NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ17

乾燥方法

木材の乾燥方法には「自然乾燥」と「人工乾燥」があります。

人工乾燥の仕上がりは、乾燥温度や温度調整の仕方に大きく左右されます。

1. 木材を乾かす2つの方法

木材は、そのままでは水分を多く含んでいて割れや変形を起こしやすいため、使う前に乾燥させる必要があります。


方法は大きく分けて2つです。

● 自然乾燥(天然乾燥)

・製材した柱や梁を積み上げ、風通しの良い屋外に6か月ほど置いて乾燥させる
・外側からゆっくり乾いていくため、表面に「干割れ」ができやすい
・部材が太いと中心まで乾かすのは難しいので、あらかじめ「背割り」(スリット状の切れ込み)を入れて内部の割れを防ぐこともある
・乾燥後の水分量(含水率)は20~25%ほど

メリット:木材の内部まで安定した性質を保ちやすい
デメリット:時間と土地が必要、割れを完全に防ぐのは困難


● 人工乾燥

・乾燥機で熱と湿度をコントロールして乾かす方法
・1週間~1か月ほどで乾燥でき、自然乾燥よりもスピーディー
・温度によって分類される
・高温乾燥:100℃以上
・中温乾燥:約80℃
・低温乾燥:50℃以下


■高温乾燥の特徴

・表面はきれいに乾いて割れも少ない
・内部の水分が抜けるときに「内部割れ」が起きやすい
・表面が固くなるので強度は高まる傾向にあるが、逆に不安定に壊れる場合もある


■自然乾燥との違い

・自然乾燥:割れは外側に出るが、強度にはほとんど影響なし

・高温乾燥:見た目はきれいでも、中に割れが潜んでいて、特に仕口・継手など伝統的な木組みでは弱点になることがある


2. 各乾燥法の比較(スギ柱材の例)

乾燥方法|温度(℃)|特徴・問題点|乾燥日数

自然乾燥|常温|広い土地と長期間が必要。割れ防止は難しい|約150日
除湿乾燥(低温)|35~50|操作は簡単だが時間がかかる|約28日
蒸気乾燥(中温)|70~80|標準的な方法。燃料の自由度あり|約14日
蒸気乾燥(高温)|100~120|速いが内部割れや色の変化が起きやすい|約5日
燻煙乾燥|60~90|燃料費は安いが品質管理が難しい|約14日
高周波+熱風乾燥|80~90|速く、仕上がりも均一。ただし大規模設備が必要|約3日
蒸煮・減圧処理|約120|割れ防止効果あり。大量ストック必要|半日~数日


3. 構造特性の違い

・自然乾燥材
割れは表面に出るが、貫通しなければ強度への影響は少ない。繊維方向に沿って割れるため、力の流れに素直。

・高温乾燥材
外観はきれいで加工しやすいが、内部に割れが潜む。繊維とは無関係に割れる場合があり、力を受けたときに予期せぬ破壊を起こすこともある。

■グラフで見ると、

・自然乾燥は安定して「粘り強い曲げ性能」
・高温乾燥は「強度は高めだが、破壊が急に起きやすい」


<まとめ>

・自然乾燥は時間と手間がかかるが、安定した性質を持ちやすい
・人工乾燥は早く仕上がるが、乾燥条件によっては内部割れや不安定な性質を生む
・実際の使い方(伝統的な木組みか、金物接合か)によって、どちらが適しているかを選ぶ必要がある

木材は「ただ乾かせばいい」わけではなく、乾燥の方法と仕上がりが、その後の構造的な強さや壊れ方に大きく関係してきます。

見た目がきれいでも、中に隠れた割れが構造の弱点になることがあるので、設計や施工では「乾燥法の違い」を理解しておくことが重要です。



次回は、木材の欠点について、お話しします。

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