NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ21

ボルト接合

ボルト接合を強く・粘り強くするためには、ボルトの端距離(木材の端からボルトまでの距離)をしっかり取ることが大切です。


■ボルト接合の2つのタイプ

木材をボルトでつなぐ方法には、次の2種類があります。

①接合形式A(2面せん断)
 3つの部材をボルトでまとめる方法。
 たとえば真ん中に木材(主材)があり、それを両側の板(側材)で挟むイメージです。

②接合形式B(1面せん断)
 2つの木材をボルトで直接つなぐ方法です。
 Aより構造的に少し弱く、よじれ(偏心)が起きやすい特徴があります。


■ボルトにかかる力と壊れ方

ボルト接合に引張力(引っ張る力)がかかると、ボルトと木材の間にせん断力(ずれようとする力)が働きます。

① 接合形式Aの場合

壊れ方は2種類あります。
・木材が割れる
・ボルトが折れる

木材が割れる壊れ方は脆くて避けたい。
 → そのために、木の端からボルトまでの距離(端距離)を十分に取ることが重要です。

② 接合形式Bの場合

こちらも「木材が割れる」か「ボルトが折れる」かのどちらか。

ただしAよりもボルトが支える面(せん断面)が少なく、荷重が偏ってねじれやすいため、Aよりも耐力(強さ)は低めになります。

この場合も端距離を確保することが重要です。


■鋼板を使うと強くなる理由

木材だけをボルトで接合すると、木のほうが柔らかいため、木のめり込みで強度が決まってしまいます。

しかし、片側を鋼板(鉄の板)に変えたり、木材の間に鋼板を挟むと、木の変形が減って耐力が高まります。


■ドリフトピン接合との違い

ドリフトピン(ナットで締めない打ち込みピン)でも、計算式はボルト接合と同じです。

初期状態ではぴったり打ち込まれていて剛性(硬さ)が高い。

しかし、大きく変形したり木材が乾燥して縮むと、ナットで締め直せるボルト接合のほうが粘り強くなります。


■ボルト配置の目安(表)

項目 | 条件(木目方向に力がかかる場合)
s(ボルトの並び間隔・繊維方向) | 7d以上
r(ボルトの並び間隔・繊維と直交方向) | 3d以上
e1(荷重負担側の距離)      | 7d以上
e1(荷重非負担側の距離)     | 4d以上
e2(ボルトと木材の端距離)    | 1.5d以上(l0/d>6のときは、かつr/2以上)

※ d:ボルトの直径、l₀:主材の厚さ


■壊れ方の代表例

①接合形式A(2面せん断)の場合

・側材の押し潰れ(支圧破壊)
・主材の押し潰れ
・ボルトの曲げ+側材の押し潰れ
・ボルトの曲げ破壊

②接合形式B(1面せん断)の場合

・側材の押し潰れ
・主材と側材の押し潰れ
・ボルトのせん断破壊+木材の押し潰れ
・ボルトのせん断破壊


<まとめ>

・ボルト接合の強さのカギは「端距離の確保」
・鋼板を使うと強度が上がる
・ドリフトピンは初期剛性が高いが、変形後の粘りはボルトが優れる
・「2面せん断(A)」は「1面せん断(B)」より強いが、どちらも正しい設計が必要



次回は、釘接合について、お話します。

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