NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ20

込栓の性能

柱脚の「長ホゾ差し+込栓」接合に引張力がかかると、壊れ方は次の3種類のどれかになります。

①ホゾが割れる
②込栓が折れる
③土台が割れる

このうち、②込栓が壊れるタイプが最も粘り強く、修理もしやすいのがポイントです。


■用語の整理

接合具:
部材をつなぐ小物(込栓・車知栓・ダボ・楔など)。
ここでは込栓が主役。

長ホゾ差し:
柱の先端(ホゾ)を土台に深く差し込み、
込栓で抜け止めする伝統的なやり方。

壊れ方は、木の樹種・寸法や、込栓の材質・径・位置などで変わります。


■3つの破壊形式と特徴

① ホゾの破壊(せん断破壊)

現象:
込栓の下側でホゾが割れて、柱が抜け気味になる。

力学の要点:
引張に対して耐える力は、込栓より下に残るホゾ断面積にほぼ比例。
⇒ 込栓を土台の上寄りに打つと、ホゾの下側が大きく残り、耐力アップ
⇒ ホゾ厚みを増やす(一般的には30mm、それ以上にすると有利)

挙動:
壊れ始めると耐力が急落しやすい(脆い)


② 込栓の破壊(曲げせん断破壊)

現象:
ホゾと土台の境界あたりで込栓が折れ曲がる。
ホゾ・土台は大きく壊れない。

力学の要点:
ホゾが強く、込栓が相対的に弱いと発生。
込栓は山形に曲がりながら折れるため、楔のように噛み続け、壊れた後も耐力低下が緩やか。

保全性:
柱や土台に比べて、込栓の交換だけで直せることが多く、工事が軽微。

形状の目安:
15mmまたは18mm径の正方形 or 円形が一般的。
断面積が同じなら耐力はほぼ同等(丸でも角でもOK)


③ 土台の破壊(割裂)

現象:
込栓位置を起点に、土台が繊維方向に裂ける。

要因:
込栓が太すぎる、または込栓位置が上に寄りすぎると起こりやすい。

挙動:
非常に脆い壊れ方で、修理は大掛かりになりがち。


■どれが望ましい?(設計方針)

ベストは②「込栓が壊れる」モードを支配的にすること。

・壊れても耐力が急に落ちない(粘り強い)
・修理が容易(込栓交換で対応しやすい)

そのために、ホゾや土台は十分強く、込栓は適切な材・径・位置にする。

避けたいのは③土台割裂(脆く、復旧コストが高い)


■目安となる力の考え方(抵抗面積)

※「抵抗面積」はどこがせん断に耐えているかを簡単に表す指標です

①ホゾのせん断破壊

抵抗面積:

A=B′×L′×2面

B’:ホゾ幅
L′:込栓より下に残るホゾ長さ(余長)

設計のコツ:
込栓を上側に配置、ホゾ厚みを厚くしてAを大きく

②込栓の曲げせん断破壊

抵抗面積:

A=込栓断面積×2面

設計のコツ:
込栓径・材質で微調整(強すぎると③へ、弱すぎると過度に壊れやすい)

③土台の割裂

抵抗面積:

A=(B−B′)×D′

B:土台幅
B′:ホゾ幅
D′:ホゾ上端から込栓までの距離(上側カブリ)

設計のコツ:
込栓を上に寄せすぎない、径を太くしすぎない、土台の繊維方向割裂に注意


<実務でのチューニング指針>

・込栓位置:上すぎると③を誘発。適度に下げてバランスを取る
・込栓径:15~18mmが一般的。太すぎはNG(③のリスク増)
・ホゾ厚:30mmが一般的。可能なら厚めで①の耐力を底上げ
・断面積の考え方:丸でも角でも同断面なら耐力は同等。加工性や現場性で選ぶ
・目標モード:②の込栓破壊が起こりやすいように強度バランスを調整


<まとめ>

壊れ方は3つあるが、「込栓が壊れる」設計が安全で直しやすいです。

位置・径・材質・ホゾ厚で、どのモードになるかをある程度意図的にコントロールできます。

土台の割裂(③)だけは避けましょう:
込栓を上に寄せすぎない・太くしすぎないのがコツです。



次回は、ボルト接合について、お話します。

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