JavaScript を有効にしてご利用下さい.
まず知っておきたいポイントとして、「蟻(あり)」「鎌(かま)」と呼ばれる形の接合は、木が乾いて縮むとゆるみやすいです。 → 基本は引寄せ金物(ボルトやプレート)を併用して、抜けにくくするのが安全です。 ■用語の解説 ・継手(つぎて):梁など同じ方向の部材どうしを長手方向に継ぐ方法 ・仕口(しぐち):柱と梁など、直交する部材が交わる接合 ・込栓(こみせん):穴に打ち込む木のピン ・車知栓(しゃちせん):薄い板状の木のくさびを2枚でハの字に入れて締める部材 ・蟻:台形で引っ掛かる ・鎌:矢印のように差し込んで抜けにくい形 ・竿(さお):通し柱を貫通する梁のホゾ(差し込み部分)
■伝統的な継手(同じ方向の部材を継ぐ) ●追掛大栓継ぎ(おっかけおおせんつぎ) ・かみ合わせた木に大きめの込栓を2か所打ち込んで固定 ・木の繊維方向どうしが直接かみ合うので、引っ張りにとても強い ・ただし加工精度が高く必要(作るのが難しい) ●金輪継ぎ(かなわつぎ) と 尻挟み継ぎ(しりばさみつぎ) ・形は少し違うが、どちらもくさび状の栓で増し締めして固定 ・施工誤差の調整がしやすい一方、栓が繊維と直角方向に力を受けるため、追掛大栓継ぎより引張耐力は下がる ●腰掛け蟻継ぎ と 腰掛け鎌継ぎ ・腰掛け部で鉛直荷重(上からの重さ)を受ける ・蟻・鎌の形は主に抜け止め役 ・ただし乾燥収縮で抜けやすくなる傾向があるため、引寄金物の併用が原則 ●台持ち継ぎ ・丸太の小屋組などでよく使う ・支持点で継ぐのが基本(支えのある位置で継ぐので力学的に有利) ●竿車知継ぎ(さおしゃちつぎ) ・竿=通し柱を貫く梁のホゾ ・片側の梁を貫通させる分あそびが少なく、引張に強い ・固定には車知栓(薄板のくさび2枚)をハの字にずらして打ち込み、締め上げる ・込栓(丸や四角のピン)を梁の側面から打つ方法もある <一覧(継手)> ① 追掛大栓継ぎ:大栓(込栓)で強固に固定 ② 金輪継ぎ:くさび状の栓で増し締め ③ 尻挟み継ぎ:くさび状の栓で増し締め ④ 腰掛け蟻継ぎ:蟻形で抜け止め+腰掛けで荷重伝達 ⑤ 腰掛け鎌継ぎ:鎌形で抜け止め+腰掛けで荷重伝達 ⑥ 台持ち継ぎ:支持点で継ぐ丸太向けの継手 ⑦ 竿車知継ぎ:竿+車知栓で高い引張耐力 ■伝統的な仕口(直交部材が交わる) ・渡り腮(わたりあご) 互いの梁を欠き合ってシンプルにかみ合わせる基本形。 ・蟻落し(ありおとし) 梁の上端高さがそろう場合に使う。 受け梁側に蟻形の溝をつくり、上から落とし込む。 ・兜蟻掛け(かぶとありがけ) 小屋組でよく使う。 梁のレベル(高さ)が異なる場合に、蟻形を梁の下側につくり、桁梁に載せ掛ける。 ・雇(やとい)ホゾ 30mm厚程度の板(ホゾ板)を通し柱に貫通させ、梁を込栓または車知栓で固定。 梁は柱に少し差し込むだけなので、竿継ぎより施工が楽で、梁長さも統一しやすい。 <一覧(仕口)> ① 渡り腮:欠き合わせる基本形 ② 大入れ蟻掛け(=蟻落し):上から落とし込む蟻形 ③ 兜蟻掛け:下側を蟻形にして桁に載せ掛け ④ 雇ホゾ:ホゾ板を柱に通し、込栓・車知栓で固定 <まとめ> ・強さ重視(引張):加工精度が出せるなら追掛大栓継ぎが有力 ・現場調整しやすさ:金輪・尻挟みはくさびで微調整が効く ・抜け止め重視:蟻・鎌を用いるが、乾燥収縮対策に金物併用は必須 ・施工性・共通化:雇ホゾは施工しやすく寸法統一にも向く ・丸太・小屋組:台持ちのように支持点で継ぐと力の流れが安定 ・高い引張耐力+遊びが少ない:竿+車知栓が有利 形の意味(荷重を受ける部位/抜け止めの役割)と、乾燥収縮への対策(=金物の併用)を押さえて選ぶのがコツです。
次回は、込栓の性能について、お話します。
▲このページのTOPへ