NSJ住宅性能研究所

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2025年4月 建築基準法改正 ~見直し内容にフォーカス~38

多層の木造建築物

多層木造建築の流れと技術発展


1. 日本での多層木造の始まり

木造建築は昔から2〜3階建ての住宅が中心でした。

しかし「耐火性能を満たした木造部材」が開発され、国から認められたことで、より高い建物を木造で建てられるようになりました。

・4階建て → 1時間耐火構造が必要
・5〜9階建て → 1.5時間耐火構造が必要

地方では、1階を店舗や事務所にして、上の階を住宅とする「4階建て木造ビル」が登場しています。

1階を鉄筋コンクリート造(RC造)にして、上の4階を木造とする組み合わせも多く、地方都市の需要を満たしています。



2. 海外での木造高層ビル

海外では日本より早く「高層木造」が広まりました。

・ロンドン:CLT(直交集成板)を使った9階建て集合住宅
・ウィーン:「HOHOプロジェクト」24階建て(コア部分以外は木造)
・ノルウェー:ホテルが一時「世界一高い木造建築」として注目

多くは「コア部分(エレベーターや階段)をRC造」にし、それ以外を木造にしていますが、CLT耐力壁を使った純木造の高層建築も実現しています。


3. 日本での最新事例

海外の流れを受けて、日本でも木造高層化が進んでいます。

・ポートプラス:純木造11階建ての研修施設(木造ラーメン構造を採用)
・野村不動産 溜池山王ビル:木造混構造のオフィスビル
・ジューテック本社ビル:木造混構造

従来の「木造=低層住宅」というイメージから大きく変化しています。


4. 耐火技術の進歩

木造高層化を支えているのは「耐火部材」の進歩です。

・2時間耐火の柱・梁が開発 → 多層建築が可能に
・3時間耐火の部材も登場 → 技術的には木造でも高さ制限がなくなりつつある

つまり、耐火性能の基準を満たす部材さえあれば、木造でも超高層ビルを建てられる時代になってきています。

<まとめ>

耐火技術の進化が木造建築を高層化へ導き、世界的に木の高層ビル競争が進んでいる。

日本もその流れに乗りつつあります。



次回は、多層木造の課題について、お話します。

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