NSJ住宅性能研究所

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2025年4月 建築基準法改正 ~見直し内容にフォーカス~29

重量増加による影響(必要壁量規定)

重量の増加による影響と必要壁量の規定(建築基準法施行令第46条第4項関連)


1. 背景

ZEH(ゼッチ)レベルなど、省エネ性能が高い住宅では、以下のような理由で建物重量が増加します。

・厚い断熱材の使用
・トリプルガラスなど重量のある窓
・太陽光パネルの設置
 など

これまでは壁量計算で「軽い屋根」「重い屋根」といった分類を使っていましたが、新しい計算方法ではこの分類は廃止され、許容応力度計算で求めた地震力を壁量に換算する方式に変わっています。


2. 必要壁量の計算式

床面積あたりの必要壁量は、次の式で求めます。

Lw=(Ai⋅Co⋅Σwi)/(0.0196⋅Afi)

Ai:層せん断力分布係数
​Ai=1+1/ai×2T/(1+3T)

T:固有周期(秒)
T=0.03h​

ai:対象階が支える荷重の割合
(その階より上の固定荷重+積載荷重)÷(建物全体の固定荷重+積載荷重)

h:建物の高さ(m)

Co:標準せん断力係数(通常は0.2、指定区域では0.3)

Σwi:その階が地震時に負担する固定荷重+積載荷重(kN)

Afi:その階の床面積(㎡)



3. 計算例

例えば、次の条件の2階建て1階部分で計算します。

・屋根:スレート
・外壁:サイディング
・内壁:せっこうボード
・積雪なし
・太陽光パネル:屋根面の半分
・断熱材:天井・壁に使用
・開口部:トリプルガラス
・Co = 0.2
・Ai = 1.0
・床面積あたり荷重 wi は想定値を使用
・階高係数 a = 1.5(1階の階高の半分より上を1階壁が負担すると仮定)

計算:

必要壁量=必要壁量=
{1.0×0.2×(1000+700a+200a+260/2+100+90a+50a+610+600)/1000}/0.0196

a=1.5を代入すると、
=40.81 cm/㎡ → 41 cm/㎡

<比較>

・品確法 耐震等級1(軽い屋根):36cm/㎡
・品確法 耐震等級1(重い屋根):46cm/㎡

この結果(41cm/㎡)は、軽い屋根より多く、重い屋根より少ない値で、ZEH仕様による重量増を反映した数値です。


4.実務での活用

この計算はExcelシートが整備されており、プルダウン選択で必要壁量を自動計算できます。

計算が不要な場合も、階高ごとの早見表があり、以下の仕様区分に応じて参照可能です。

<仕様区分>

・仕様①:1階階高 3.2mまで、2階階高 3.2mまで
・仕様②:1階階高 3.0mまで、2階階高 2.9mまで
・仕様③:1階階高 2.9mまで、2階階高 2.8mまで

※仕様①を超える階高の場合は、表計算ツールでの計算が必要です。



次回は、存在壁量に加算できる耐力壁等の見直しについて、お話します。

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