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まずは結論から。 試験で求めた接合耐力は、次の2つのうち小さい方で決まります。 ・最大耐力Pmaxに安全率2/3を掛けた値 ・降伏耐力 Py(弾性から塑性へ移る境目の耐力) いずれかにばらつき係数(製品間の差を見込む係数)を掛けて短期許容耐力になります。 長期荷重に対する許容耐力(梁端の鉛直支持など)は、さらに1.1/2 を掛けます。
■何をどうやって試験するのか 接合金物(梁と柱をつなぐ金物、柱脚金物、継手金物など)の許容耐力は、規定の方法で実験して決める。 ※基準は「木造軸組工法住宅の許容応力度設計((財)日本住宅・木材技術センター)」 ① 梁端部の鉛直支持力(梁端金物) 狙い: 鉛直荷重に対して接合部がどれだけ耐えるか 方法: スパンを約910 mmの短スパンにして上から荷重をかけ、梁の下がり量δを測る 短スパンにする理由: 曲げがほぼ出ない条件にして、せん断(接合部の純粋なせん断)だけを見たいため 取り付け位置: 柱に付くタイプでも、梁同士でも、基本は同様 ② 耐力壁まわりの柱頭・柱脚(引抜き) 狙い: 地震や風で柱が引き抜かれる力にどれだけ耐えるか 方法: 土台を試験機に固定し、柱を鉛直上向きに引張って、柱と土台の離れδを測る 例: 柱芯から約400mm位置に荷重点を取るなど ③ 水平構面まわりの仕口・継手(外周引張) 狙い: 床や屋根の面が地震時に引っ張られるとき、外周の仕口・継手が耐える力 方法: ・梁どうしの仕口:①と同様に荷重をかけ、浮き上がり/離れδを測る ・通し柱の仕口・継手:2材を互いに引張し、離れδを測る 目安として荷重点を約150mm離して設定するケースがある。 ■グラフデータの読み方(荷重-変形曲線) 縦軸=荷重P、横軸=変形δとして、 ①は下がり量、②③は離れ量を変形として記録。 通常は破壊まで加力するが、δ=30mm を超えたら、30mmまでの曲線で評価を打ち切る(極端な大変形は設計に使わない考え方) ■耐力の決め方(式と意味) ・最大耐力に安全率を掛けた値2/3Pmax 実験のピーク値は「たまたま高い」ことがあるため、2/3で安全を見る。 ・降伏耐力Py 弾性域→塑性域に移る境の代表値。 実務では安全弾塑性モデルなどで、試験曲線と同面積の台形を当てはめ、その高さをPyとみなす(エネルギー等価のイメージ) → 接合耐力(短期)は小さい方×ばらつき係数 ・短期許容耐力 短期許容耐力=ばらつき係数×min(2/3PmaxまたはPy) (※2/3PmaxかPyのいずれか小さい値) → 長期荷重に使うときはさらに下げる(クリープ等を考慮) ・長期許容耐力 長期許容耐力=短期許容耐力×1.1/2 例:梁端部の鉛直支持力など、長くかかり続ける荷重に適用。 ■具体例(数値で感覚をつかむ) 試験結果: ・Pmax=12kN ・Py=7.5kN ・ばらつき係数 = 0.85 計算: ・2/3Pmax=8.0kN ・小さい方はmin(8.0,7.5)=7.5kN ・短期許容耐力=0.85×7.5=6.375kN ・長期許容耐力=6.375×1.1/2≈3.51kN ■用語解説 ●最大耐力Pmax :試験中に到達した最大の荷重 ●降伏耐力Py :弾性から塑性へ移る代表的な境界荷重。モデル化して求める ●ばらつき係数: 個体差・施工差など不確かさを見込んで低めに調整する係数 ●短期/長期: ・短期=地震・風など短時間の大きな荷重 ・長期=自重・積載など長くかかる荷重(クリープ影響あり) ■覚えておくと便利なポイント ・「2/3 × Pmax」と「Py」の競合: ピーク値の安全マージン vs. 変形挙動に基づく実質的な耐力。 小さい方を採用。 ・30 mm ルール: 過大変形は設計に使わない。 実用域で評価。 ・長期用の追加低減: 長期荷重はさらに厳しめに見積もる。
次回は、手刻みとプレカットについて、お話します。
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