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ZEHレベルの省エネ住宅は「重い家」――だから耐力壁も増やす必要がある 1. なぜ重くなるのか? ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やそれに近い高断熱・高気密住宅では、次の3つが主な理由で一般的な木造住宅より重量が大きくなります。 <原因> <具体例> <重量増のイメージ> ①太陽光 屋根に20kg/㎡程度 屋根荷重が約+10% パネル を載せる。南面が中心 でも屋根全体に影響。 ②厚い 屋根・天井・外壁の 軽量材が多いが、 断熱材 断熱層が増える。 やはり増量 ③重い トリプルガラスや 開口部まわりの サッシ 二重サッシで開口 固定荷重アップ 部が重くなる。 結果 住宅全体が重くなり、 1⃣鉛直荷重(自重)が増す → 構造材にかかる常時荷重がアップ 2⃣水平荷重(地震力)も増す → 耐力壁で受ける力が大きくなる 2. 国交省の対応 ― 壁量基準の見直し案(2023年12月) 従来の建築基準法(以下「基準法」)が想定していた固定荷重(家の重さ)が 「軽すぎる」 ため、ZEHクラスの実重量を反映するよう 必要壁量(耐力壁の長さ)を再計算。 議論は「建築構造基準委員会」「構造関係規定のあり方検討会」などで進行中。
3. どのくらい壁を増やす必要があるのか? 3-1. 基準法 vs. 品確法(住宅の品質確保促進法) 下表は、基準法が求める壁量と、品確法で 耐震等級2 を 1.25 で割り戻して「最低基準」扱いにした壁量 を比較したものです。 ※カッコ内は「品確法 ÷ 基準法」の比率 (単位:cm/㎡) 部位 基準法 軽い 基準法 重い 品確法 軽い 品確法 重い 平屋 11 15 14 (1.27) 20 (1.33) 2階建 15 21 19 (1.27) 27 (1.29) の2階 2階建 29 33 36 (1.24) 46 (1.39) の1階 ※25〜40% 多い→品確法はもともと重い家を想定 近年は 「荷重想定の差」 が主因と説明される(昔は「負担率 2/3」説だった) 3-2. 想定している固定荷重の違い (単位:㎡あたりkg) 部位 基準法 品確法 備考 軽い/重い 軽い/重い 屋根 60 / 90 95 / 130 太陽光パネル分が加算 外壁 60 / 60 75 / 120 厚い断熱材・仕上げ 内壁 60 / 60 20 / 20 (計算モデルの差) 床 50 / 50 60 / 60 仕様の違い 床積載 60 / 60 60 / 60 どちらも同じ 4. ZEH対応の今後 ZEH重量≒品確法の「重い」よりさらに加算 太陽光、断熱、トリプルガラスをフルで盛り込むと、品確法の固定荷重+α になる。 新しい壁量基準が施行されれば、確認申請図面の壁倍率や壁配置のチェックが厳しくなる可能性大。 工務店・設計者は 早めに自社仕様の「想定固定荷重」 を見直し、 壁量計算ソフトの設定 をアップデートしておくと安心。 【まとめ】 ZEHなど高性能住宅は「重い家」 重い分だけ地震力も大きくなり、耐力壁を増量 する必要がある。 国はそれを織り込んだ 新しい壁量基準 を準備中。 実務者は設計初期から正しい固定荷重設定と壁量確保を意識しましょう。
次回は、重量増加による影響(必要壁量規定)について、お話します。
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