NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ16

含水率

木材の「含水率」とは、その木がどれだけ水を含んでいるかを表す割合です。

・自由水:細胞のすき間に入っている水。重さには影響するが、木の性質にはあまり影響しない。
・結合水:細胞の壁に取り込まれている水。これが増減すると木の体積や強度に大きな影響が出る。

木材には次のような基準があります。

・全乾状態(0%):水分が完全にない状態
・繊維飽和点(約30%):細胞壁が水でいっぱいになった状態
・平衡含水率(日本では約15%):周囲の湿度とつり合った状態

木材は周囲の湿度に応じて吸水したり放水したりして、この「平衡含水率」に近づきます。


■乾燥材を使うメリット

木材を建物に使うときは、十分に乾燥させた「乾燥材」を選ぶのが理想です。理由は次のとおりです。

①腐朽を防げる
②シロアリの被害を減らせる
③狂いや割れを抑えられる
④クリープ変形が少なくなる

①②は「強度の維持(断面欠損防止)」、③④は「寸法の安定性」のために大切です。


■クリープ変形とは

「クリープ変形」とは、木材に荷重が長期間かかることで、たわみが時間とともに増えていく現象です。

例:ある梁の初期変形が1だとすると、

・乾燥材では約2~2.5倍
・未乾燥材では3.5~4倍弱

まで変形が進みます。

つまり、同じ荷重でも未乾燥材のほうが大きく変形してしまうのです。


■建築基準法での扱い

建築基準法では、木材の長期荷重による変形を考慮して、変形増大係数を2として設計することが定められています(平成12年告示1459号)


■実務での工夫

乾燥材を使えば安心ですが、もし未乾燥材をやむを得ず使う場合は、断面を大きくして初期変形を小さく抑える工夫が必要です。

例えば、初期変形を0.5に抑えれば、クリープ変形は0.5×3.5=1.75となり、乾燥材と同じくらいの変形量にできます。

ただし、その場合は「乾燥収縮」による割れや接合部のずれに対応できるよう、接合方法や仕上げを工夫しなければなりません。


<まとめ>

・含水率は木の性質を大きく左右する要因
・乾燥材を使うことで、腐れ・シロアリ・寸法の狂い・クリープ変形を防げる
・未乾燥材を使うときは断面を大きくする+収縮対策が必要



次回は、乾燥方法について、お話しします。

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