NSJ住宅性能研究所

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軸組と接合部シリーズ14

2階耐力壁と梁

耐力壁(たいりょくへき)を梁の上に載せる場合は、梁の大きさ(断面)と、梁と柱などの接合部の強さに注意が必要です。

2階の壁の強さ(壁量)には、少し余裕を持たせておくことが大切です。

■2階の耐力壁の下に柱がないとどうなる?

2階と1階の柱の位置は上下でそろっているのが理想です。

しかし、実際の住宅では、2階の柱を床梁の真ん中あたりに載せていることもあります。

このとき、2階の床梁には、

・床の重さ
・屋根の重さ
・外壁の重さ

など、いろいろな荷重がかかり、梁がたわみやすくなります。

さらにその上に耐力壁があると、地震などで建物が横から押されたときに、

・一方の柱には「押される力(圧縮)」
・もう一方の柱には「引っ張られる力(引張)」

が発生します。

これらの力が普段の荷重にプラスされるため、梁のたわみがさらに大きくなり、梁の端部(柱との接合部)には強い力が集中します。

そのため、接合部の設計にも注意が必要です。


■耐力壁の足元が沈むとどうなる?

梁がたわむと、耐力壁から見ると足元が沈むような状態になります。

その結果、

・耐力壁全体が回転しやすくなる
・壁が変形しやすくなる
・壁の「剛性(かたさ)」が下がる

つまり、壁倍率(壁の強さを示す数値)が低下します。

本来の強さを発揮できなくなるのです。


■実験による検証結果

2階に「壁倍率4(筋かい45×90mmのたすき掛け)」の耐力壁を設けたとき、1階に柱があるかどうか、また梁の大きさによって壁倍率がどれくらい下がるかを調べた結果がこちらです。

ケース | 状況 | 壁倍率(梁断面による)
① 柱が両側にある | 通常(理想状態) |壁倍率4.0のまま変化なし
② 片側だけ柱がある | 梁がしっかりしていても約15%低下
③ 両側に柱がない | 梁の断面を大きくしても②と同程度まで低下

梁を大きくしても、「下に柱がない」という構造的な弱点は補えないことが分かります。


■実際の影響(数値で見る)

梁せいの大きさを変えたときの壁倍率の変化を整理すると、以下のようになります。

小屋梁・床梁(mm) | 柱あり×2(①) | 柱1本(②) | 柱なし(③)
150・150 | 4.0 | 1.9 | 1.9
150・240 | 4.0 | 2.7 | 2.7
150・300 | 4.0 | 3.1 | 3.0
240・240 | 4.0 | 3.1 | 3.1
300×300 | 4.0 | 3.4 | 3.4
※梁幅はすべて120mm設定

→ 柱が減ると、壁倍率が最大で半分以下になることもある。


<まとめ(設計の考え方)>

・耐力壁を梁の上に載せるときは、梁のたわみ・接合部・下の柱の有無を必ず確認する
・下に柱がない場合、壁倍率が低下して耐震性能が落ちる

そのため、梁を太くするだけでは不十分で、2階全体の壁量(耐力壁の総量)を余裕をもって設計することが重要です。

<イメージ理解>

耐力壁を「机の脚」に、梁を「机の板」に例えると分かりやすいです。

脚(柱)が4本きちんと下にあると安定しますが、片方の脚を抜くと板がたわみ、机全体がぐらぐらします。

建物の耐力壁も同じで、下に支える柱がないと、壁の強さを十分に発揮できません。



次回は、耐風柱・梁について、お話します。

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