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継手はどうしても強度が弱くなる部分なので、できるだけ力(応力)の小さい場所に設けます。 継手の位置を決めるときは、軸組図(建物の骨組みの側面図)を見ながら全体の力の流れを確認します。 ■ 継手をどこに作るかを考える 梁(はり)は、本来は継ぎ目がない長い材料を使う方が強いです。 しかし、製材の長さには限りがあるため、どうしても「継手(つぎめ)」を作る必要があります。 このとき、どんな継手をどこに設けるかを検討することが重要です。
■ 継手は強度が低い 過去の実験では、継手部分の曲げ強度は、欠損のない断面(普通の木部)と比べて最大でも15%程度しかないことが分かっています。 つまり、継手は梁の中でもかなり弱い部分です。 ■ 継手を設ける位置の考え方 梁に荷重(おもり)がかかると、梁の中には「曲げ応力」が生じます。 梁の(上下方向の)真ん中を「応力がゼロになる線(中立軸)」として、上側は圧縮、下側は引張が働きます。 したがって、継手は応力の小さいところ(=応力曲線が中立軸と交わるあたり)に設けるとよいです。 また、スパン(柱と柱の間隔)が短い部分は全体的に応力が小さいので、この範囲に継手を置くのが基本です。 ■ 継手の位置と形式の種類 ・中央継手形式 柱と柱の間(スパン)の短い部分の中央部に継手を設ける。 この位置は曲げモーメントもせん断力も小さいので、梁への負担が少ない。 応力がほとんどかからないので、継手を設けるならこの形式が最も理想的。 ・持ち出し梁(片持ち梁)形式 片持ち梁の先端に、次の梁を継ぎ足すように設ける。 継手にはせん断力(ずれようとする力)が働く。 長スパン(長い梁)を受けるときは特に大きなせん断力が生じるため、強い継手形状にする必要がある。 片持ち部分の長さは、梁の断面や継手の形状にもよるが、600mm以下が目安。 ・単純梁形式 梁全体を1本の単純梁とみなし、曲げモーメントの小さい部分(両端付近)に継手を設ける方法。 ただし、梁の端部は曲げ応力は小さいものの、せん断力が大きくなるため、形状に注意が必要。 木造の場合、柱との接合も複雑になるので、この形式はあまり使わないほうがよい。 ■ 継手の構造上の考え方 継手を入れた時点で、その場所で梁が「分断されている」と考えるのが基本です。 そのため、近くの柱から片持ち梁として力を伝えるように設計します。 一般的によく使われる継手には、 ・鎌継ぎ(かまつぎ) ・腰掛け蟻継ぎ(こしかけありつぎ) などがありますが、これらは強度が低く、乾燥による収縮で緩みやすいため、金物(ボルトやプレートなど)を併用するのが望ましいです。 ■ 設計上の注意点 継手の位置を決めるときは、伏図(上から見た図)だけでなく軸組図(側面図)も確認して、上下階の力の流れをつかむことが大切です。 ■ 継手の強度比較(実験結果より) 継手の種類 | 材料 | 断面(mm) | 最大荷重P(kg) | 無継手に対する強度比 金輪(縦) | スギ | 135×150 | 2,680 | 12.4% 金輪(横) |スギ | 135×150 | 1,470 | 6.8% 追掛大栓継ぎ | スギ | 120×150 | 3,161 | 16.5% 鎌継ぎ | スギ | 120×150 | 714 | 3.7% ➡ 継手の強度は、追掛大栓継ぎ>金輪継ぎ>鎌継ぎ の順に強く、 無継手(1本もの)の15%以下しかないことが分かります。 <まとめ> ・継手は梁の「弱点」になるため、応力の小さい位置を選ぶことが最重要 ・継手の形状・位置は、曲げモーメント図や軸組図を見ながら決める ・乾燥やせん断に注意し、金物補強を併用することで信頼性を高める ・継手を設ける場合は、その位置で梁が独立していると考えて構造設計を行う
次回は、重ね梁、トラス梁、複合梁について、お話します。
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