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柱脚の「長ホゾ差し+込栓」接合に引張力がかかると、壊れ方は次の3種類のどれかになります。 ①ホゾが割れる ②込栓が折れる ③土台が割れる このうち、②込栓が壊れるタイプが最も粘り強く、修理もしやすいのがポイントです。 ■用語の整理 接合具: 部材をつなぐ小物(込栓・車知栓・ダボ・楔など)。 ここでは込栓が主役。 長ホゾ差し: 柱の先端(ホゾ)を土台に深く差し込み、 込栓で抜け止めする伝統的なやり方。 壊れ方は、木の樹種・寸法や、込栓の材質・径・位置などで変わります。
■3つの破壊形式と特徴 ① ホゾの破壊(せん断破壊) 現象: 込栓の下側でホゾが割れて、柱が抜け気味になる。 力学の要点: 引張に対して耐える力は、込栓より下に残るホゾ断面積にほぼ比例。 ⇒ 込栓を土台の上寄りに打つと、ホゾの下側が大きく残り、耐力アップ ⇒ ホゾ厚みを増やす(一般的には30mm、それ以上にすると有利) 挙動: 壊れ始めると耐力が急落しやすい(脆い) ② 込栓の破壊(曲げせん断破壊) 現象: ホゾと土台の境界あたりで込栓が折れ曲がる。 ホゾ・土台は大きく壊れない。 力学の要点: ホゾが強く、込栓が相対的に弱いと発生。 込栓は山形に曲がりながら折れるため、楔のように噛み続け、壊れた後も耐力低下が緩やか。 保全性: 柱や土台に比べて、込栓の交換だけで直せることが多く、工事が軽微。 形状の目安: 15mmまたは18mm径の正方形 or 円形が一般的。 断面積が同じなら耐力はほぼ同等(丸でも角でもOK) ③ 土台の破壊(割裂) 現象: 込栓位置を起点に、土台が繊維方向に裂ける。 要因: 込栓が太すぎる、または込栓位置が上に寄りすぎると起こりやすい。 挙動: 非常に脆い壊れ方で、修理は大掛かりになりがち。 ■どれが望ましい?(設計方針) ベストは②「込栓が壊れる」モードを支配的にすること。 ・壊れても耐力が急に落ちない(粘り強い) ・修理が容易(込栓交換で対応しやすい) そのために、ホゾや土台は十分強く、込栓は適切な材・径・位置にする。 避けたいのは③土台割裂(脆く、復旧コストが高い) ■目安となる力の考え方(抵抗面積) ※「抵抗面積」はどこがせん断に耐えているかを簡単に表す指標です ①ホゾのせん断破壊 抵抗面積: A=B′×L′×2面 B’:ホゾ幅 L′:込栓より下に残るホゾ長さ(余長) 設計のコツ: 込栓を上側に配置、ホゾ厚みを厚くしてAを大きく ②込栓の曲げせん断破壊 抵抗面積: A=込栓断面積×2面 設計のコツ: 込栓径・材質で微調整(強すぎると③へ、弱すぎると過度に壊れやすい) ③土台の割裂 抵抗面積: A=(B−B′)×D′ B:土台幅 B′:ホゾ幅 D′:ホゾ上端から込栓までの距離(上側カブリ) 設計のコツ: 込栓を上に寄せすぎない、径を太くしすぎない、土台の繊維方向割裂に注意 <実務でのチューニング指針> ・込栓位置:上すぎると③を誘発。適度に下げてバランスを取る ・込栓径:15~18mmが一般的。太すぎはNG(③のリスク増) ・ホゾ厚:30mmが一般的。可能なら厚めで①の耐力を底上げ ・断面積の考え方:丸でも角でも同断面なら耐力は同等。加工性や現場性で選ぶ ・目標モード:②の込栓破壊が起こりやすいように強度バランスを調整 <まとめ> 壊れ方は3つあるが、「込栓が壊れる」設計が安全で直しやすいです。 位置・径・材質・ホゾ厚で、どのモードになるかをある程度意図的にコントロールできます。 土台の割裂(③)だけは避けましょう: 込栓を上に寄せすぎない・太くしすぎないのがコツです。
次回は、ボルト接合について、お話します。
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