NSJ住宅性能研究所

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鉛直荷重と局部荷重(木造住宅)シリーズ11

柱の座屈強度2★

◎柱の座屈強度とは?木造住宅で大きな荷重を受ける柱を安全に設計する考え方

木造住宅の柱は、屋根や床の重さを支える重要な部材です。

柱は単純に「太ければ安全」というものではありません。

特に注意したいのが、座屈です。

座屈とは、柱に上から大きな力がかかったときに、柱がまっすぐ縮むのではなく、横に曲がるように変形してしまう現象です。

イメージとしては、細長い定規を両端から押したときに、途中でぐにゃっと曲がるような状態です。

木造住宅の柱も、長さに対して細すぎると、圧縮力に耐えきれずに座屈しやすくなります。


■柱の長さには建築基準法上の制限がある

柱の長さ、つまり上下の横架材に挟まれた距離については、建築基準法施行令43条1項に規定があります。

これは簡単にいうと、

柱の太さに対して、柱が長すぎてはいけない

というルールです。

たとえば、同じ105mm角の柱でも、階高が高くなればなるほど、柱は細長くなります。

細長くなるほど、上からの力に対して横に曲がりやすくなります。

そのため、柱の断面寸法と柱の長さのバランスを見ることが重要になります。


■座屈を考えるうえで重要な「細長比」とは?

柱の座屈を考えるときに重要になるのが、細長比です。

細長比とは、簡単にいうと、

柱がどれくらい細長いかを表す指標

です。

柱が短くて太ければ、細長比は小さくなります。

反対に、柱が長くて細ければ、細長比は大きくなります。

木造住宅の構造計算では、この細長比が大きくなりすぎないように確認します。

細長比の制限は150以下とされています。

つまり、柱がどれだけ圧縮に強い木材であっても、細長すぎる場合には、そのままの強度を期待することはできません。


■有効細長比が大きくなると柱の圧縮強度は低下する

座屈の計算では、有効細長比という考え方を使います。

有効細長比が小さい柱は、座屈しにくい柱です。

一方、有効細長比が大きい柱は、座屈しやすい柱です。

ポイントは次のとおりです。

・有効細長比が30以下の場合、座屈による強度低下は考えない
・有効細長比が30を超えると、座屈による強度低下を考える
・有効細長比が80になると、低減係数はおおむね0.5になる
 ⇒柱の圧縮耐力を半分程度に見て評価することになる

ここで重要なのは、座屈低減係数は、柱そのものが弱くなるというよりも、座屈の影響を考慮して圧縮強度を小さく見積もるための係数だという点です。

つまり、設計上は、

「この柱は木材としては圧縮に強いけれど、細長いので、その強さをそのまま使うのは危ない」

と考えるわけです。


■座屈低減係数とは?圧縮強度を安全側に小さく見るための係数

座屈低減係数は、柱の圧縮強度を評価するときに使う係数です。

木材には、樹種や等級ごとに基準となる圧縮強度があります。

しかし、柱が細長い場合、その基準強度をそのまま使ってしまうと危険です。

そこで、柱の細長さに応じて圧縮強度を低減します。

たとえば、ある木材の圧縮強度が十分に高くても、柱が長くて座屈しやすい場合には、構造計算上はその強度を小さく見ます。

これが、座屈低減係数の役割です。

材料の強さだけでなく、使われ方によって実際に発揮できる力は変わる
ということです。

同じ材料でも、短い柱として使うのと、長い柱として使うのでは、安全性の評価が変わります。


■長期荷重と短期荷重で許容応力度の考え方が変わる

柱の座屈強度を確認するときには、許容応力度を使います。

許容応力度とは、簡単にいうと、

安全を見込んで、部材に許してよい応力度

のことです。

木造住宅では、荷重の種類によって考え方が変わります。

●長期荷重は、建物の自重や積載荷重のように、常にかかり続ける力です。

●短期荷重は、地震力や風圧力のように、一時的にかかる力です。

座屈の許容応力度も、曲げと同じように、長期と短期で基準強度に対する比率を変えて評価します。

つまり、柱の安全確認では、

「どのような力が、どれくらいの時間、柱に作用するのか」

を考える必要があります。


■吹き抜けの柱は軸力と曲げの複合応力に注意する

通常の柱は、主に上からの圧縮力を負担します。

しかし、吹き抜け部分や大きな開口部の近くにある柱では、圧縮力だけでなく、曲げの力も加わることがあります。

たとえば、吹き抜けに面した柱に風圧力がかかると、柱は横から押されます。

このとき柱には、上から押される力と、横から曲げられる力が同時に作用します。

この状態を、軸力と曲げの複合応力といいます。

複合応力がかかる柱では、圧縮だけを確認しても不十分です。

圧縮の検定比と曲げの検定比を組み合わせて、全体として安全かどうかを確認します。

木材の複合応力については十分な実験データがそろっているとは言い切れないため、実務上は、各検定比の合計が1.0以下になるように確認する考え方が採用されています。


■風圧力を受ける柱はどこまでの範囲を負担するのかを整理する

柱は、鉛直荷重だけでなく、外壁にかかる風圧力も受けることがあります。

基本的には、柱が負担する範囲は、隣の柱との中間までと考えます。

たとえば、柱と柱の間隔が910mmであれば、その柱は左右の中間までの範囲を受け持つイメージです。

ただし、ここで注意したいのが、間柱に風圧力を負担させるのかどうかです。

間柱が外壁面材を支えている場合、風圧力の一部を間柱に負担させる考え方もあります。

一方で、外壁面材の固定方法や納まりによっては、主要な柱で負担させる整理が必要になることもあります。

つまり、風圧力の検討では、単に柱の間隔を見るだけでなく、

・外壁面材がどのように固定されているか
・間柱を構造上どのように扱うか

を整理しておくことが大切です。


■実際の柱はどう壊れるのか

柱の座屈による損傷は、柱が単純に押しつぶされるというよりも、柱が横方向に変形し、その結果として割れや破壊が生じるような形になります。

特に、細長い柱や、曲げを受ける柱、欠き込みがある柱では注意が必要です。

構造計算上は数式で安全性を確認しますが、実際の損傷を見ると、座屈が単なる理論上の現象ではなく、実際の木造住宅でも起こり得る重要な破壊モードであることが分かります。



■木造住宅の柱の座屈強度で確認すべきポイント

木造住宅の柱の座屈強度を確認するときは、次のポイントが重要です。

●1. 柱の長さと断面寸法のバランス

柱が長くなるほど座屈しやすくなります。

そのため、柱の小径と横架材間距離の関係を確認する必要があります。

●2. 細長比が大きくなりすぎていないか

細長比は、柱の座屈しやすさを表す重要な指標です。

細長比が大きい場合は、圧縮強度をそのまま使うことはできません。

●3. 座屈低減係数による強度低下

有効細長比が大きくなると、座屈低減係数によって圧縮強度を小さく評価します。

特に、有効細長比が80程度になると、耐力を大きく低減して考える必要があります。

●4. 吹き抜け柱などの曲げを受ける柱

吹き抜けや大きな開口部の近くにある柱では、軸力と曲げを同時に受けることがあります。

この場合は、圧縮だけでなく、曲げとの複合応力として確認します。

●5. 風圧力の負担範囲

外壁にかかる風圧力を、どの柱がどの範囲まで負担するのかを整理する必要があります。

間柱を構造上どのように扱うかも重要です。

<まとめ>柱の座屈強度は「木材の強さ」だけでなく「柱の使われ方」で決まる

柱の座屈強度を考えるうえで大切なのは、木材そのものの圧縮強度だけではありません。

同じ木材でも、柱が短ければ座屈しにくく、長ければ座屈しやすくなります。

また、吹き抜けの柱のように曲げを受ける場合には、圧縮だけでなく複合応力として安全性を確認する必要があります。

つまり、柱の安全性は、

・材料の強さ
・柱の長さ
・断面寸法
・荷重のかかり方
・外壁や間柱との関係

によって決まります。

木造住宅の構造設計では、柱を単なる「縦の部材」として見るのではなく、建物全体の力の流れの中で、どの柱にどのような力が作用するのかを丁寧に確認することが重要です。


次回は、めり込みの検討について、お話します。

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