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■なぜ「ずれ止め(合成化)」が命か 梁を上下に重ねただけ(せん断連結なし)だと、鉛直荷重で重ね面が滑り、各材が別々の梁としてしか働きません(剛性・耐力が大幅ダウン) せん断連結(合成)を効かせると、上下材が一体断面として働き、曲げ強度(Z)・剛性(I)が大きく向上します。 端部〜L/4区間はせん断が大きいので連結を密に、が基本。
■Z・Iの比較(同一総断面を想定した例) 例:b=105mm、h=300mm 相当を、上下150mm×2で重ねるケースで比較 断面形 | 想定 | 断面係数 Z (mm³) | 断面二次モーメント I (mm⁴) | 備考 単材 105×300 | 基準 | 1,575,000 | 236,250,000 | 基準値 重ね梁(非合成:105×150×2) | 各材が別々に働く | 2×393,750 = 787,500 | 2×29,531,250 = 59,062,500 | Z=約50%、I=約25%に低下 重ね梁(完全合成:105×300相当) | 一体断面として働く | 1,575,000 236,250,000 | 単材と同等(実務上はわずかに低下あり) 集成梁(接着合成) | ほぼ完全合成 | ≒1,575,000 | ≒236,250,000 | 接着品質次第で安定して一体化 ■計算根拠(基準式) Z = b·h²/6、I = b·h³/12 105×300:Z=105×300²/6=1,575,000、I=105×300³/12=236,250,000 105×150:Z=105×150²/6=393,750、I=105×150³/12=29,531,250 → 非合成は×2 ■トラス梁の効率(深さで効かせる) 深さが1.5倍(h: 300→450)になると I は (1.5)³=3.375倍。軽量でたわみ抑制に極めて有効。 ただし引張材(下弦材)と結節部の接合設計が支配的。 ■具体ディテール(重ね梁のずれ止め) ・接着合成(最も理想) 構造用接着+加圧で連続面接着。 製品としては集成梁が該当。 現場接着合成は養生・圧締管理が難しいので、原則は工場製作を推奨。 ・ダボ/ビス/ボルトによる合成(部分合成) 端部〜L/4はピッチ細かく。 ■目安(木造実務の感覚値) ・端部〜L/4:φ9〜12ダボ or コーチねじ等を@150〜200mm程度、千鳥配列 ・L/4〜中央:@300〜450mm程度 ・面圧確保のため座堀・座金、ナットの緩み止め必須(バネ座金・二重ナット等) ・割裂防止:端距離・縁距離を確保(端距離≥7d、縁距離≥4d目安/d=ダボ径) ・接着+メカ連結の併用がベスト(滑り抑制と施工冗長性の両立) ■鋼材併用の複合梁 上下木材を束材(スペーサ)で離して鋼棒(引張材)で縛るタイドビーム的構成。 引張部の定着(アンカープレート・座金)と座屈止め(圧縮材側・束材)が要点。 長期クリープとプレストレス損失を見込む(定期締め直し計画) ■設計の勘所チェックリスト ・どの合成度か(非合成/部分合成/完全合成)をまず定義 ・端部〜L/4の連結ピッチは十分か(せん断最大域) ・割裂防止寸法(端・縁距離、孔間隔)を満足 ・湿潤・乾燥での滑り・緩みリスク対策(座金/緩み止め) ・通しダボの配置は千鳥で木口割れを回避 ・防錆・防露(鋼棒・金物の腐食対策) ・長期たわみ(部分合成は I 有効が下がる→たわみ増に注意) ・施工順序と仮支持(組立中の安定) ■使い分けクイックガイド ・大スパンでたわみ管理厳しい → トラス梁(深さでIを稼ぐ) ・既存材の再利用・小径材活用 → 重ね梁+確実なずれ止め ・寸法安定・性能安定 → 集成梁(工場品質で一体化) ・意匠的に薄く見せたい → 複合梁(鋼タイド)で張力負担
次回は、2階耐力壁と梁について、お話します。
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