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2025年4月 建築基準法改正 ~見直し内容にフォーカス~37

第一次大型木造ブーム

■大型木造建築の歴史とブームの流れ


1. 第一次大型木造ブーム(1980年代後半〜1990年代)

戦後の木造建築といえば、ほとんどが住宅規模の小さな建物でした。

しかし1987年ごろから大きな転機がありました。

① 燃えしろ設計の導入(木が燃えても一定時間強度を保てることを前提にした設計法)

② 壁量設計の一部免除(構造計算を行えば、従来の壁の量に関する制約を緩和できる仕組み)

③ 大断面集成材のJAS規格化(大きな木材を使った建築が認められた)

これらの制度が整ったことで、大型の木造建築が可能になりました。

当時のテーマは「大スパン」でした。

つまり、柱を少なくして広い空間をつくることです。



実際に次のような建物が登場しました。

・瀬戸大橋博覧会空海ドーム(1988年)
・出雲ドーム(1992年)
・信州やまびこドーム(1993年)
・長野オリンピック エムウェーブ(1996年)
・大館樹海ドーム(1997年)

木材は軽く、屋根を支える大きな構造に向いているため、アリーナやドーム建築で注目されました。

この時代は多層木造(4階建て以上の木造建築)は不可能でした。

理由は「耐火建築の壁」です。

法律で4階以上は耐火建築が求められますが、当時は木を使って耐火性能を確保する方法がなかったからです。


2. 2000年の法改正と第二次木造ブーム

状況を変えたのは2000年の建築基準法改正でした。

この改正は「性能規定化」と呼ばれ、材料よりも性能を重視する考え方が導入されました。

「性能を満たせば、木でも耐火部材として使える」
という道が開かれたのです。

その後、研究・技術開発が進み、木材でも燃えにくく強度を保てる「木質耐火部材」が次々と登場しました。

これによって、木造でも高層や多層建築が可能になりました。


3. 現代の大型木造建築

こうした流れを受けて、現在のブームでは次の2点が大きなテーマになっています。

・多層木造(マンションやオフィスビルなど中高層の木造建築)
・多様な構造形式(有名建築家による新しいデザインや構造の挑戦)

さらに、木造は環境面でも二酸化炭素を吸収・固定する効果があり、脱炭素社会に貢献する建材としても評価されています。


■まとめ

1980年代後半のブームは「大スパン」がキーワード(ドームやアリーナ中心)
     ⇓
2000年以降は「耐火性能を備えた木材」が開発され、「多層木造」が可能に
     ⇓
現在のブームは「多層化」+「建築家による多様なデザイン」+「環境貢献」

という流れになります。



次回は、多層木造建築物について、お話します。

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