NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ15

耐風柱・梁

■全体像

吹抜けに面した外壁は、風圧力(横から押す力)を強く受けます。

この風圧に対して、柱(縦材)か梁(横材)のどちらか「連続して通っている方」が主に抵抗します。

・通し柱が通っていれば
→ 柱が主役(=耐風柱)

・管柱(1階ごとに区切られた柱)が多く、梁がつながっていれば
→ 梁が主役(=耐風梁)

ポイントとしては、鉛直荷重(上からの重さ)とは支配的な部材が変わることがあります。

風は横から来るので、縦横どちらが通っているかが効きます。


■風圧に耐える2つの考え方

・梁で受ける(梁が優先して通る)
柱に入った風圧力が最終的に梁へ流れていき、梁が受け持つ。

・柱で受ける(柱が優先して通る)
梁に入った風圧力が最終的に柱へ流れていき、柱が受け持つ。


■耐風柱(柱・間柱)の設計イメージ

必要断面は次の2つで決まります。

・負担幅(その柱・間柱が受け持つ外壁幅)
・スパン(上下の横架材間の距離=柱の有効長さ)

検討は強度とたわみの2つです。

風圧は短期荷重なので、クリープ増大(長期的な変形の上乗せ)は考えなくてOKです。

スパンと負担幅(表)

部材 | スパン(上下の距離) | 負担幅(受け持つ横幅)
柱1 | h1 | (B1 + B2) / 2
柱2 | h2 | (B2 + B3) / 2
間柱 | h1 | B3

※2階の柱1、柱2、間柱に対して、
 h1:2階横架材間距離、h2:1+2階横架材間距離
 B1、B2は、柱1、柱2を挟む柱間距離、B3は、間柱を挟む間柱間距離

長いほどたわみやすく、広いほど力が増えます
→ 太く強い断面が必要です

接合部が超重要で、柱から梁へ力を渡す仕口(ホゾ)が弱いと、柱が曲がった時に抜けやすいです。

短ホゾのみはNG。金物併用か長ホゾ+込栓で抜け止めを必ず行うようにしてください。


■耐風梁(横架材)の設計イメージ

吹抜け側の梁は、鉛直荷重+風圧による横曲げに耐える必要があります。

床がある部分なら床面(合板・根太・床梁)が水平構面として抵抗してくれますが、吹抜けは床がないので、梁自体の幅で抵抗することになります。

ポイントとして、梁は幅が効くので、風に対しては、梁断面の「梁幅 d」がせいとして効きます(横に曲げられるため)。

そのため、たわみを小さくしたいなら「梁せい」よりも「梁幅」を増やすのが有効です。

スパンのとり方(支持点の考え方)としては、

・耐風梁のスパンLは、風と平行方向の梁や床が取り付く位置を支持点としてカウント
・振止め梁や火打梁を入れると有効スパンを短くできる
・管柱を増やしても、耐風梁のスパンは短くならない(風向に対する支持点にはならないから)

継手・端部については、

・耐風梁に継手は作らない(曲げが大きく抜けやすい)
・端部の仕口は抜け止めを確実に


■設計チェックの順番

・どちらが通っているかを確認(通し柱?連続梁?)
 → 主担当を耐風柱 or 耐風梁で決める

・負担幅とスパンを整理。吹抜けでは耐風梁の支持点の見立てが肝

・強度・たわみを両方チェック(短期荷重扱い、クリープ増大は不要)

・接合部の抜け止めを必ず設計(柱ホゾ:金物併用 or 長ホゾ+込栓/梁端部の留め)

・耐風梁でたわみが厳しいときは、
 - 梁幅を増やす(最優先)
 - 振止め梁・火打梁で有効スパンを短縮
 - 可能なら水平構面(床)で受ける計画に変更

・耐風梁内の継手は避ける(どうしても必要なら配置見直し・納まり再検討)


■例えイメージ

・柱主役型:
縦に並ぶ電柱が風でしなり、上端と下端でしっかり固定されているイメージ。電柱(=柱)の太さ・長さ・支点間距離でしなりが決まる。

・梁主役型:橋桁が横から押されるイメージ。橋桁(=梁)は横曲げに弱い方向があり、幅方向の厚みを増やすと強くなる。


■失敗しがちなポイント(要注意)

・柱ホゾが短いまま:
曲げで簡単に抜けやすい → 金物併用or長ホゾ+込栓へ

・管柱を増やせば安心だと誤解:
耐風梁のスパン短縮には効かない。振止め・火打で支持を作る

・梁せいばかり増やす:
風には梁幅が効く。幅アップでたわみ改善

・吹抜け側に継手:
耐風梁の継手は原則NG。納まりを組み替える


<まとめ>

・どちらが通っているか=主役決定(柱or梁)
・柱・間柱:
負担幅×スパンで強度・たわみチェック、接合部の抜け止めが必須
・耐風梁:
梁幅を増やすのが効く/振止め・火打梁でスパン短縮/継手NG
・風は横から来る。鉛直荷重の常識をそのまま当てはめないのがコツ



次回は、接合部性能について、お話します。

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