

②四隅に配置
建物の端まで支えが届くので、ねじれにくい。

③外周に連続配置
ねじれにくい。同じ倍率・長さなら、出隅（角）でもそれ以外でも、ねじれ剛性は同等。


重要ポイント：①～③はいずれも「偏心距離ゼロ」を想定していますが、中心に集める配置（①）はねじれやすい。

また、四隅に必ず置く義務はなく、同じ有効長さを確保できればねじれ剛性は等しくなります。

実務では外周にバランスよく連ねる考え方が扱いやすく、床・壁の一体性も確保しやすいです。


＜まとめ＞

・量：壁倍率×長さの合計が必要壁量以上になるように確保
・質：前提どおりの性能確保（仕様・納まり・施工品質）が必須
・配置：重心と剛心を近づける／外周にバランスよく／中心集中は避ける
・ねじれ対策：偏心距離を小さく、かつ外周で支える意識を持つ

次回は、耐力壁の形式について、お話します。