NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ10

強度と変形

ポイント

・曲げヤング係数は「たわみ(曲がりやすさ)」に関係する
・剛性は「強度と変形の関係」
・靭性は「壊れる前にどれくらい変形できるか」を表す


■ヤング係数とは?

物体に力を加えると、必ず少し変形します。
例えば梁の真ん中に荷重をかけると、梁は下にたわみます。

このたわみ量は次の要素で決まります

・荷重の大きさ
・梁の長さ(スパン)
・梁の断面形状(幅や高さ)
・材料そのものの性質

このうち「材料の性質」を表すのが ヤング係数 です。

・ヤング係数が大きい材料 → たわみにくい
・ヤング係数が小さい材料 → たわみやすい


■木材の等級分けとヤング係数

木材はヤング係数の大きさでランク分けされます。

等級  ヤング係数 (N/㎟) 代表値 (N/㎟)
E50  3,923~5,884   4,903
E70  5,884~7,845   6,865
E90  7,845~9,807   8,826
E110  9,807~11,768  11,787

例:ヤング係数が 6,500 N/㎟ の木材は E70 に分類されます。

同じ「E70」でも、下限に近い木材と上限に近い木材では 1.2~1.5倍の差 があります。
➡ 設計では、このバラつきを考慮して 安全率をとることが重要 です。


■剛性と靭性

・剛性(Stiffness)
→ 「力を加えたとき、どれくらい変形しにくいか」

同じ力を加えたとき、変形が小さい部材は剛性が高い。
剛性が高い部材は、一定の変形に達するまでに必要な力(耐力)も大きい。

・靭性(Ductility)
→ 「壊れるまでにどれくらい変形できるか」

靭性が高い部材 → 大きく変形してから壊れる(粘り強い壊れ方)。
靭性が低い部材 → 小さな変形ですぐに壊れる(脆性破壊)。


■ヤング係数とたわみの関係

・ヤング係数が高い → たわみが小さい
・ヤング係数が低い → たわみが大きい

つまり、ヤング係数は「部材の変形のしにくさ」を表す指標です。


■構造特性の比較(概念図イメージ)

強度(どれだけの荷重に耐えられるか)と変形の関係をグラフで表すと、次のように比較できます。

性質      ①      ②
ヤング係数  K1   >  K2
強度     P1   >  P2
靭性     δ1   <  δ2
剛性     P1'/δ'  >  P2'/δ'


<まとめ>

・ヤング係数=たわみにくさ
・剛性=変形に対する強さ
・靭性=壊れるまでの粘り強さ

と覚えると理解しやすいです。



次回は、層間変形角について、お話します。

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