今から40年以上も前のことです。私が大学在学中に、父親が建築業をやめて金融業を始めました。当時はコンピューターなどない時代。電卓を叩いて日数計算・利息計算して、台帳管理も手書きでした。私は大学で計算機科学科に所属しており、プログラミングの勉強をしていましたので、何か良い仕組みを作れそうな予感がしました。そんなとき、(私が大学四年生の頃)パーソナルコンピューター NEC PC-8001が発売されたのです。
私はそれを手に取った日のことを昨日のことのように覚えています。ITに新たな可能性を感じた私は、自分で貸金システムを作りました。BASICというプログラミング言語で顧客管理/入金管理/返済明細書印刷をできるようにしたのです。アルファベットも分からない父でしたが、かんたん操作に大いに喜び、私の最初の「お客様」になったのでした。
その後、自作の貸金システムは、1995年「融資管理システム」として販売を開始。ユーザーは個人から法人まで様々です。業者様ごとに異なるニーズに一つのシステムで対応できるようにする、すなわち「パッケージ」のあるべき姿の追及が始まりました。1981年、私は大手国内メーカーに就職。顧客システム開発を数多く経験し、各種のトラブルにも対応。これらの経験をもとに、品質向上・トラブル防止のために私が開発した業務システム開発ツール(QuiQpro)は全社標準となり、現在も「INTERFRM」と名前を変えて利用されています。
通常、社内ツールの寿命は長くても5年と言われるなかで、三十年以上の時の経過に耐えうるシステムを作り出せたのはエンジニア冥利に尽きます。一つのシステムで「多様性」を実現すること。それが私のエンジニアとしての信念であり、その情熱の原点を与えてくれたのは、あの日の父との思い出なのです。
2011年、私は中小企業に有益なIT導入を目指して有限会社トコシエを設立。中小企業向けのITプラットフォームとして「コラボプラザ」を立ち上げました。目指すのは、ITの力を駆使して人々のお困りごとを解決すること。さらに言えば、システムの力で人と人が繋がることは、新たなビジネスを生み出す可能性を秘めています。
そんなコラボプラザも、一昨年に10周年を迎えました。時代とともに技術は進化し、社会の姿は変わっていきます。しかし私のなかの「情熱」は、貸金管理システムを作り上げたあの日のまま変わりません。お客様の経営課題に対して、ITプランナーとしてIT処方箋(ツール+専門家)を出し、IT導入することでお客様が笑顔になる。そこに私の喜びがあります。
多くの仲間の支えがあり今の私があります。これからも新たな出会いに感謝しつつ、たゆまぬ研鑽を続けてまいります。今後とも、変わらぬご指導とご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。