NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ11

層間変形角

1. 層間変形角とは?

地震や風などの水平力が建物に加わると、建物は少し傾いて変形する。

そのとき、階ごとの変形の度合いを角度で表したものが「層間変形角」

計算式は次のとおり:

層間変形角[


2. 各階の計算方法

■1階の層間変形角
1階の床は固定されていると考えるので、「2階床の変形量 ÷ 1階の高さ」で求める。

■2階の層間変形角
「屋根(桁梁)の変形量 − 2階床の変形量」を「2階の高さ」で割る。


3. 木造の制限値

・1981年以前: 1/60 rad 以下
・1981年以降: 1/120 rad 以下

さらに、建築基準法の規定では、

・中地震(震度6弱程度):1/120 rad 以下
・大地震(稀に起こる非常に大きな揺れ):1/30 rad 以下


4. 実験からわかっていること

伝統工法で建てられた建物は、大地震で層間変形角が 1/10 rad を超えても、倒壊しない場合がある。

つまり「大きく傾く=すぐ倒壊」ではなく、接合部(仕口)がしっかりしていれば、柱が鉛直荷重を支えて持ちこたえることもある。


5. 剛性(かたさ)の考え方

同じ力をかけたときの変形量が小さいほど剛性が高い

・1トンの力で1mmしか変形しない → 剛性が高い
・1トンの力で10mm変形する → 剛性が低い

同じ変形量に達するまでに必要な力が大きいほど剛性が高い

・10mm変形させるのに10トン必要 → 剛性が高い
・10mm変形させるのに1トンで済む → 剛性が低い


6. 耐震設計の基本理念

一次設計(中小地震)
→ 損傷しないことが目標(1/120 rad 以下)

二次設計(大地震)
→ 損傷しても倒壊せず、人命・財産を守ることが目標(1/30 rad 以下)


<まとめ>

「層間変形角」は、建物の揺れやすさ(かたさ)のものさし。
耐震設計は「揺れても倒れない建物」にするための工夫だといえます。



次回は、木造とその他構造について、お話します。

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