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■横架材に断面欠損がある場合の検定方法|断面係数と断面二次モーメントの低減が重要 木造住宅の構造設計では、梁や桁などの横架材が安全に荷重を支えられるかを確認する必要があります。 特に注意したいのが、横架材に断面欠損がある場合です。 断面欠損とは、梁や桁の一部が欠けていたり、加工によって断面が小さくなっていたりする状態をいいます。 たとえば、仕口・継手、欠き込み、配管用の穴、金物の取り付けなどによって、部材の一部が削られることがあります。 断面欠損がある横架材を、欠損のない部材と同じように計算してしまうと、実際よりも安全側でない評価になるおそれがあります。 そのため、構造計算では、欠損による性能低下を考慮して検定することが重要です。 ■横架材の断面欠損とは? 横架材とは、木造住宅における梁・桁・胴差など、横方向に架けられる構造部材のことです。 横架材は、床や屋根の荷重を受け、柱や壁へ力を伝える重要な部材です。 そのため、横架材に欠損があると、次のような影響が出る可能性があります。 ・曲げに対する強さが低下する ・せん断に対する安全性が低下する ・たわみが大きくなりやすい ・接合部付近で応力が集中しやすい つまり、断面欠損がある横架材は、元の断面寸法どおりの性能を持っているとは考えにくいということです。
■断面欠損がある場合は「断面係数」を低減する 横架材の曲げ強度を検定するときに重要になるのが、断面係数です。 断面係数とは、簡単にいうと、部材が曲げに対してどれくらい抵抗できるかを表す数値です。 梁に曲げモーメントが生じたとき、その部材が安全に耐えられるかを確認するために使います。 横架材に欠き込みなどの断面欠損がある場合、実際に有効な断面は小さくなります。 そのため、強度の検定では、欠損を考慮して断面係数を低減する必要があります。 「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)」、いわゆるグレー本では、欠損のある横架材の断面係数について、参考表として整理されています。 ■たわみ検定では「断面二次モーメント」を低減する 横架材の検定では、強度だけでなく、たわみの確認も重要です。 たとえ梁が破壊しなくても、たわみが大きくなると、床の不陸、建具の不具合、仕上げ材の割れなどにつながる可能性があります。 このたわみの計算で使うのが、断面二次モーメントです。 断面二次モーメントは、部材のたわみにくさを表す数値です。 断面欠損がある横架材では、欠損のない部材に比べてたわみやすくなるため、たわみ検定でも断面二次モーメントを低減して考える必要があります。 グレー本では、断面欠損のある横架材の断面二次モーメントについても参考表が示されています。 ■強度検定とたわみ検定では見る数値が違う 断面欠損の検討で混同しやすいのが、断面係数と断面二次モーメントの違いです。 曲げ強度を確認するときは、主に断面係数を使います。 一方、たわみを確認するときは、主に断面二次モーメントを使います。 つまり、断面欠損がある横架材では、 ・強度の検定では断面係数を低減する ・たわみの検定では断面二次モーメントを低減する というように、検定する内容に応じて使う数値を分けて考える必要があります。 ここを曖昧にしてしまうと、曲げには安全でもたわみが大きい、あるいはその逆といった見落としにつながる可能性があります。 ■吹き抜けに接する耐風梁は風圧力にも注意する 断面欠損の検討とあわせて注意したいのが、吹き抜けに接する耐風梁です。 吹き抜け部分では、床構面がないため、外壁に加わる風圧力を通常の床で受けにくくなります。 そのため、吹き抜けに接する梁が、風圧力を受ける部材として働く場合があります。 このような梁を検討する場合、鉛直荷重だけでなく、風圧力によって生じる曲げも確認する必要があります。 ■風圧力の負担範囲は階高の中間までで考える 耐風梁に作用する風圧力を求めるには、まず、その梁がどの範囲の風圧力を負担するのかを決める必要があります。 風圧力の算定の考え方では、梁の負担範囲は階高の中間までとして扱われています。 たとえば、上下に梁がある場合、1本の梁が外壁全体の風圧力をすべて負担するわけではありません。 上下の梁の中間までを、それぞれの梁が負担する範囲として考えます。 負担範囲を適切に設定することで、耐風梁に作用する荷重を整理し、曲げモーメントを算定することができます。 ■耐風梁では2軸曲げの検定が望ましい 耐風梁では、通常の鉛直方向の荷重に加えて、風による水平方向の力も作用します。 そのため、梁には一方向だけでなく、複数方向の曲げが生じる場合があります。 このような状態を2軸曲げといいます。 特に吹き抜けに接する耐風梁では、2軸曲げの検定を行うことが望ましいとされています。 通常の梁は、梁せい方向には曲げに強い一方、梁幅方向、つまり弱軸方向には曲げに弱くなります。 そのため、風圧力によって弱軸方向に曲げが生じる場合は、その方向の断面係数を正しく評価する必要があります。 ■弱軸方向の断面係数を間違えると危険 梁の検定では、どの方向に曲げが生じているかを正しく把握することが大切です。 梁は、縦に使う場合と横に使う場合で、曲げに対する強さが大きく変わります。 特に弱軸方向の検定では、断面係数が小さくなるため、思った以上に余裕がないケースもあります。 耐風梁のように風圧力を受ける部材では、鉛直荷重に対する強度だけでなく、横方向からの力に対しても安全かどうかを確認する必要があります。 つまり、耐風梁の検定では、 ・どの方向に力がかかるのか ・どの軸まわりに曲げが生じるのか ・その方向の断面係数は適切に評価されているか を確認することが重要です。
■断面欠損のある横架材を検討するときのポイント 断面欠損のある横架材を検討するときは、次の点を整理しておくと分かりやすくなります。 まず、欠損の位置と大きさを確認します。 梁端部なのか、中央部なのか、上端側なのか、下端側なのかによって、構造上の影響は変わります。 次に、曲げに対する検定では、欠損を考慮した断面係数を使います。 欠損によって断面性能が低下している場合は、その分を見込んで検定する必要があります。 さらに、たわみ検定では、欠損を考慮した断面二次モーメントを使います。 強度上は問題がなくても、たわみが大きくなる場合があるためです。 また、吹き抜けに接する梁や耐風梁では、風圧力による曲げ、2軸曲げ、弱軸方向の断面係数にも注意が必要です。 <まとめ>断面欠損のある横架材は安全側に性能を低減して検定する 横架材に断面欠損がある場合、欠損のない部材と同じ性能として扱うのは危険です。 断面欠損によって、曲げに対する強さや、たわみにくさが低下するため、構造計算では適切に断面性能を低減して検定する必要があります。 特に重要なポイントは、次のとおりです。 ・断面欠損がある横架材は、断面性能を低減して考える ・曲げ強度の検定では、断面係数を低減する ・たわみ検定では、断面二次モーメントを低減する ・吹き抜けに接する耐風梁では、風圧力による曲げも確認する ・風圧力の負担範囲は、階高の中間までとして考える ・耐風梁では、2軸曲げや弱軸方向の断面係数に注意する 木造住宅の横架材は、建物の荷重を柱や壁へ伝える重要な構造部材です。 そのため、断面欠損がある場合には、見た目の寸法だけで判断せず、実際に有効な断面性能を考慮して、曲げ・せん断・たわみ・風圧力に対する安全性を丁寧に確認することが大切です。 次回は、柱の安全確認について、お話します。
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