NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ29

土台のめり込み

めり込みの強さ(耐力)は、木の種類・接触面積・力のかかる位置によって変わります。


■めり込みとは

木材は「繊維の方向」によって性質が違うという特徴(=異方性)を持っています。

木の繊維に沿って押す場合と、繊維に直角に押す場合では、変形の仕方が異なります。

繊維と直角方向に力を受けて、表面がへこむような現象を「横圧縮」または「めり込み」といいます。

このとき木材はすぐに壊れるわけではなく、少しずつ変形しても、力を取り除けばゆっくり元に戻るという、粘り強い性質があります。


■めり込みが起こる場所

めり込みは、主に次のような部位で発生します。

・柱と土台の接合部
・貫(ぬき)の接合部

めり込み耐力(どれだけの力に耐えられるか)は、

① 部材同士が触れている面積
② 力がかかる位置(中央か端か)

によって変わります。


■力の作用位置と変形の違い

力が部材の中央付近に加わると、力は左右に均等に広がり、木が押しつぶされても途中で釣り合って止まります。

しかし、端部に近い位置に力がかかると、力の広がる範囲が狭く、より深くめり込みやすくなります。

そのため、設計では柱が土台の端にある場合と中央にある場合で「許容応力度(使ってよい応力)」に割増率(α)が設定されています。

材の中間部:α=1.50
材の端部:α=1.20


■柱と土台の幅の関係

柱の幅が土台より大きいと、力が偏って土台が不均等に押され、傾きやすくなります。

これが大きくなると、柱が傾き、建物全体のバランスに悪影響を及ぼすこともあります。

したがって、基本的には土台の幅 ≧ 柱の幅が原則です。

やむを得ず柱の方が大きくなる場合は、はみ出しを15mm以下にします。

それ以上になる場合は、柱を直接基礎の上に載せ、土台とは金物で連結します。


■めり込みの許容変形量

日本建築学会「木質構造設計規準」では、めり込みによる変形量は3mm以下とされています
(つまり、3mm以上沈み込むような設計は避けるべき)


■土台の長期許容めり込み耐力(例)

樹種 | 部位 | 材中間部 | 材端部
スギ | 許容めり込み応力度 | 3.00 N/㎟ | 2.40 N/㎟
スギ(105mm角) | 柱・土台 | 26.3 kN | 21.1 kN
スギ(120mm角) | 柱・土台 | 34.0 kN | 27.2 kN
ヒノキ | 許容めり込み応力度 | 3.90 N/㎟ | 3.12 N/㎟
ヒノキ(105mm角) | 柱・土台 | 34.2 kN | 27.4 kN
ヒノキ(120mm角) | 柱・土台 | 44.2 kN | 35.4 kN

※kN(キロニュートン)は力の単位です。1kN ≒ 約100kgf。


■許容めり込み耐力を超える場合の対策

対策 → 効果・注意点

土台の断面を大きくする
→接触面が広がり、めり込みにくくなる

土台の樹種を変える
→ヒノキなど強い木を使えば耐力が上がる

柱断面を大きくする
→土台の幅も合わせて調整が必要

柱を増やす
→1本あたりの荷重を減らすことができる

柱を基礎に直接載せる
→木の繊維方向で力を受けるため、より強くなる


<まとめ>

・「めり込み」は木の粘り強さを活かした自然な変形現象
・端部での力の集中や柱・土台のずれには注意
・はみ出し15mm以内、変形3mm以下が安全の目安



次回は、梁の強度について、お話します。

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