NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ18

木造仕口

仕口は大きく 「柱通しタイプ」 と 「梁通しタイプ」 の2種類あります。。

それぞれのタイプで、接合方法は、①木材のみ、②金物併用、③金物のみ、の3パターンに分けられます。

選ぶときは、荷重の伝え方(鉛直荷重・引抜き・抜け出し) と 意匠性・施工性 のバランスを見ます。


■用語解説

・ホゾ:柱や梁に作る差し込み用の突起
・雇ホゾ:梁側に別材で付けるホゾ。取り外しやすい
・長ホゾ/短ホゾ:ホゾの長さ違い(長い/短い)
・込栓:抜け止めのために打つ木の杭(ダボ)
・車知栓(しゃちせん):くさび状の栓。締付け効果が高い
・羽子板ボルト:T字の金物+ボルトで部材を締める金物
・両引きボルト:左右(両側)からボルトで引っ張って締める
・ドリフトピン:金物やパイプを固定するために打つ鋼製のピン
・クレテックタイプ:専用金物と突起(シアコネクタ)で受ける金物接合
・ハンガーパイプ:梁を吊り下げるように支持する金物方式
・短冊金物:薄いプレート状の金物で抜け止め・補強に使う
・引寄金物(ホールダウン):柱の引抜き力に抵抗する強力な金物
・端距離:ピンやボルトの穴位置から部材端までの距離。割れ防止に重要


■柱通しタイプ(柱が通って、梁が横から入る)

① 木材のみの接合(雇ホゾ+込栓/車知栓)

考え方:
梁の大入れ(段差状に噛み合わせ)で鉛直荷重を受け、込栓や車知栓で梁の抜け出しを止める。

ポイント:
金物を見せたくない場合に有効。乾燥や加工精度が品質を左右。

② 金物併用(羽子板ボルト or 引きボルト埋込み)

考え方:
鉛直荷重は大入れで受け、羽子板ボルト等で抜け出し防止。
意匠重視なら、引きボルトを梁断面内に通して目立たなくできる。

ポイント:
見た目と性能のバランスが良い。現場での締付け管理が大事。

③ 金物のみ(クレテック/ハンガーパイプ)

クレテックタイプ:
柱側金物+突起(シアコネクタ)+ボルトで緊結。

ハンガーパイプ:
梁下端にアゴを設けたり、インサート金物で支持力UP。

共通の注意:
含水率管理と寸法安定性が必須。ピンやボルトの配置精度も重要。


■梁通しタイプ(梁が通って、柱が上下から刺さる)

① 木材のみの接合(長ホゾ+込栓)

考え方:
長ホゾを梁にしっかり差し込み、込栓で抜けを止める。
込栓位置は、ホゾや梁(土台)の耐力を見て決めるのが基本。

ポイント:
木だけで完結。加工精度と割れ対策(木口方向)に留意。

② 金物併用(短冊金物/ホールダウン/両引きボルト)

短ホゾ+短冊金物:
抜け出しを手軽に抑える。

ホールダウン(引寄金物):
柱の引抜力が大きい場合に必須。

両引きボルト:
柱—梁を両側から締め上げ、全体を一体化。

ポイント:
要求耐力に応じて金物の格を上げる。意匠配慮ならボルトを柱断面内に。

③ 金物のみ(ホゾパイプ/プレート+ドリフトピン)

考え方:
鋼製パイプやプレートを柱・梁に差し込み、ドリフトピンで固定。

意匠性・施工性が良い一方、ピン間隔や端距離をしっかり確保する必要あり。

ポイント:
割れ・座屈・孔あき弱化への配慮、カタログ値どおりの施工精度が鍵。


■選定のコツ(実務の視点で要点整理)

●荷重伝達:

・鉛直荷重は「当たり面(大入れ・アゴ)」で面として受けると安定
・引抜き・抜け出しは「込栓・ボルト・ピン」で引きとして確実に止める

●意匠性:
金物を見せたくない → 木材のみ or 埋込みボルト系

●施工性:
現場調整が多い → 金物併用/金物のみが有利(ただし精度管理必須)

●耐久性:
含水率管理・端距離・孔位置精度で割れや緩みを予防

●法規・性能:
必要耐力(引抜き・せん断・曲げ戻し)に応じてホールダウン等を格上げ


<まとめ>

・柱通し/梁通しの違いは、力の流れと納まりを左右
・木のみ・併用・金物のみの3択は、意匠・施工・性能の優先度で選ぶ
・抜け出し対策(込栓・ボルト・ピン)と、面で受ける鉛直支持をセットで考える
・端距離・ピン間隔・含水率などの基本管理が、実力を決める



次回は、伝統的な継手と仕口について、お話します。

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