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2025年4月 建築基準法改正 ~見直し内容にフォーカス~24

住宅市場の変化

日本では2008年から人口が減り始め、2023年ごろからは世帯数(家族の数)も減少すると予測されています。

住宅市場では「空き家」が今後どんどん増えていくと指摘されています。

「2025年問題」と呼ばれるように、団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になり、その10年後の2035年ごろには、その世代が住んでいた住宅が中古住宅として市場に多く出回ると考えられています。



空き家の現状について見てみましょう。

2018年の総務省の「住宅・土地統計調査」によると、日本全国に849万戸の空き家があり、全住宅の13.6%にあたります。

このうち、「売却用」「賃貸用」「別荘」など目的がはっきりしている空き家を除いた、「どう使うか決まっていない空き家(その他の空き家)」は、349万戸もあるとされています。


さらに深刻なのは、「これから空き家になる可能性が高い住宅(空き家予備軍)」の数です。

都市計画の専門家である野澤千絵氏は、65歳以上の高齢者だけが住んでいる戸建て住宅を「空き家予備軍」と定義し、その数を調査しました。

その結果、2018年時点で全国に約829万戸あるとされています。

前回の2013年の調査よりも109万戸増えており、年間平均で約21.8万戸ずつ増えている計算になります。

戸建て住宅全体の中で空き家予備軍が占める割合は、全国平均で約28.8%、つまり4軒に1軒以上が将来的に空き家になる可能性があるということです。

関東地方の首都圏でも、都心から20~30km圏内の自治体でさえ、空き家予備軍の割合が25%を超えるケースがあります。

つまり、「空き家問題=地方の問題」とは限らず、都市近郊や身近な地域でも深刻な問題となりつつあるのです。

実際に空き家を所有している人がどう活用するかという意向(アンケート結果)を見ると、「売りたい」と考えている人よりも、「今のままでいい」「特に決めていない」「どうしていいかわからない」と答える人が多いという現状があります。


野澤氏はこのように、相続したあと「とりあえずそのまま放置」されている空き家を「問題先送り空き家」と呼んでいます。

このタイプの空き家は、所有者や地域の人たち、自治体もどうすればいいか分からずに放置されやすく、時間が経つほどに建物の傷みや所有者の代替わりによって、さらに問題が悪化していくとされています。

これは、空き家問題の根本的な原因のひとつです。



次回は、空き家の活用と、建築士に求められる新たな役割について、お話します。

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