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多層木造の課題とゼネコンの役割 木造建築を何層も重ねた「多層木造ビル」を実現するためには、多くの課題を解決する必要があります。 1. 構造の課題 ・地震や強風への対応 高い建物になるほど、地震や風の力が大きくかかります。 そのため、強力な柱や梁(はり)でできた「骨組み」が必要です。 ・新しい構造の研究 「貫(ぬき)構造」を応用したラーメン構造や、厚さ20cmもある特別な合板を使う工法が開発されています。 これらを安全に使えるかを調べるために、接合部の実験や、地震時の壊れ方の確認が行われます。 ・免震技術の難しさ 地震の揺れを減らす「免震装置」を使う場合、軽い木造建築でしかも多層のものに使った例はほとんどなく、未知の部分が多いです。
2. 防火・耐火の課題 ・長時間火に耐える技術 4階以上の建物では「2時間耐火性能」が必要です。 しかし、その多くは特許技術であり、自由に使えません。 ・接合部の耐火実験 柱や梁などの部材ごとに認定を取れていても、実際の「つなぎ目」が火に耐えられるかは実験で確認する必要があります。 3. その他の課題 ・外壁やサッシの取り付け 木造の骨組みにビル用サッシ(窓枠)をどう固定するか、その耐久性(長期間の変形など)を確認しなければなりません。 ・屋上防水や劣化対策 長期間の耐久性を確保するために、防水や外壁仕上げの工法を研究する必要があります。 ・施工方法の検討 新しい技術をどう現場で施工するかも課題です。 4. ゼネコンの役割 多層木造はまだ新しい分野なので、調べるべきことが非常に多岐にわたります。 そのため、総合的に技術や施工を管理できるゼネコン(大手建設会社)の力が重要です。 実際、現在はゼネコン主導で多層木造ビルの建設が進んでいます。 5. 今後の展望 将来的には、アトリエ系の設計事務所や中小の建設会社でも取り組めるようにするため、「標準的な納まり集」(部材の取り付け方法や詳細図のまとめ)が求められています。 <まとめ> 多層木造は「新しい挑戦」であり、構造・防火・耐久性などあらゆる課題をクリアする必要があります。 そのためにゼネコンが大きな役割を果たしており、今後は中小企業でも取り組めるように仕組みづくりが進められています。
次回は、中大規模木造建築物の構法や用途の広がりについて、お話します。
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