NSJ住宅性能研究所

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県産木材シリーズ10

県産材と建築士

1. 千葉の林業が抱える問題

・伐り時を迎えた森:
戦後に植えられた木が60年経ち、今が利用のタイミング。
・所有が細分化:
山を持っている人は多いけれど、一人あたりの面積が小さい。
・伐り出せない森:
林道(木を運び出す道)が少なく、そもそも森林面積も少ない。
・加工施設の不足:
木を乾かす施設や製材所が足りない。

→ 木があっても材料として供給できない。

国の分類では「消費県」(使う方が多い)とされ、林業に向いた補助が少ないため、林業として自立しにくい。


2. 設計の現場で起こる困りごと

・「千葉の木を使いたい」と指定しても、納期が間に合わない
・見積もりでは、県産材が高額に計上される
・予算削減(VE)の対象にされ、県産材が削られてしまう
・お客さんからJAS認証材を求められても、対応できないケースあり
・羽目板に欠点(節や割れ)が多い
・どこに相談すればいいか分からず、交渉が難しい

→ 「せっかく指定したのに使えない」という経験から、設計者の意欲が下がる。


3. これまでの流通モデル

・建築主や設計者が「県産材を使いたい」と希望
・工務店が発注するが、納期・数量・価格・認証材などで困難
・市場を通すと経費が上乗せされる

→結果的に輸入材や他県材を使うことに
→千葉の木は「設計で強く指定しないと使えない」


4. 解決のポイント

・建築主が意義を理解していること
・契約上、県産材が必須になること
・生産者が見える化され、計画段階から納期や数量を協議できること
・価格と数量を明確化しておくこと
・減額の対象にならないようにすること


5. 設計時に必要な条件

・必要なおおよその数量を明示できる
・納期を調整できる
・木材の等級や品質を明確にできる
・設計で指定する際は、「設計価格」ではなく実際の納入価格を示す
・生産時期を守り、工期変更で勝手に他に流さない
・すべての材に認証をつける

→ そのためには「県産材に詳しい人材」が必要。


6. こんな仕組みがあったら便利

・設計者・生産者との協議記録
・m³ではなく材料単価や面積単価で提示
・計画時点での数量相談
・特殊な部材に対する代替案
・仕上げ材のサンプル提示


7. 新しい流通モデルのイメージ

・設計段階で「数量・納期・卸値」を明確化
・生産者と事前に相談 → 工事業者が安心して発注できる

→結果、県産材をきちんと納入できる


8. 建築士だからできること

・千葉県の木は生産量が少なく、大量供給モデルは不可能
・製材所や乾燥機も少ないため、「安定した少量利用モデル」が現実的
・大手ゼネコン任せではなく、建築士が仕様を指定して生産者とつなぐことが重要


9. 県産木材を使うことのよさ

・千葉の木を使うことで地域貢献ができる
・地元経済の循環を支える
・里山環境や地場産業を守ることにつながる


<まとめ>

千葉の木は「たくさん安く」使うことは難しいけれど、設計段階から建築家が生産者と協力することで、確実に・計画的に使える仕組みをつくることができる。

そして、それが地域や環境の持続可能性につながるのです。



次回は、地域材を活用したスギ圧縮材家具について、お話します。

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