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耐力壁は、地震や風などの水平力に対して建物を支える重要な構造要素です。 高さや幅などの寸法は、耐力壁としての性能に直接関係するため、一定のルールが設けられています。 【主な寸法規定】 (告示第1100号、技術的助言:令和6年国住指第147号) ・筋かい耐力壁 高さが 3.2mを超える場合は、耐力性能(壁倍率)を割り引いて評価する必要があります。 ・準耐力壁(面材を使用した大壁) 面材が上下の梁間の8割以上を覆う大壁の場合は、幅900mm以上とすることが求められます。 ・垂れ壁・腰壁(開口部のような大壁) 面材の高さが360mm以上で、開口部のような壁の場合は、幅900mm以上2000mm以下とする必要があります。 ※これらの規定は、非住宅用途で階高の高い木造建築が増えてきた背景を踏まえて、2025年度から新たに設けられたものです。
【面材耐力壁に寸法制限がない理由】 一方で、一般的な面材耐力壁(合板や耐力パネルを用いた壁)には、建築基準法上では高さや幅の明確な制限はありません。 これは、以下の理由から、極端に不適切な寸法の設計が行われることが少ないためです。 ・一般住宅では、柱の間隔(モジュール)や階高がある程度一定であるため。 ・許容応力度設計を行う場合、「2017年版 木造軸組構法住宅の許容応力度設計」では、幅の最小600mm・アスペクト比(高さ÷幅)は5以下とされており、設計上の目安があるため。 ・面材壁は筋かい壁に比べて、寸法変化による影響が小さいため。 たとえば、高さ2.8mを基準とした大壁面材耐力壁では、高さ1.8~4.2mの範囲で壁倍率の変化は上下で2.5%(全体で5%)以内に収まることが、令和元年度の基整促事業「木造建築物の耐力壁にかかる基準の合理化などに関する検討」で示されています。 また、幅についても住宅の標準モジュールである910mmを基準とした場合、 600~1820mmの範囲で上下で2.5%(全体で5%)以内の変化に収まることが確認されています。 【真壁仕様について】 真壁仕様の耐力壁(柱が露出し、面材が柱の間に納まるタイプ)では、 筋かいと似た構造の影響もあるため、大壁よりも寸法の許容範囲は狭くなるとされています(出典:令和3年度 基整促事業「真壁の合理化に関する検討」) 【まとめ】 法律上、面材耐力壁の寸法には明確な規定がない場合もありますが、 設計上は高さや幅の妥当性を検討し、性能に影響が出ると判断される場合は、壁倍率の低減などの配慮が必要です。 また、大臣認定を受けた耐力壁を使用する際は、その認定内容に使用条件や寸法範囲が定められていることがあるため、必ず確認しましょう。
次回は、N値計算の例(出隅+高倍率耐力壁)をご紹介します。
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