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めり込みの強さ(耐力)は、木の種類・接触面積・力のかかる位置によって変わります。 ■めり込みとは 木材は「繊維の方向」によって性質が違うという特徴(=異方性)を持っています。 木の繊維に沿って押す場合と、繊維に直角に押す場合では、変形の仕方が異なります。 繊維と直角方向に力を受けて、表面がへこむような現象を「横圧縮」または「めり込み」といいます。 このとき木材はすぐに壊れるわけではなく、少しずつ変形しても、力を取り除けばゆっくり元に戻るという、粘り強い性質があります。
■めり込みが起こる場所 めり込みは、主に次のような部位で発生します。 ・柱と土台の接合部 ・貫(ぬき)の接合部 めり込み耐力(どれだけの力に耐えられるか)は、 ① 部材同士が触れている面積 ② 力がかかる位置(中央か端か) によって変わります。 ■力の作用位置と変形の違い 力が部材の中央付近に加わると、力は左右に均等に広がり、木が押しつぶされても途中で釣り合って止まります。 しかし、端部に近い位置に力がかかると、力の広がる範囲が狭く、より深くめり込みやすくなります。 そのため、設計では柱が土台の端にある場合と中央にある場合で「許容応力度(使ってよい応力)」に割増率(α)が設定されています。 材の中間部:α=1.50 材の端部:α=1.20 ■柱と土台の幅の関係 柱の幅が土台より大きいと、力が偏って土台が不均等に押され、傾きやすくなります。 これが大きくなると、柱が傾き、建物全体のバランスに悪影響を及ぼすこともあります。 したがって、基本的には土台の幅 ≧ 柱の幅が原則です。 やむを得ず柱の方が大きくなる場合は、はみ出しを15mm以下にします。 それ以上になる場合は、柱を直接基礎の上に載せ、土台とは金物で連結します。 ■めり込みの許容変形量 日本建築学会「木質構造設計規準」では、めり込みによる変形量は3mm以下とされています (つまり、3mm以上沈み込むような設計は避けるべき) ■土台の長期許容めり込み耐力(例) 樹種 | 部位 | 材中間部 | 材端部 スギ | 許容めり込み応力度 | 3.00 N/㎟ | 2.40 N/㎟ スギ(105mm角) | 柱・土台 | 26.3 kN | 21.1 kN スギ(120mm角) | 柱・土台 | 34.0 kN | 27.2 kN ヒノキ | 許容めり込み応力度 | 3.90 N/㎟ | 3.12 N/㎟ ヒノキ(105mm角) | 柱・土台 | 34.2 kN | 27.4 kN ヒノキ(120mm角) | 柱・土台 | 44.2 kN | 35.4 kN ※kN(キロニュートン)は力の単位です。1kN ≒ 約100kgf。 ■許容めり込み耐力を超える場合の対策 対策 → 効果・注意点 土台の断面を大きくする →接触面が広がり、めり込みにくくなる 土台の樹種を変える →ヒノキなど強い木を使えば耐力が上がる 柱断面を大きくする →土台の幅も合わせて調整が必要 柱を増やす →1本あたりの荷重を減らすことができる 柱を基礎に直接載せる →木の繊維方向で力を受けるため、より強くなる <まとめ> ・「めり込み」は木の粘り強さを活かした自然な変形現象 ・端部での力の集中や柱・土台のずれには注意 ・はみ出し15mm以内、変形3mm以下が安全の目安
次回は、梁の強度について、お話します。
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