NSJ住宅性能研究所

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木構造シリーズ4

木造の許容応力度

1. 許容応力度とは?

建物の柱や梁などの部材は、外から力(荷重)が加わると変形します。

短い時間なら力を取り除けば元に戻りますが、長い時間かかり続けると元に戻りにくくなり、最終的には壊れてしまうこともあります。

そこで建築基準法では「部材にどのくらいの力までなら安全に耐えられるか」を決めていて、その基準を 「許容応力度」 と呼びます。

これは「材料の強さ(基準強度)」に「安全率(余裕)」を掛け算して求めます。


2. 荷重の種類

荷重は、かかり続ける時間の長さで次のように分けられます。

■長期荷重(ずっとかかり続ける)

建物の重さ、人や家具の重さ、土圧や水圧など。想定期間は「50年」

例:建物そのものの重量、地下室の土圧、プールの水の重さ


■短期荷重(めったに起こらない)

地震や台風のように短時間でかかる力。想定時間は「10分」

例:地震力、風圧力

■中長期荷重

雪が代表例。
 - 多雪地域(積雪1m以上) → 3か月程度かかり続ける
 - 積雪1m未満の地域 → 3日程度かかり続ける


3. 許容応力度の考え方

木材の強さを「基準強度 F」とすると、安全率を考慮して次のように決められます。

■長期荷重(50年)
 許容値:F × 1.10 ÷ 3
 (安全率は1.1/3)

■多雪地域の雪荷重(3か月)
 許容値:長期許容値 × 1.3
 (安全率は1.43/3)

■短期荷重(地震・台風/10分)
 許容値:F × 2.0 ÷ 3
 (安全率は2/3)

■少雪地域の雪荷重(3日)
 許容値:短期許容値 × 0.8
 (安全率は1.6/3)

特に「大地震(ごく稀に起こる)」では、人命を守ることを最優先にして、材料が持っている本来の強さ(基準強度)まで使ってよいという考え方になっています。


4. 法律での位置づけ

・材料の許容応力度:建築基準法 施行令 第89条
・材料強度:施行令 第95条、告示1452号
・特殊なケース(めり込みなど):告示1024号


<まとめ>

・許容応力度=「これ以上の力をかけたら危ないよ」という目安
・荷重のかかり方(長期/短期/雪など)によって基準が変わる
・大地震のときは「倒壊しないこと」が最優先



次回は、鉛直荷重について、お話します。

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