NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ19

伝統的な継手と仕口

まず知っておきたいポイントとして、「蟻(あり)」「鎌(かま)」と呼ばれる形の接合は、木が乾いて縮むとゆるみやすいです。

→ 基本は引寄せ金物(ボルトやプレート)を併用して、抜けにくくするのが安全です。


■用語の解説

・継手(つぎて):梁など同じ方向の部材どうしを長手方向に継ぐ方法
・仕口(しぐち):柱と梁など、直交する部材が交わる接合
・込栓(こみせん):穴に打ち込む木のピン
・車知栓(しゃちせん):薄い板状の木のくさびを2枚でハの字に入れて締める部材
・蟻:台形で引っ掛かる
・鎌:矢印のように差し込んで抜けにくい形
・竿(さお):通し柱を貫通する梁のホゾ(差し込み部分)


■伝統的な継手(同じ方向の部材を継ぐ)

●追掛大栓継ぎ(おっかけおおせんつぎ)

・かみ合わせた木に大きめの込栓を2か所打ち込んで固定
・木の繊維方向どうしが直接かみ合うので、引っ張りにとても強い
・ただし加工精度が高く必要(作るのが難しい)

●金輪継ぎ(かなわつぎ) と 尻挟み継ぎ(しりばさみつぎ)

・形は少し違うが、どちらもくさび状の栓で増し締めして固定
・施工誤差の調整がしやすい一方、栓が繊維と直角方向に力を受けるため、追掛大栓継ぎより引張耐力は下がる

●腰掛け蟻継ぎ と 腰掛け鎌継ぎ

・腰掛け部で鉛直荷重(上からの重さ)を受ける
・蟻・鎌の形は主に抜け止め役
・ただし乾燥収縮で抜けやすくなる傾向があるため、引寄金物の併用が原則

●台持ち継ぎ

・丸太の小屋組などでよく使う
・支持点で継ぐのが基本(支えのある位置で継ぐので力学的に有利)

●竿車知継ぎ(さおしゃちつぎ)

・竿=通し柱を貫く梁のホゾ
・片側の梁を貫通させる分あそびが少なく、引張に強い
・固定には車知栓(薄板のくさび2枚)をハの字にずらして打ち込み、締め上げる
・込栓(丸や四角のピン)を梁の側面から打つ方法もある


<一覧(継手)>

① 追掛大栓継ぎ:大栓(込栓)で強固に固定
② 金輪継ぎ:くさび状の栓で増し締め
③ 尻挟み継ぎ:くさび状の栓で増し締め
④ 腰掛け蟻継ぎ:蟻形で抜け止め+腰掛けで荷重伝達
⑤ 腰掛け鎌継ぎ:鎌形で抜け止め+腰掛けで荷重伝達
⑥ 台持ち継ぎ:支持点で継ぐ丸太向けの継手
⑦ 竿車知継ぎ:竿+車知栓で高い引張耐力


■伝統的な仕口(直交部材が交わる)

・渡り腮(わたりあご)
互いの梁を欠き合ってシンプルにかみ合わせる基本形。

・蟻落し(ありおとし)
梁の上端高さがそろう場合に使う。
受け梁側に蟻形の溝をつくり、上から落とし込む。

・兜蟻掛け(かぶとありがけ)
小屋組でよく使う。
梁のレベル(高さ)が異なる場合に、蟻形を梁の下側につくり、桁梁に載せ掛ける。

・雇(やとい)ホゾ
30mm厚程度の板(ホゾ板)を通し柱に貫通させ、梁を込栓または車知栓で固定。
梁は柱に少し差し込むだけなので、竿継ぎより施工が楽で、梁長さも統一しやすい。


<一覧(仕口)>

① 渡り腮:欠き合わせる基本形
② 大入れ蟻掛け(=蟻落し):上から落とし込む蟻形
③ 兜蟻掛け:下側を蟻形にして桁に載せ掛け
④ 雇ホゾ:ホゾ板を柱に通し、込栓・車知栓で固定


<まとめ>

・強さ重視(引張):加工精度が出せるなら追掛大栓継ぎが有力
・現場調整しやすさ:金輪・尻挟みはくさびで微調整が効く
・抜け止め重視:蟻・鎌を用いるが、乾燥収縮対策に金物併用は必須
・施工性・共通化:雇ホゾは施工しやすく寸法統一にも向く
・丸太・小屋組:台持ちのように支持点で継ぐと力の流れが安定
・高い引張耐力+遊びが少ない:竿+車知栓が有利

形の意味(荷重を受ける部位/抜け止めの役割)と、乾燥収縮への対策(=金物の併用)を押さえて選ぶのがコツです。



次回は、込栓の性能について、お話します。

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